もうひとりのおまえに
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夕方、アジトに着いた角都と飛段。
飛段の前を歩く角都は真っ直ぐにペインの部屋へと向かい、ノックもせずに扉を開けて中へと踏み入り、部屋の椅子に座りながら資料に目を通していたペインに事態の説明をした。
説明を聞き終えたペインは角都の背後でキョロキョロと部屋の中を見回している飛段を一瞥し、角都と目を合わせて「そうか」と答える。
あちら側に行ってしまった飛段と連絡を取ろうと試みたが、圏外か電源を切られたかのように通じない。
「……あちら側では、連絡をとるのはムリだ」
ペインは首を横に振って答える。
「こちらに飛段を連れ戻す術はないのか?」
「その賞金首を捕まえ、もう一度同じ術を使わせて連れ戻すしかないだろう。始末しなくて正解だったな」
まさに不幸中の幸いだ。
賞金首を殺していたら、飛段を連れ戻す術はなくなっていただろう。
「スゲー目だなァ。ピアスもカッコいいー」
飛段は遠慮なくジロジロとペインの顔を見つめていた。
ペインはじっと飛段と見つめ合ったあと、その頭を撫でながら角都に顔を上げて言う。
「別にこの飛段でもよくないか?」
褒められたのが嬉しかったようだ。
こちら側の飛段は、褒めるどころか馬鹿にしているからだ。
笑えない言葉に、角都はペインを睨んで言い返す。
「馬鹿を言うな。殺すぞ」
飛段の襟をつかんで引き戻し、己の背後に隠す。
別の飛段だとわかっていても、他人に触れられるのは不快だ。
「(半分)冗談だ。とにかく明日、逃した賞金首を探しだして捕まえるしかないだろう。他のメンバーにも声をかけておく」
一度取り逃がしてしまった賞金首を見つけ出すのは、自分ひとりでは容易ではない。
角都は仕方なく、「頼んだ」と言ってその言葉に甘えることにした。
飛段があちら側の世界で今なにをやっているのか、心配でたまらない。
ペインの部屋をあとにしたあとも、飛段はキョロキョロと周りを見回して落ち着きがなかった。
目を輝かせているので、警戒しているわけではなさそうだ。
憧れの「それっぽい」場所が気に入ったのだろう。
時折、なにもない部屋をノックもなしに半分開けて覗いたりしている。
広い広間に来ても飛段はキョロキョロと見回していた。
広間をウロウロとしそうだったので、見兼ねた角都は声をかける。
「迷うぞ」
こちら側の飛段も、当初は迷子になったことがあるのだ。
「えっ、迷うのか?」
ピタリと飛段の動きは止まり、犬のように急いで角都の傍に戻ってくる。
そのまま自分達の部屋へと赤い絨毯の上を渡って広間を通過しようとしたとき、聞き覚えのある声が右にある開け放たれた出入り口から聞こえ、角都と飛段はそちらに振り返る。
「角都、面倒なことになったようだな」
サソリとデイダラが出入り口から出てくる。
そのあとすぐに鬼鮫とイタチがついて出てきた。
「リーダーから話は聞きましたよ」
サソリに続いて鬼鮫も声をかける。
鬼鮫達はともかく、サソリは冷やかしに来たのだろう、と角都はため息をついた。
なにか言い返してやろうとしたとき、
「デイダラ! イタチ! 旦那!」
「!?」
飛段は、驚く角都の横を通過し、嬉しそうな顔でデイダラ達に走り寄った。
「なんだよ、おまえらもこっちに連れて来られちまったのかァ!?」
突然のことに、デイダラとイタチは顔を見合わせて茫然と飛段を見つめていた。
「おい、なんであっち側の飛段がこっち側のこいつらのこと知ってんだ?」
考えられることはひとつだ。
「おそらく、あちら側にもおまえ達が存在しているのだろう」
そのことにデイダラは驚きを隠せなかった。
「旦那も一緒なのか!? うん!?」
こちら側の飛段はサソリのことを「旦那」とは呼ばない。
あちら側について興味津々になる。
同じくイタチも興味が湧いていた。
「なんだ。こっち側の奴らなのか」
飛段は残念に思ったが、驚いてもいた。
並行世界に存在しているのは自分だけだと思っていたからだ。
「でも、こちら側でも一緒なんて腐れ縁だなァ」
若干嬉しくもあった。
「飛段、あちら側でオイラ達はどんな関係なんだ? うん?」
「同じ大学に通ってる。オレとイタチが同じ学年で同じ文学部。デイダラは1つ下の学年で芸術部な」
首を傾げるデイダラ達に、角都は大学がどういうところなのかを説明した。
飛段より丁寧でわかりやすい。
納得したデイダラは、次の質問を投げた。
「旦那はなにやってんだ?」
「芸術部、彫刻科の院生。こっちでもあだ名は「旦那」なんだな。ちなみに、おまえと付き合ってるぜ」
「マジか!? うん!?」
デイダラは興奮気味に声を上げた。
それを見た飛段は、こっちでもそうなのか、と察する。
「とことん腐れ縁だな」
そっぽを向いてそう言うサソリも、どこか嬉しそうに見える。
「ちょっと待て! オレと鬼鮫はどうなっている!?」
話が終わるのを阻止するかのようにイタチは飛段の胸倉を右手でつかんだ。
「うわ!? なんだ!?」
「後ろの鮫に見覚えはないのか!?」
こちらでもあちらでもデイダラとサソリがラブラブなのが羨ましいのか、イタチは顔を近づけて問い詰めた。
イタチ越しの鬼鮫を見た飛段は首を横に振る。
「知らない! そんな鮫顔の奴がいたらオレ覚えてるしィ!」
「鮫顔とはなんだ!? 鬼鮫を愚弄する気か!?」
先程「鮫」と言ったことも忘れ、イタチは天照の目になる。
慌てて止める角都と鬼鮫。
「落ち着けイタチ! あちらではこれから出会うかもしれん!」
「天照はいけません! お体に障りますよ!」
こちら側の友に殺されかける飛段だった。
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