角都と圧害
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飛段はまだ夢でも見ているのではと頬をつねるどころか、杭で胸を貫いてみたが痛みばかりだ。
飛段は向かい側の角都と圧害を交互に見た。
圧害の中に角都が入ってるせいか、圧害が真面目に見える。
その反対に、角都の体に圧害が入ってるせいか、角都の顔は先程から純粋な笑みを浮かべ、飛段を見つめている。
飛段は滅多に見られないその顔にデレ顔になっている。
それを見た角都はビシッと地怨虞で飛段の横っ面を殴った。
「なんでそんな姿に…?」
起き上がった飛段は頬を擦りながら問い、角都はため息を交えて答える。
「おそらく、土地だ。チャクラが大きく乱されてしまう。ここまで影響が酷いとはオレも予想外だった」
土地と言っても崖がちらほらある程度の山だ。
飛段はこの土地にきた途端、具合が悪くなった角都を思い出す。
途中で休息し、角都は早くこの土地を去りたかったが、そのまま野宿となった。
ついでに昨夜の行為も思い出してしまう。
「具合悪い上にアレだもんなァ」
「誘う貴様が悪い」
「誘ってねえよ! あんとき、ホントに具合が悪いのか疑っちまったぞ!」
眠っている間に角都と圧害が入れ替わったのだろう。
「♪」
圧害は飛段に近づき、飛段の胸に顔を擦りつけている。
角都の体でだ。
「離れろ」
角都は容赦なく地怨虞で再び圧害を引き剥がした。
いくら己の体とはいえ、見ていていい気分ではない。
圧害はあからさまにズーンと落ち込んでいる。
「よせって。一応おめーの体なんだし」
飛段は角都の頭を撫でる。
角都は頭を振って飛段の手から離れた。
「撫でるな」
そう言って地怨虞で飛段の額を叩いた。
飛段は額を両手で押さえながら問う。
「それでどうやったら元に戻んだよ」
「わからん」
「ハァ!?」
「オレも初めてのことで動揺している」
「…それって超ヤバくね?」
「ああ、ヤバい。この地を出てもこのままだったら尚更だ。この体はオレの心臓そのものだからな。オレが敵に討たれればそれまでだ」
それを聞いた飛段の表情が凍りつく。
「え…と…、つまり…、その姿で死んだら…、角都、それで終わりってことか…?」
「ああ。体は無事でもな」
「けど、どっちにしろ角都が死ぬことになんだろ!? 早く元の姿に戻れよォ!」
「落ち着け。無論、そのつもりだ」
突然慌てた様子で騒ぎだした飛段をなだめ、角都は圧害として、己の背中へと戻った。
角都としては妙な気分だ。
そうして圧害と己の精神が入れ替わろうと試みる。
じっとしたまま3分が経過。
圧害となって己の背中に埋まっている角都をじっと見つめる飛段。
「まだァ?」
「慌てるな。カップメンではない」
じっとしたまま10分が経過。
「………角都ゥ?」
「なんだ」
未だに圧害な角都。
じっとしまま30分が経過。
角都の体がこっくりこっくりと微かに揺らめき始めた。
戻ったのではないかと思った飛段だったが、
「Zz…」
「圧害!」
角都の怒声にはっとする圧害。
退屈で眠っていたようだ。
じっとしまま1時間が経過。
「…どうだ?」
ヒマなので、大鎌の手入れをしながら飛段は話しかける。
「変わりない」
「おい! おい! 今度は頭刻苦になってっぞ!!」
今度は頭刻苦と入れ替わってしまった。
さらに2時間後、結局圧害に戻ってしまい、角都は己の背中から出てきた。
かなり不機嫌だ。
傍から見た圧害の不機嫌な顔は始めてみた。
意外に迫力がある。
「場所が悪い。移動するぞ」
眠りかけていた飛段ははっと起き上がり、先に進み始めた角都に近づいて文句を垂れる。
「結局それかよォ―――」
角都の体の圧害は飛段の後ろをついていく。
「ヒ、ダ、ン」
「!」
その声に2人は立ち止まり、圧害に振り返った。
「喋った…」
「オレの心臓とはいえど、意思はある」
「ヒダン」
角都の体であるため、口から出る声も角都の声である。
飛段は面白そうなものでも見つけたかのように顔をぱっと明るくさせ、圧害に駆け寄った。
「マネしてみな。「好きだ」って」
「スキダ」
「ハァ!」
低音ボイスの告白に飛段は恍惚げだ。
「じゃあさ、「飛段カワイイ」は?」
「ヒダン、カワイイ」
「ハァー!!」
飛段はますます調子に乗る。
「じゃ…、じゃあ、愛してr」
ゴッ!!
