始まった日常
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遠征部隊と詩音が近界から帰還して、数日が経った。その詩音は風間隊と共に忍田本部長の元へと呼び出されていた。迎えに来た宇佐美と共にやって来た部屋の前で他の3人と合流する。
「おまたせー!」
「やっときた。遅いんだけど。」
『す、すみません。』
「大丈夫です。そんなに待ってないんで。」
「揃ったな、行くか。」
そんなやり取りをして、目の前の扉をくぐる5人。その部屋の中にいたのは、忍田だけではなく、城戸司令含めた幹部が数人揃っていた。
「急に呼び出して済まない。特に如月くんには、何も知らされていないだろう。」
『あ、はい...。』
「早速話を始めよう。今日来てもらったのは他でもない。君の処遇についての決定を伝えるためだ。」
「...。」
自分に向けられる城戸司令の言葉に緊張の面持ちで続く言葉がじっと待つ詩音。彼女の処遇の決定について知らされるということをわかっていた風間隊の面々も、その決定の内容は知らない。ゆえに詩音と同じようにじっとその言葉の先を待つ。
「まず結論から言おう。今この時をもって君は、捕虜としての扱われるのではなく、1人のこの国の人間として自由を得ることとなる。」
『え...』
「君の言葉が認められたということだ。様々な検査、調査によって、君の言葉が裏付けられたことが大きいが、何より決め手は、君から受け取った手帳だ。」
忍田の言葉に詩音は首を傾げる。
「あの中に君の父親の物と思われる、身分証明証が挟まれていた。古いものではあったが、調査の結果間違いなく本物であることが分かった。そして私もここにいる城戸司令も、林藤さんも、君の父親と面識がある。」
「こんだけの裏付け証拠がありゃ、君の言葉の信ぴょう性も当然増す。そうして出た結論、って訳だ。」
「そこで、だ。これは強制ではなく、君について調査した、いや、させてもらった組織の人間からの提案だ。如月詩音くん、君をボーダー隊員として勧誘したい。」
詩音は頭の中を整理するのに必死だった。自分の存在が認められた、その言葉は嬉しい。父の手帳が役に立った。そのことに驚いた。そして、ボーダーへの勧誘、正直、何を言われているのかよくわからなかった。
『えっと、あの、まず、捕虜じゃ、なくなるんですよね?あ、ありがとうございます。』
自分の中で考えをまとめるようにゆっくりと話し始める詩音。その言葉に、幹部の大人たちに加え、風間隊の4人も注目する。
『信じてもらえたこと、嬉しいです。でも、捕虜じゃなくなるって言われても、私、どうしていいかわかりません。』
「...なにそれ。」
ポツリ。菊地原がそう零す。その声は詩音にも他の人間の耳にも届くが、それを拾うものはいない。代わりに、忍田が詩音の言葉に答えるように話す。
「君は自由だということだ。必要ならば、こちらで手続きを行い、君は以前そうだったように、この国で普通に暮らすことができる。もちろん私たちボーダーに関わらずに、そうすることもできる。」
『以前そうだったように...。でも、もう父はいません。母も、どこにいるかわかりません。』
彼女の言葉にピクリと反応を見せたのは風間隊の4人。意外なことに、風間さえもその言葉に少しだけ目を見開いた。
「君がそう望むなら、他の機関に掛け合って、君の家族を探す方法もある。あるいはひとりでこの街や近くの街で暮らす方法もある。君がこの国の人間であると証明された以上、そうすることは可能だ。」
『...母を探すつもりはありません。確かに、1人で生きていくこともできるのかもしれません。でも、私の命は皆さんに拾われたんです。』
「詩音ちゃん...。」
話していくうちに徐々に声色がはっきりとしてくる詩音。その声の変化に、その言葉に、宇佐美が思わず彼女の名前を呼ぶ。それに背中を押されるかのように、詩音は続けた。
『私をボーダーに勧誘してくださるのなら。私を自由にしてくださるというのなら。私は選びます。...私をボーダーで働かせてください。』
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なんか風間さんより栞ちゃんの方がしばらく活躍しそう。