お喚びですか
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満月の夜、コウモリ達は不気味な笑い声を立てながら空を飛ぶ。
ここは魔界である。
満月の下の古びた神殿では、パーティーが行われていた。
参加者は人間ではなく、悪魔。
形は人間のようだが、ツノを持つ者、尻尾を持つ者、羽を持つ者、または動物のような外見をした者までいる。
今日は悪魔たちの魔力が上がる絶好の日。
神殿の外も祭り騒ぎとなっていた。
魔力が高まり興奮した一般の悪魔は祭りを盛り上げる。
神殿の中の悪魔たちは、名の売れた悪魔ばかりである。
その中で、皿に盛った料理を両手に歩きまわる銀髪の悪魔がひとり、ホールの隅で孤立したかのように、血のワインを飲む黒髪の悪魔に近づく。
「角都ゥ!」
着慣れないスーツで向かってくる悪魔は、尻から生えた矢印のような尻尾、尖った耳、背中には漆黒の鳥の羽、笑みを浮かべたその口からは牙が覗いている。
「飛段…」
角都、と呼ばれた悪魔は、紳士のようなスーツを着こなし、背中には片翼のコウモリの羽、頭には2本のツノ、尖った耳を持つ悪魔だ。
「なんだよ、パーティー楽しくねーの?」
「フン…」
ワインを飲みきった角都は近づいてきた羊顔のボーイにグラスを返した。
「こういう馬鹿に騒がしい場所は好かん」
飛段は赤色のパスタを頬張りながら「ふ~ん」と言って、フォークの先端を角都に向けて口端を吊り上げる。
「さっすが紳士。その格好はダテじゃねーな。…けど、オレは…、もうちょっとおまえの楽しそうな顔…みたかったんだけどなぁ…」
途端に口を尖らせる。
その顔を見下ろす角都の口元に薄い笑みが浮かび、飛段の頭に触れた。
「オレが楽しくしているところなど、他の悪魔共が見たら、血ヘドを吐くか、臓物を飛び散らせるか、数百年寿命が縮むだろうな」
「そんな大袈裟な」
「飛段、パーティーよりも昨日出した課題はできたのか?」
「! …いや…、その…」
口を濁し、目を泳がせているところからみて課題をやっていないのは明白だ。
飛段の家庭教師でもある角都はため息をつき、ポケットから黒のハンカチを取り出し、その口元についたケチャップを拭いてやる。
「むぶ…」
「今日は仕方ないが、明後日までに終わらせてしまえ」
「へへっ、悪ィなぁ、先生」
「……………」
今日がいけないのか、表には出さないが角都の中の魔力も他の悪魔と同じく上がり、それに伴い興奮も増幅されていた。
飛段のカワイらしい顔を見た途端、それを自覚してしまう。
「飛段、少しいいか?」
「?」
飛段が料理を乗せた皿をテーブルに置いたあと、角都は飛段の手を引いてホールから出て行った。
神殿の者達に見つからないように、すぐに近くの小部屋へと駆け込む。
そこで壁に飛段の背中を張りつかせ、抵抗されないように自分の両手で相手の両手をつかみ、顔を近づかせる。
「角都?」
「飛段…」
「…あ」
いよいよ唇が近づいたとき、飛段は角都の頭上を見て声を漏らした。
「角都…、よばれてるぜ?」
「!」
上を見ると、光り輝く魔方陣が角都の上に下りてきた。
それを見た角都は明らかに不機嫌な舌打ちをする。
いいところだったのに。
魔方陣を潜り抜けると、そこは書斎だった。
目の前にいるのは、さえない格好をした、顔にピアスをつけたオレンジ色の髪の男だ。
本を片手に茫然としている。
「貴様か、よんだのは…!」
「うわ、なんか機嫌悪い」
「なにそれ、顔についてあるのって、ひょっとしてピアス?」
角都の傍にいた飛段まで来てしまった。
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