「ぐえ!」
風遁を食らってしまい、吹っ飛ばされる。
食らわせたのは、先程から殺気のオーラを漂わせて黙って聞いていた角都だった。
「木端微塵になりたくなればオレで遊ぶな、恥知らずが」
「その姿になっても技は一丁前に出せるのな」
崖沿いの道を移動中、飛段は提案を出した。
「角都ゥ、どうせなら飛んで移動しねえ?」
「…なに?」
角都は立ち止まり、不本意な目を飛段に向けた。
2人を背中に乗せて飛べ、と言われれば当然の反応だ。
「だって、ここ崖多いしィ、いちいち迂回するのも面倒じゃねーか。それに、角都だってたまに時間が惜しい時に圧害使うだろ」
普段使わないのは、チャクラを無駄に使うわけにはいかないからだ。
こちらはバイトも請け負っているため、できるだけチャクラを節約したい。
いざという時にチャクラ切れでは困る。
「若者なら歩け。心身ともに鍛えられるぞ」
「角都なんかジジイだろォ。ケチ言うなよ。圧害なんかそのジジイの体で歩いてんだぜェ」
口を尖らせる飛段に、角都は地怨虞を伸ばし、飛段の体を縛って脇やら腹などをくすぐり始めた。
「笑い死ね」
「だからそれをオレに…、ぎゃはははは!!」
飛段はしばらく体を痙攣させたまま動かなかった。
「ヒダン、ダイジョーブ?」
圧害は飛段の背中を擦る。
その光景を不快そうに見る角都は飛段を急かす。
「おい、早く動け」
「ひぃ、ひぃ、ま、待って…」
頬がつったのか、笑いたくもないのに笑みが張り付いている。
額に汗を浮かばせ、何度も荒い呼吸を繰り返した。
その様子がどこか色っぽく感じられる。
角都はふと昨夜のコトを思い出した。
貪り合ったあとはその場で泥のように眠ったことを。
「…もしかすると、昨夜と同じ行為をすれば元に戻るかもしれん」
「…へ?」
首を傾げる飛段に構わず、角都は地怨虞を伸ばして飛段の腕を後ろでくくりつけた。
先程とは違う雰囲気に飛段は大きくうろたえた。
「おいおいおいおい!」
「黙れ」
「いやいや、黙れじゃねえ! やめろコラ! なにしようとしてんだァ!?」
「雰囲気で察しろ」
「察してっから止めてんだろがァ!!」
するすると飛段の服の中に地怨虞が侵入してくる。
「あ、ちょ、ちょい待ち!」
飛段の目の端に圧害の姿が映る。
それを見た飛段は「待てって言ってんだろ!!」と腹の底から声を出した。
その剣幕にピタリと角都の動きが一時的に止まる。
また動き出してしまううちに飛段は自分の言い分をぶちまける。
「確かに角都には戻ってほしいけどよ、やり方がなんか違うだろ! たとえこれで戻れるとしてもオレは超嫌だ! てめーの体の前だぞ。オレは…、ちゃんと角都の体+角都の心で抱かれてーし…」
だんだん飛段の顔が恥ずかしさで赤色に染まっていく。
「……………」
煽るな、と角都は内心でツッコみ、引っ込みがつくうちにまたするすると地怨虞を戻した。
解放された飛段は安堵の一息をつく。
だが、周りは簡単に一息をつかせてはくれなかった。
いきなり右側の茂みから数本のクナイが降ってきた。
クナイの後ろには起爆札があった。
ドォン!!
