リクエスト:愛で殺すと誓って
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灯りがともる町から離れ、町外れに着いた角都はそこで小さなボロ小屋を見つけた。
風が吹く度に壊れた扉がギシギシと揺れている。
角都はそれに近づき、ゆっくりと扉を開いて中を覗いた。
最初に目にしたのは銀色の髪だ。
小屋の壁のあらゆる隙間から月明かりが差しこんでいるため、その姿はすぐに見つかった。
膝を抱え、小屋の隅に座っている。
「飛段」
ビクリと震え、飛段は顔を上げた。
涙のあとが目立っている。
「撒いたと思ったのに…」
「どれだけ目立っていたか教えてやろうか」
そう言いながら角都は飛段に近づく。
飛段は目を逸らし、不機嫌な声で言う。
「あの女のとこに戻らなくていいのかよ」
「安心しろ。あの女とはなんでもない」
「なんでもねえなら2日連続で行くなってんだ」
「飛段」
そのはっきりと自分の名前を呼ぶ声に、飛段はまたビクリと体を振るわせ、角都を睨みつけた。
「こっち来んな! 言い訳なんか…」
遮るように、角都は懐から取り出したものを飛段の目の前に突き付けた。
「…これ…、女に渡したやつじゃ…」
それは女性の手にあった小さな箱だった。
飛段はそれを受け取り、凝視している。
「渡されたものだ。オレが注文したからな」
「注文?」
「開けてみろ」
言われるままに、飛段はリボンを解き、包装紙を破って箱の蓋を開けた。
「…!」
中には、黒の指輪と銀の指輪があった。
「これ…」
銀の指輪の内側には角都の名前が、黒の指輪の内側には飛段の名前がローマ字で刻まれてある。
角都は飛段の前で片膝をついて目線を合わせて言う。
「オレ達が恋仲になって、明日でちょうど1年になる」
「……あ…っ」
少し遅れて、明日がその日だと思い出した。
「記念品はなにがいいかと考えたのがそれだ。だから、腕のいい指輪職人のいるこの町へ来た」
「…夜、オレを殺そうとしたのは?」
「殺そうとしたのではなく、測ろうとしたのだ。指のサイズを」
「地怨虞で測るな! 紛らわしい!」
角都は、地怨虞を飛段の薬指に結び、切り取ったそれを指輪職人の女性に届けた、と言う。
「1日目でオレの指輪を、2日目でおまえの指輪を作ってもらった」
「……………」
角都は黙った飛段の頭を撫でる。
「オレを軽い男だと思うな」
「…その…、ご…、ごめんなさい…」
飛段は恥ずかしさで顔を赤くしながら謝った。
角都と目が合わせられない。
「反省してろ、と言いたいところだが、そろそろ時間だ」
角都は箱から銀色の指輪を取り出し、飛段の左手を優しく手にとった。
飛段は顔を上げ、角都と目を合わせる。
「飛段、おまえはいつか必ずオレが殺してやる」
その言葉とともに、角都は飛段の左手の薬指に銀色の指輪をはめた。
笑みを浮かべた飛段は箱から黒の指輪を取り出し、角都の左手を手にとる。
「だからそれをオレに言うかよ、角都」
その言葉とともに、飛段も角都の左手の薬指に黒色の指輪をはめた。
お互い、サイズはぴったりである。
「え…と…、指輪をはめたあとは…」
「知っているだろう?」
角都は口布を下げた。
「誓いのキスだ」
日付が変わると同時に、2人は口付けをかわした。
翌日、大事な記念日を過ごす2人の左手には、コンビの証の指輪と、恋仲の証の指輪が光っていた。
その光は、永遠に鈍ることはないだろう。
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