リクエスト:愛で殺すと誓って
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翌日、新聞や古書を読んだりしてのんびりと過ごす角都とは反対に、飛段はテレビを見てもゴロゴロと寝転がっても落ち着けずにいた。
昨夜のことを思い出し、思わず自分の首に触れる。
(オレ…、角都に殺されかけた?)
テレビに顔を向けたままチラリと角都を横目で見るが、角都は読書に集中していて飛段に見られているとは気付かない。
飛段は首を激しく横に振った。
(いやいや、オレ死なねーし! けど…)
角都が「おまえはいつか必ずオレが殺してやる」と飛段に言った。
飛段はそれを思い出し、目を伏せる。
(まさか、昨夜がその「いつか」? あの女に頼まれて? それとも、角都が望んで?)
胸がチクリと痛んだとき、本を閉じる音が聞こえて振り返った。
角都は立ち上がり、外套に着替えている。
「どこに行く気だ?」
「出かけてくる」
「見りゃわかるって! 場所言えってんだ!」
苛立った飛段は声を荒げた。
「買い出しだ」
「買い出しィ?」
飛段は露骨に怪訝な目を向ける。
「大人しく待っていろ」
昨日と同じセリフを言い、角都は部屋を出て行った。
飛段は閉められた襖に座布団を投げる。
「チッ。コソコソしやがって…!」
仰向けに寝転がり、天井を睨みつけた。
「あの女がいいのかよ…。あんな背ェちっちゃくてェ? 胸がバーンとデカくてェ? 顔も整った女のどこが……」
(好条件だよなァァァァ!!)
自滅。
気を紛らわせようとテレビのチャンネルを替えてみたが、
「酷い! 弄んだのね!!」
「…!!」
昼メロの修羅場シーンと出くわしてしまい、すぐにチャンネルを切り替えた。
「ごめん、本当はあの子が好きなんだ」
「~っ!!」
恋愛ドラマのフラれるシーンと出くわしてしまい、またすぐにチャンネルを切り替える。
(…ニュースニュース)
ドラマはダメだと判断した飛段は普段は興味がないニュースに切り替えた。
「次のニュースです。妻を殺し、浮気していた女性と逃亡していた男性が昨夜逮捕されました」
「ダ―――!!!」
テレビを消してリモコンを畳へと叩きつけた。
「そんなにオレを苛めて楽しいかァ!!!?」
逆切れした飛段は真っ暗な画面に向かって叫んだ。
そのあと、テレビ恐怖症に陥ってしまい、チャンネルを手に取ろうとはしなかった。
*****
角都が出て行って数時間が経過したが、もうすぐ日が暮れるというのに角都はまだ帰ってこない。
昼食を抜き、暇を持て余していた飛段はさらにイライラとしていた。
意を決して立ち上がり、外套を纏って大鎌を背中に携え、宿を飛び出した。
おそらくあそこだろう、と昨日の道のりを思い出しながら向かう。
案の定、角都は店の前であの女性と一緒にいた。
気付かれる覚悟で、会話が聞きとれる距離まで近づく。
女性の両手には小さな箱があった。
(なんだあの箱? プレゼントってやつかァ? あのケチの角都が…)
ピンクの包装紙に包まれ、黒いリボンで結ばれている。
「渡し損ねてすまなかった」
「いいですよ。間に合いましたし」
そんな会話を聞きとったとき、飛段は建物の陰から出て大声を上げた。
「角都!!」
「「!」」
角都と女性は驚いて飛段に振り返る。
「飛段!?」
「しまった」という顔をした角都を見て傷ついた飛段は声を荒げて叫んだ。
「誰がてめーなんかに殺されてやっかよ!! ずーっとその女とイチャコラしてろバカがァ!! バァ―――カ!!」
通行人の注目も集め、飛段は角都に背を向けて駆けだす。
「待て飛段! これは…!」
「聞く耳持たねー!!」
角都の声を聞きとった飛段は走りながらそう叫び、真っ直ぐに走っていった。
角都は女性の手にある箱を受け取り、懐にしまって飛段のあとを追いかけた。
「飛段!」
しかし、飛段の背中はもう見えない。
一度宿に戻ってみたが、やはり部屋のどこを探しても飛段は隠れてもいなかった。
「あの馬鹿が…」
もう一度外へ出て、飛段の姿を捜す。
がむしゃらに町を駆けまわるわけにもいかず、通行人をつかまえて手がかりを得るしかない。
「銀髪の青年を見かけなかったか?」
最初に中年の男性に聞いてみたが、男性は首を横に振った。
「さあ、見かけてないね」
角都は同じ言葉で尋ねることを繰り返しながら通行人達に聞いていく。
「ここを銀髪の青年が通らなかったか?」
「ああ、あのキレーなコのことかしら? あの角を右に曲がって行ったわ。泣きながら」
「その兄ちゃんなら、ここを真っ直ぐ走っていった。「かくずのバァーカ」とか罵りながら」
「あっちを左に曲がっていったわ。なに? 喧嘩?「浮気者」とか叫んでたけど」
「「オレの純潔返しやがれ」とか泣き喚きながら屋根の上を走ってたぜ」
「そこで躓いて派手に転んでまた走ってった」
「子供みたいに泣き喚きながら町外れの方へ走ってったわ」
「……」
聞くたびにその光景が脳裏に浮かび、角都は若干恥ずかしくなる。
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