3人の足元に突き刺さったクナイ。
同時に、起爆札が一斉に爆発した。
突然の奇襲に先に気付いたのは角都だった。
「飛段!」
(こんな時にターゲットに出くわすとは…)
土煙が舞うなか、爆発から逃れた角都は飛段の姿を探す。
「平気だ! 圧害もな!」
土煙の中で飛段の返事が返ってきた。
角都は己の体のことより飛段の心配を率先したことに気付く。
中身が圧害のため、己の体は今は硬化できない状態だ。
飛段は圧害に気を配りながら辺りを警戒した。
土煙が徐々に晴れていく。
茂みに潜む相手の影を数人確認にした。
すぐに飛段は大鎌を構えてそちらに突っ込んだ。
こちらを攻撃される前の先制攻撃だ。
勢いよく横に振り、たった一太刀で全員の首を跳ね飛ばした。
「へっ、手ごたえのねえ…」
「飛段! 気を抜くな!」
「!!」
飛段が切り裂いたのはすべて丸太だった。
身代わりの術だ。
気付いた時には真上から起爆札つきのクナイの雨が降り注いだ。
「!」
飛段が先に起こした行動は、圧害に駆け寄り、クナイが降り注ぐ範囲から突き飛ばしたのだ。
「くっ!」
飛段は大鎌を投げると同時に勢いよくワイヤーを引き伸ばした。
「飛段!」
ドン!!
再び大きな爆発が起き、地面にワイヤーの破片が散らばった。
舞い上がる土煙のなか、角都は崖の向こうへと落ちる飛段を見る。
その光景は途中までスローモーションのように見えた。
同時に、近くで飛段の大鎌の刃先が地面に突き刺さる。
角都は舌を打ち、崖へと飛び出した。
底は深い。
落下すれば体がバラバラになるだろう。
光景を見た敵のひとりがほくそ笑んだ。
「見たか。片方とバケモノを倒したぞ!」
「残るは1人か」
敵の数は4人。
土煙が完全に晴れる前に圧害を囲む。
「終わりだな」
圧害は敵の数を確認し、睨みつける。
「ヒダン、カクズ、オトシタ」
背中の縫い目がブチブチと音を立てた。
這い出てくるものに敵は戦慄を覚える。
*****
落下して地面に叩きつけられるのだと痛みを覚悟していた飛段は、ぼふっという衝撃を受けた。
目を開けると、飛段は角都の背中に乗っていた。
「角都! うおっ」
角都は翼を動かし、不器用にふらふらと飛んでいる。
飛段は落ちそうになり、その体につかまった。
「意外と難しいものだな」
気難しそうな声に飛段はぷっと噴き出す。
「おめー、飛ぶのが嫌だから嫌がったんだろォ」
「黙れ、勢いつけて落とすぞ」
「あ! 圧害が!」
はっとした飛段は真上を見上げる。
だが、敵と圧害の姿は見えない。
角都は急がなければと上昇していくが、やはりフラついている。
もうすぐで上昇しきるところでいきなり炎の波が崖上から飛び出した。
「「!」」
びっくりして落下するところだった。
「なんだァ!?」
角都は飛段をのせたまま再び上昇し、敵と圧害の姿を確認する。
圧害の周りには頭刻苦と偽暗がいた。
頭刻苦は炎を吐きだし、偽暗は雷を放っている。
地面に降りると同時に、飛段は角都の背中から転がり落ちた。
着地が上手くなかったからだ。
圧害は地怨虞で手を伸ばし、敵のうちのひとりを引きずって飛段に近づいた。
その敵は、角都のターゲットだ。
「ヒダン、ギシキ」
そう言って飛段の目の前に敵を転がした。
怯えてこちらを見上げる敵の目を見た飛段は舌舐めずりし、杭を取り出す。
「わかってるじゃねえか。エラいぞ、圧害」
飛段は先程のお返しとばかりに振り上げた杭を容赦なく振り下ろした。
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