堕天使からの贈り物
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飛段は真っ白な紙に鉛筆を走らせていた。
歪んだ文字が横文字に書かれていく。
はいけい、角都さま
オレがいなくて超あせってませんか?
オレは角都がいなくて超さびしいです
こっちにも角都がいるけど、かっこうも、かおも、声も、せい角(←○性格)もにてるけど、やっぱりオレはそっちの角都がいいです
そちらはどうですか?
オレは今
飛段は鉛筆を止め、周りを見回した。
大学の講義室で、ほとんどの学生が真剣な顔で目の前のテストと向き合っている。
デイダラもイタチもだ。
通路側の端に座っている飛段はテストの裏面に、鉛筆を再び動かした。
テストという紙に、マジ殺されそうになってます
朝からデイダラに叩き起こされ、こちらの飛段が着ている黒のTシャツとジーンズに着替え、朝食を食べて寮を出、デイダラとイタチと共に大学へと向かった。
寮や大学、料理、生徒の服装、授業など、見たことのないものに、傍にデイダラとイタチがいたので、仕方なく内心ではしゃいでいた飛段だったが、その日が試験日とはまったく知らなかった。
配られたテストの表面を見るなり、飛段の頭から煙があがる。
教授の「始め!」という言葉とともに学生達は目の前のテストに向かった。
飛段の顔は死んでいた。
角都への手紙は現実逃避への行為だ。
ひっくり返し、表面を見つめる。
小さな文字がズラリと縦文字に並び、飛段にとって知らない漢字も多かった。
わかることと言えば、別紙で配られた答案用紙に、自分の頭を悩ませている問題用紙の答えを書くことだけだ。
(ゲハァァァ! 全っ然、わかんねーよ! こんなの向こうの試験でもやったことねえっつの!)
飛段は頭を抱えた。
忍の試験でも、飛段の結果は破滅的なものだった。
カンニングをしない限り、ムリである。
(なんか、どっかの中忍試験で、忍術使ってカンニングしてもいい試験あったよなァ…)
ふと耳にした噂を思い出したが、だからといってどうなることでもない。
自棄になって全部の空欄に角都の名前を書いてやろうかと思ったとき、教授が見回っているのが目に入った。
(おいおい、こっちじゃ試験官はあいつだけかよ。しかも普通のオヤジ…)
あちら側では、小さな試験に最低でも2人の忍の試験官がつく。
教授はどう見てもただの一般人であり、飛段は「なんであのオヤジ相手にカンニングする奴いねーんだろ」と不思議に思った。
そこではっと閃き、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。
筆箱からよく尖った鉛筆を取り出し、教授と学生がこちらを見ていないことを確認したあと、窓に向かって勢いよく鉛筆を投げた。
クナイを投げる時と同じだ。
パァン!
「!!」
突然割れたガラスに全員が「何事だ」とそちらに振り返った。
同時に、飛段は素早く動きだす。
忍の動きで風のように走り、一部の学生達のテストを見た。
全てを記憶するのはムリだったが、気付かれる前に席に戻り、覚えたことをそのまま書き写す。
最低でも4分の1の点数がとれるだろう。
カンニングのやり方まで派手な男だ。
*****
授業が終わり、昼休みとなった。
飛段達は講義室で話し合う。
「さっきの、なんだったんだろな? うん」
「内側から割れたのか外側から割れたのかわからないらしい」
「コエーよなァ」
飛段は顔をニマニマとさせながらわざとらしく言った。
それでも2人は飛段がやったとは思わないだろう。
ましてや鉛筆でなどと。
あちら側の2人なら気付くところだ。
講義室の黒板の上にかけられてある時計を見たデイダラは「あ」とこぼした。
「やば…、早く食堂行かないとサンドが売り切れちまうぞ。うん」
食堂にはパンなども売られてある。
飛段が「?」と首を傾げると、デイダラは「忘れたのか?」と片眉を吊り上げて続けた。
「飛段も楽しみにしてただろ。豚肉と牛肉を挟んだ、ミートサンド…」
「食堂ってどっちだァ!?」
飛段はデイダラの胸倉をつかんで迫る。
デイダラはその剣幕に「うわっ」と驚いた。
代わりにイタチが答える。
「おまえは新入生か。窓から見えるだろ? あの水色の屋根…」
すぐに飛段は窓へと走り、窓枠に足をかけた。
それを見たイタチとデイダラは驚愕する。
「待て飛段! ここ、5階…!!」
止めるデイダラに耳も貸さず、飛段は躊躇なくそこから飛び降りた。
ぎょっとした2人は急いで窓へと駆け寄り、下を見下ろす。
建物の壁を駆け下りた飛段は地面に着地し、またもや風のように食堂へと向かった。
「あいつ、いつの間にあんなことが…」
「忍者みたいだな。うん」
忍者です。
その忍者が目的のミートサンドを誰よりも一番に手に入れたとは言うまでもない。
.