リクエスト:愛情表現一時閉鎖
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禁欲命令から3日が経過した。
「……………」
いつも騒がしい飛段は、不機嫌な顔をしながら黙っていた。
角都の部屋の前に座り、膝を抱えたままじっと角都が出るのを待っている。
「うわ!」
それを見たデイダラはびっくりして仰け反った。
飛段に近づき、目の前でしゃがみ、その顔を窺う。
「目、死んでるぞ。うん」
「デイダラ…、オレ…、こんな生き地獄ヤダ…」
情けない声とともに、膝の間に顔を埋めた。
あれからまだ3日しか経っていない。
尾獣の封印期間と同じ期間なのに、それよりも長く感じた。
傍に角都がいないからだ。
「こんな状態で3週間もつワケねーよォ」
顔を埋めているためくぐもった声が出る。
「飛段…」
デイダラはなんと声をかけていいのかわからずに困惑していた。
しばらくして、飛段の周りの空気が殺気立った。
「!?」
それを感じ取ったデイダラは思わず飛段から飛び退き、様子を窺う。
飛段は亡霊のように揺れながら立ち上がり、背中に携える鎌の柄を手に取った。
「サソリの奴、部屋にいたよな」
「!!」
飛段の低い声を聞いたデイダラは瞬時に悟る。
(こいつ、旦那を殺ってあの命令ごと取り消すつもりだ…!!)
角都の短気もそうだが、飛段の短気さも相当なものである。
飛段は狭い廊下で鎌を振り回し、サソリの部屋へ向かおうと一歩踏み出した。
「待ってろサソリィィィィ!! ジャシン様の贄にしてやらぁぁぁ!!」
デイダラは飛段の腰にしがみつき、阻止する。
「やめろ飛段!! つか、旦那じゃ儀式はできねえぞ!! うん!!」
傀儡であるため、血液採取不可能。
それでも構わず飛段は先を進もうとする。
デイダラは引きずられてしまう。
「部屋の前で騒がしい奴らだ」
部屋から出てきた角都に、飛段はピタリと一時停止したあと振り返った。
角都はいつもの頭巾とマスクを外している。
「角都…」
角都は踵を返し、自分の部屋へと戻っていった。
半開きの扉の向こうから、飛段に声をかける。
「…飛段、来い」
言われるままに、飛段は満面の笑みで角都の部屋へと飛び込んだ。
「角都…!」
「!」
扉が閉まると同時に、角都を押し倒し、その上に覆いかぶさった。
「角都ゥ、オレもう我慢できねーよ…。な? キスさせろよ。させてくれよ…」
懇願するように言い、愛おしそうに人差し指の腹でその唇を撫でる。
角都はくすぐったさを覚え、顔を逸らそうとしたが、頬を飛段の手で軽く抑えられて逸らせない。
「…っ、飛段…」
「部屋にオレを招き入れたのは、そういうことだろォ? これでフルのはなしだぜ?」
飛段から目が離せない。
やがて角都は観念したかのように小さくため息をつき、抵抗をやめた。
「……ああ、来い」
その声に、背筋にゾクリと寒気を覚えると同時に、飛段はその唇に噛みつくようなキスをした。
いきなり口内に舌をねじ込み、貪る。
「…っ、んん…っ!」
苦しくなった角都は、飛段の右肩を叩いてそれを訴えるが、飛段はやめない。
「ぅ…っ」
完全に脱力してしまう前に、飛段の髪をつかんで後ろに引っ張り、飛段を自分から剥がした。
「痛て」
「はぁっ、はぁっ、…っ、がっつく…な…」
口端から伝う唾液を指で拭いながら、真っ赤な顔で飛段を睨む。
「くく…っ、がっつかせろよ…。まだまだ、全然足りねえ…」
角都の頬の縫い目に指先をひっかけ、顔を近づける。
「この…馬鹿が…」
ピ――――!
ゼツのレッドカードが上げられたのは、コトが終わったあとのことだった。
飛段が命令違反をしたとゼツから報告を受け、給料が5倍になるので機嫌が良かったサソリだが、翌日には不機嫌になっていた。
サソリの部屋に入ったデイダラはそれを見てぎょっとする。
「な…、なんで旦那が機嫌悪そうなんだよ。うん?」
サソリは膝に頬杖をつき、吊り上がった目をデイダラに向けて答える。
「…今日の朝、角都が訪ねてきてな…。あのヤロウ…」
その時のことを思い出し、サソリの眉間の皺がさらに深く刻まれる。
『おまえに大富豪の勝負を申し込む。オレが勝てば、飛段へ下した命令はなかったことにしろ。おまえが勝てば、給料を5倍から10倍に上げてやる。なに? 逃げるのか? 赤砂のサソリと呼ばれたおまえが?』
「このオレがあんな挑発に乗った挙句、負けるとは…」
屈辱なこと極まりがない。
「あのヤロウ、イカサマ使っちゃいねえだろーな…」などと宙を睨みつけながら呟いている。
デイダラはサソリの八つ当たりを食らわないように距離を保ってそれを眺めた。
(角都に大勝負は仕掛けねえほうがいいな。うん。つーか、なんだかんだ言って角都も…)
とりあえず、目の前の相方の機嫌をどうやって良くさせるか、考えを切り替えるデイダラであった。
*****
一方、角都の部屋で飛段は、新聞を読む角都の背中に抱きついたまま静止していた。
その姿は鳴かないセミのようである。
「…おい…、離れろ」
「ダメェ。充電中~」
「まったく…」
「ところでさァ、サソリがなにも言ってこねーんだけど、角都、知らねえ?」
「…さあな」
マスクの下で、角都は静かに薄笑みを浮かべる。
飛段はそのマスクをそっと引き下げ、耳元で囁いた。
「キスしていい? 角都」
.END