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こちらは取り立て屋。
肥満型の主人は、金の入った袋を両手に持ちながら高笑いをした。
「ぶはははっ。集まった集まった♪」
主人の背後には、金の袋が山積みになっている。
主人の前には頭巾を取った盗人たちが片膝をついていた。
その他にも取り立て屋の部下がほくそ笑みを浮かべながら、主人の傍に立っている。
「ご苦労だったな。おまえ達にも褒美をたんまりとくれてやるぞ」
主人はそう言って再び悪人らしい高笑いをし、お膳にのった酒を飲もうと手をつける。
「しかと聞き届けたぜ!!」
勢いよく障子が開けられて現れたのは、角都、飛段、弥彦、長門の4人だった。
「!!」
「おまえ…!」
飛段を指さしたのは、逆に脅しをかけられていた部下のひとりだった。
「数々の悪行はやっぱり、てめーの仕業だったか」
指摘する飛段に、主人の目が泳ぐ。
「な…、なんのことやら…」
「しらばっくれんじゃねえ!!」
飛段が声を荒げると、角都は懐から帳面を取り出して主人に投げ渡した。
マダラから借りたそれには、盗人が入った家の住所が書かれている。
帳面をめくった主人の顔がみるみる青くなった。
「全部、おまえが取り立てに行ってる家ばかりだ」
「偶然にしては出来過ぎてないか?」
弥彦に続き、長門も鋭い目を向けて言う。
角都達の予想通り、主人は素直に認める男ではなかった。
「とんだ濡れ衣だ。これが証拠になるわけでもあるまい。なあ、おまえ達…」
引きつった笑みを浮かべて部下達に振ると、部下達も「そうだそうだ」「金払うのが嫌だからって適当なこと言ってんじゃねーよ」と強気に吠える。
「見せれば納得か?」
角都は不敵な笑みを浮かべ、飛段とともに同時に刀を抜いて主人の背後にある、山積みにされた金の入った袋を切り裂いた。
突然のことに、部下達も刀を抜いて構える。
「な、なにをする!?」
切り裂かれた袋から金が血のように噴き出す。
すると、金以外のものが袋から飛び出した。
「あった」
飛段はしゃがみ、金に埋もれかけたそれを拾い、主人の目前に突き付けた。
「それは…、首飾り?」
「ああ。この首飾りはオレのモンだ。この世に1つしかない。盗まれることを覚悟して、銭と一緒に入れておいた」
裏返すと、異国の文字で“HIDAN”と刻まれていた。
言い逃れができないというのに、いい加減白状しない主人に飛段は腹を立て、右足を御膳の上に、ドンッ、とのせ、射抜くような眼差しを向けた。
「これでも、まだシラを切るのか?」
「貯まる前に盗んでしまえば、盗まれた者はまた一から集めなければならない。そしてまたその繰り返しだ。貴様はただしつこく「返せ、返せ」と喚くだけでいい。さぞや…、吸った汁は甘かったろう。羨ましいくらいに…」
殺気立って睨む飛段と角都に、主人は「ひいっ」と後ろに下がったあと、盗人役の者達に目を向けた。
同時に、盗人たちは刀を抜いて角都達に斬りかかる。
「わかってねえなァ。あの時、わざと手加減してやったんだぜ?」
刀を抜いた角都達は各々、斬りかかってきた盗人を逆に斬り捨てた。
部屋に鮮血が飛び散り、主人の額に冷たい汗が流れる。
「ぐう…っ。者ども、であえであえ!!」
主人が叫び、縁側や奥の襖から部下達が次々と登場し、刀を抜いた。
角都達は背中合わせになり、飛段は呑気に「よっ。待ってましたお約束!」と拍手する。
次々と倒されていく部下に、主人は再び顔を真っ青にする。
角都達の表情に疲れは見えず、むしろ余裕を見せていた。
このままでは、全滅も時間の問題だ。
危うさを感じた主人は、懐に手を忍ばせた。
「!」
それに先に気付いた角都。
主人が懐から取り出したのは、短銃だった。
それは背を向けている飛段に向けられる。
「死ねぇ!!」
「飛段!!」
飛段が振り返る前に、角都は飛段の背中を守るために躍り出る。
ドン!!
耳をつんざく銃声が鳴り響いた。
「角都!!」
煙を上げる銃口が目に入った飛段は、目の前の敵に一太刀浴びせて角都にしがみつく。
「大丈夫か!?」
体のところどころに触り、ケガを負ってないか確認する。
角都はその手を追いかけてつかみ、飛段に振り返った。
「まさぐるな。無事だ」
銃弾はかすりもしなかった。
主人が的を外したからだ。
主人の手には、団子の串のようなものが突き刺さり、主人はケガを負った手を押さえ、片膝をついて呻いている。
突然のことに、全員の動きが止まった。
串が飛んできたのは庭の方からだ。
そちらに顔を向けると、そこには頭巾で顔を隠した黒ずくめの4人の男達が立っていた。
「なんだおまえら!?」
庭にいる部下のひとりが声を荒げて尋ねる。
その気配から、昨夜、対峙した4人組だと角都は理解した。
大刀を構える大きな男、小さな爆弾を手にする男、糸の先を口でくわえて糸を引き伸ばす小柄の男、細長い刀を構える男。
先程の串を投げたのは、細長い刀を構える男だった。
デケデ~ン、とどこからか聞いたことのある音楽が聞こえた気がした。
4人組を見つめる主人は唾を飲み込んだ。
「ま…、まさか…、今、巷で噂になっている、晴らせぬ恨みを金を貰って晴らす…、必殺仕事n…」
「全然違うぞ、うん」
爆弾が主人に投げられ、パンッ、と小さな爆発が起こった。
頭をアフロにされ、顔を真っ黒にした主人は口から煙を吐き出す。
「相変わらず、無茶なことをしてますね」
大きな男が頭巾に手をかけ、他の3人も頭巾を取り去った。
それを見た飛段は「げ」と漏らし、バツの悪い顔をする。
「鬼鮫…、デイダラ…、イタチ…。…うわ、サソリまで」
「知り合いなのか?」
角都は飛段とその4人組を交互に見た。
「だ、誰だおまえら!?」
声を上げる主人に、イタチが前に出て主人を冷めた目で見る。
「オレ達のことより、貴様、誰に銃を向けたのかわかっているのか」
「早く跪いた方がいいと思うぜ。あとが怖いからな」
イタチに続き、サソリも脅しをかけてきた。
全員の視線が飛段に集中する。
飛段はどうやってこの視線から逃れるべきかを考えた。
「こ…、この若造がなんだと…」
「将軍の息子だ。うん」
デイダラの言葉に、その場にいる全員が目を見開いて仰天した。
「将軍!!?」
役人を相手にするより分が悪い。
主人と部下達は一斉に「ははーっ」と跪き、頭を下げた。
飛段は非常に居心地が悪そうな顔をしたが、ひとまずは、一件落着だ。
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