ご主人様はアイツのもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
よっ、オレひだん。
角都の愛ペットだぜ。
オレは今、ひなたぼっこ中だ。
窓から差し込む日当たりがすっごく気持ちいい。
場所は、とあるアパートの2階の201号室の部屋だ。
広くて快適だし、周りは片付けてあるから、ケガをすることなく歩きやすい。
あのケージの中とは月とスッポンだ。
あの中から出してくれた角都には感謝しきれねえ。
もし角都に会えなかったら、寂しいケージの中で一生ペットショップで過ごすか、誰かに飼われて捨てられるしかなかったかもしれない。
角都がオレの運命のご主人様だ。
照れるぜ、ゲハハッ。
角都は今、暁大学ってとこに行ってる。
いつもは連れてってくれるけど、今回は試験があるからダメだってさ。
友人のサソリが飼ってるでいだらとも遊べしねえ。
「角都ゥ、角都ゥ」
ひなたぼっこを十分に満喫したオレは、角都がいない寂しさに襲われてしまう。
いつもは楽しみにいている大学も、この時ばかりは角都を取られたみたいでスゲェイライラする。
オレは目的もなく部屋の中をウロウロとする。
空はそろそろ夕方だ。
もうすぐで角都が帰ってくる。
また飛びついて出迎えてやろうかな。
帰ってきたら、角都は出迎えたオレを「ただいま」と言って大きな手で優しく頭や喉や体を撫でてくれて、好物のウィンナーをくれる。
角都の食事が終わったあとは風呂だ。
洗ってくれるのはスゲー気持ちいいけど、ヘンなトコ触られたりするからくすぐったいうえに恥ずかしいし、ちょっと苦手。
それから角都の入った温かいベッドに潜りこんで一緒に寝るんだ。
明日は休日。
暁大学は休みで角都を独占できて一緒に遊び放題だ。
明日は外に連れてってくれるってよ。
角都はオレが離れないことを知ってるから、リードなしで身軽に散歩できる。
あまり離れすぎるとちゃんと声もかけてくれるしな。
「まだかァ、まだかァ」
今すぐ窓から飛び出し、自分から角都を迎えに行きたいとさえ思った。
ベランダの窓際にある本棚のうえに飛び乗り、オレはそこから大学を眺める。
アパート前の歩道に通行人が通っているが、その中に角都らしき人物はいない。
「!」
そこでオレは人間以外のものを見つけた。
あれは犬なのかネコなのか。
オレより体がひとまわりふたまわり大きい。
黒い毛並、フサフサの尻尾、ピンとはった耳、ツギハギだらけの体、そして赤と緑の瞳。見た目からして、たぶんオレよりだいぶ年上だ。
実はそいつを見かけ始めたのはつい最近だ。
誰かに飼われてるのか。
でも、首輪がない。
オレはちゃんと銀の鎖の首輪がつけられているというのに。
じっと見つめていると、そいつはふと上を見上げた。
初めて目が合った。
一瞬ギクリとしたオレだが、目が離せなくてしばらく見つめ合ってしまう。
そいつは見つめているより睨んでるってカンジだった。
喧嘩を売られてるみたいで、オレは「なに見てんだよ」とベッと舌を出して挑発する。
すると、そいつは機嫌を損ねるどころか、ふっと笑った気がした。
なんか、馬鹿にされたみたいで余計に腹が立った。
歯を剥いてやろうとしたが、その前にそいつは目を逸らしてまた歩きだした。
「ちょっと待て! オレの威嚇を見てから目ェ逸らせよォ!」
当然、そんな声が届くわけがない。
そいつの姿が見えなくなったとき、玄関の鍵が開けられた音がして「ただいま」と角都の声が聞こえた。
「ひだん?」
「しまった!! 出迎えし損ねたァ!!」
あいつなんかの相手してたせいだ。
あの黒いの、今度会ったら文句のひとつでも言ってやらないと。
そしてオレの威嚇を見せてやる。
.