堕天使からの贈り物
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角都に拾われた場所に到着し、そこから記憶をたどりながら道を走る。
行き先はこちらの世界に飛ばされた時の場所だ。
角都がいないことでパニックになり、無茶苦茶に走ってしまったため、その場所に向かうのは困難だった。
それでも行くしかない。
今の格好は目立つため、建物の上を飛び移っていくことにした。
上から街を見下ろすことができる。
「確か…、あそこで激突しちまって…」
思い出しながら先へ先へと進む。
分かれ道の時は、一度地上に降りて目印のようなものを捜した。
「角都…」
*****
飛段が最初にこちらにやってきた路地裏に、あの空間の裂け目が再び現れた。
「痛って!」
そこからこちら側の飛段が飛び出し、地面に転がった。
地怨虞で伸ばされた角都の右手を持って。
周りを見回し、元の世界に戻ってきたことを確認した。
そこは、絡んできた酔っ払い達から隠れようと入り込んだ路地裏だった。
そこらへんのサラリーマンをつかまえてこちら側の角都のことを聞こうとしただけなのに、相手はそれを喧嘩とられてしまい、面倒なことになった。
そして、隠れている時にいきなりあちら側につれて行かれてしまった。
「どこだよ…。オレ…」
あちら側の飛段の姿がどこにも見当たらない。
入れ替わったのなら、そこから動かないでほしかった。
同じ人間同士、テレパシーのようなものが使えるのではないかと思い、
「オレよ~~~、来い!!」
必死に念じてみたが、飛段は現れない。
「どこ行ったんだよ…」
角都の腕の伸縮にも限界がある。
飛段は角都の手を建物のパイプにつかませ、ゆっくりと離した。
「ちょっと、捜してくる!」
裂け目が閉じる前に、と路地裏を飛び出した。
ドン!
「「ゲハッ!!」」
同時に、互いの額をぶつけてしまい、その場に仰向けに倒れた。
気絶しまいと2人同時にすぐに半身を起こして、互いの顔を見る。
「「!!」」
同じ顔だ。
鏡を見ているようだ。
こちら側の飛段は、目の前の自分が角都と同じ暁の外套を身に纏っているのを見て、はっとした。
「あっちのオレだな!?」
「なんでおまえ…」
なぜこちら側に帰ってきているのかと驚いていると、こちら側の飛段はあちら側の飛段の右手首をつかんで一緒に立ち上がる。
「おまえをこっちに飛ばした賞金首追いかけてつかまえて、またこっちに繋がる空間を開かせた! 角都はこっちに来れないから、オレが代わりに迎えに来たんだ」
事情を聞かされ、あちら側の飛段は「角都が…」と嬉しさを覚えた。
こちら側の飛段は急かす。
「閉じる前に早く帰れ!」
2人は路地へと駆け込み、裂け目の前に立った。
先程より裂け目が小さくなっている。
「おいおい、なんで小さくなってんだ!?」
向こう側でなにかあったのだろう。
「角都」
あちら側の飛段は角都の手をとり、己の頬に添えた。
愛おしそうな顔をしているので、こちら側の飛段は「オレにもそんな顔ができたのか」と内心で驚く。
「こっちの角都のこと、知ってるか?」
背を向けられながら言われ、こちら側の飛段は不意を突かれた。
「! 会ったのか!?」
やっぱり知っている。
それが確認できてあちら側の飛段はホッとした。
「安心しろ。やり直しを要請した」
「やり直しって…」
どう安心していいのかわからない。
「お、どうすりゃいいんだ?」
「2回引っ張れば引き戻される」
あちら側の飛段はこちら側の飛段に言われた通り、角都の手を2回引っ張った。
あちら側の飛段は振り返り、笑みを向ける。
「頑張れよォ」
もうひとりの自分に贈れる言葉はそれだけだ。
でも、それだけでいい。
自分だからこそわかる。
引っ張られ、あちら側に引き戻される。
暗闇の空間の向こうに、光が見えてきた。
光の向こうには、愛しい者の姿が。
「角都ゥ!!」
そして、愛しい胸へと飛び込んだ。
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