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翌日、宿で一夜を明かした角都と飛段は早朝に町を発った。
昨夜のことに未だ腹を立てながらも、飛段の大きな口から出たのは呑気な欠伸だった。
目をこすり、隣で肩を並べて歩く角都に眠そうに尋ねる。
「まだオレになんか用なのかァ? もう昨日で借りは返したはずだぜェ」
「あれで返したと思うな。それに貴様は間違えているぞ。メシを食わせてやった借りではなく、命を助けてやった借りだ。高いに決まっているだろう」
そう言うが、口実に過ぎない。
しかし、もちろん飛段は角都の意図など知らずに「あ、そう」と答えた。
「恩着せがましい奴だぜ、ホント」
「安心しろ。昨夜のように、貴様ひとりだけに任せたりはしない」
男の首をもらうついでに飛段に仕置きをしたかったからだ。
それで「さよなら」のつもりだったが、予定が変わった。
「昨日の奴、なんだったんだよ。首売りに行ったけど…、あれか? おまえって賞金稼ぎってヤツ?」
「ああ。あの男の首には5万両がかかっていた。小さな額だが…、金は金だ」
「金が好きなのか?」
「当たり前だろう。金が嫌いな奴など、この世にいるわけがない。「金が嫌い」とほざけばそれはただの綺麗事だ」
「……当たり前かよ」
飛段は刺のある言葉を返し、頭の後ろに手を組んだ。
「…ところでよォ、さっきからついてきてる奴ら、角都の知り合いなのか?」
「!」
角都は、気付いているのは自分だけかと思っていた。
しばらくは知らんふりをするつもりだったが、飛段は立ち止まって振り返り、相手が隠れているだろう木や茂みを見る。
角都は小さくため息をついて、飛段より一歩遅く立ち止まった。
「…そんな親しいものでもない。オレは裏では有名人のようだ。奴らにとって、オレは邪魔者でしかない」
「へえ。嫌われモンなのか、人気モンなのか…」
2人が動きを止め、バレたとわかった敵は遠慮なく飛びだした。
角都が気配から感じ取った通り、数はたったの5人。
まずは2人がかりで角都と飛段を背後から襲う。
抜かれた刀が振り落とされると同時に、2人は自分の刀を瞬時に抜き、振り返り際に振るった。
角都を襲ったひとりは両手首を切り落とされ、飛段を襲ったひとりは胸を深く切りつけられた。
「残るは3人だが、どうする?」
「オレに全部譲ってくれてもいいんだぜェ」
残りの3人が一斉にかかってきた。
2人は背中合わせになって向かってくる敵に刃先を向ける。
敵を斬りつける角都はほくそ笑んだ。
「金には縁遠そうな顔をしているが、こいつは利用価値がある」と。
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