小さな日記
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走れ走れ走れ
角都が馬鹿らしくなるまで走れ、オレ!
背後から角都の地怨虞で伸ばされた手が迫ってくる。
オレは地面を蹴ってジャンプして避けた。
それでも角都の手はしつこくオレを追いかけてくる。
オレは恐怖を覚えずにはいられなかった。
「頼むから見逃してくれよ、角都ゥ!」
オレは逃げながら懇願する。
それでも角都は聞く耳を持ってはくれない。
死なねえけど死ぬ気で逃げるオレ。
森を駆け抜け、川を渡り、崖から飛び降りる。
それでも角都を撒くことができない。
あいつは本当に90過ぎのじいちゃんなのか。
22の若者のオレより速いってどんだけスーパーなんだよ。
オレはもう呼吸することすら苦しい。
それに比べ、角都は息ひとつ切らしていない。
「角都! 恋人のオレを身売りして平気なのかよォ!?」
「ああ。なんとも思わん。金が手に入ればそれでいい」
「鬼ィ!!」
前回もそのバイトをやらされ、翌日、不死身の体もなにも関係なく体の痛みに苦しんだ。
もう2度とするものか。
させられてたまるか。
「うわ!?」
突然、目の前の茂みから圧害達が飛び出し、オレはそいつらにあっさりと前から捕まってしまった。
御神輿のようにわっしょいわっしょいと角都の前に運ばれ、地面に押し付けられる。
悪魔に捧げられる贄のようだ。
「ってェ!!」
「腹をくくれ、飛段」
「くくれねェェェェ!!」
*****
暑い。
流れ出る汗が気持ち悪い。
息が苦しい。
体中が痛い。
もうヤダ。
どうしてこんな目に遭わなければならないのか。
「カワイイー!」
「早くしろよ!」
「もっとくれよ」
「ちょうだいちょうだい」
オレは今、ガキ共に囲まれていた。
「飛段、早く配れ」
傍にいる角都に促され、オレは手に持っている風船をガキ共に配っていく。
真夏のクソ暑いなか、オレはさらにクソ暑い着ぐるみを着たまま、風船配りのバイトをやらされていた。
その格好は刈り取りたくなるほどモコモコしている羊の着ぐるみだ。
角都は、見てるだけでも暑苦しさを覚えるようなライオンの着ぐるみを着てオレと同じようにガキ共に風船を配っている。
マフラーよりあったかそうな立派なたてがみが憎らしい。
普段から暑苦しい格好をしているのか、角都は暑がる素振りも見せず平然としていた。
前後左右からガキ共から着ぐるみを引っ張られる。
なかには、いきなり背中に飛び蹴りをかましてくるクソガキもいる。
羊の首をとってガキのメルヘンな夢をブチ壊してやろうかという考えまで浮かんだ。
過去最高の突風が吹くことを願った。
このまま風船につかまって飛んでいきたい。
明日も筋肉痛。
そして明後日はまた同じバイト。
非力な羊は、金のためなら全力で追いかけてくる獅子から逃れることはできない。
今日も弱肉強食の法則に抗えず。
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