もうひとりのおまえに
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ある日の休日、夜の街をフラフラと歩いていた飛段は、酔っ払ったガラの悪い大人達に絡まれてしまった。
つっかかってしまったせいで表通りを逸れた場所に連れられ、建物の壁に突き飛ばされて尻餅をついたところだ。
酔っ払いは3人だ。
その気になれば勝てるのではないかと立ち上がり、目の前の3人の酔っ払いを睨みつける。
「あ? なんだ、やんのか?」
酔っているせいで呂律がうまくまわっていない。
一斉にかかってきそうだ。
「大の大人がみっともないな」
「!」
3人の酔っ払いの背後に、大きな影が立った。
振り返った3人の酔っ払いはその男を見上げてぎょっとする。
「酒を貪って自分の金を無駄に使うのは構わんが、酔った勢いで相手に絡むな、見苦しい」
「ああ!?」
声を荒げた真ん中の酔っ払いが男の胸倉をつかんだ。
その勢いでスーツのボタンがひとつ取れる。
ボタンは飛段の足下に転がった。
「それが見苦しい」
男は胸倉をつかむ右手の手首を右手でつかみ、力を込めて外した。
「イテテテテ!!」
酔っ払いは声を上げ、男が手を放すとすぐにつかまれた右手首を押さえて離れた。
フラフラとした足どりで後ろに下がり、連れの酔っ払い達の前で尻餅をついた。
酔いが少し醒めたのか、2人の酔っ払いは浮足立っている。
「さっさと失せろ。殺すぞ」
その言葉に震えあがった酔っ払い達は、「見苦しくてすみませんでした」と言って男の横を急いで通過して行った。
それを肩越しで確認した男は小さなため息をついたあと、飛段に近づいた。
「あんな連中を相手にするな。あとが面倒だ。立てるか?」
男は手を差し伸べ、飛段は素直にその手をとって立ち上がった。
「この時間帯は酔っ払いが多い。あまりウロウロするな」
男は飛段の頭を一撫でしたあと、背を向けて行ってしまう。
飛段は茫然とその背中を見つめていた。
「…あ、ボタン…」
飛段は拾ったボタンを渡すのを忘れていた。
その日からだ。
名も知らぬ男のことで胸を痛め始めたのは。
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