堕天使からの贈り物
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
勤めている会社で仕事をしながら、角都は家にいる飛段のことを考えていた。
いきなり知らない男の家に連れて来られ、自分が仕事に行っている間に家から出て行ったのではないかと。
柄にもなく不安になった。
いつもより仕事が遅れているのもそのせいなのだろう。
部下が名を呼んでいるのさえ気付けなかったし、パソコンで何度も打ち間違えた。
飛段を拾った時は内心で喜んでいたのに、家に置いてけぼりにすると落ち着かない。
時間が短くも長くも感じられた。
会社が終わり、電車に乗って吊り革につかまり、揺られながら家へと向かう。
毎回電車に乗り、座席を見て思い出すのは、あの時のことばかりだ。
*****
4年前のことだ。
その日は仕事がスムーズに進み、残業もなく、早く切り上げることができた。
帰りの電車で、席が空いていたためそこに座った。
うたた寝している老婆と、高校の制服をだらしなく着た学生に挟まれる。
ふと、角都は左隣の学生を見た。
後ろに流した銀髪で、整った顔立ちをしていたので思わず魅入ってしまった。
相手が男だとわかっていても。
疲れていたのか、学生は居眠りをしていたため、角都の視線には気付かない。
あまりじっと見つめていては周りの乗客が不審に思うため、向かい側の窓を見つめた。
しばらくして、肩に重みを覚えた。
学生に寄りかかられたからだ。
見た目は不良だというのに、可愛く思えた。
自分はギャップに弱かったのか、と内心で驚く。
どうりで見た目通りの女に言い寄られても心がなびかないはずだ。
「むにゃ…」
寝言が聞きとれず、そんな風に聞こえて笑いそうになった。
周りを確認してから頭をそっと撫でてみる。
良いワックスを使っているのか、障り心地も良い。
「ん…」
学生が肩に頭を擦りつけてくる。
そのせいで髪が少し乱れ、アホ毛が立った。
角都は右手を口に当てて笑いを堪える。
次の駅で電車が停車してアナウンスで到着駅を告げられ、はっと目を覚ました学生は、席から立ち上がり、寝惚けた顔で角都に「すんません」と言って慌てて電車から降りた。
その背中を見送った角都は、無意識に飛段が寄りかかっていた肩を擦る。
それからたまに飛段を見かけるようになったが、肩に寄りかかられるようなことはなかった。
その1年後にはまったく見かけなくなり、再会したのがつい最近のことだ。
.