リクエスト:名を呼ぶ光
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翌朝、目を覚ました飛段は、まず膝の重みに眉をひそめ、上半身を起こした。
そこには、堂々と自分の膝で大の字で眠っている角都の姿があった。
「な…」
外套も頭巾もつけていない、自分にしか見せない無防備な姿だ。
寝かされた布団の近くでは心臓達も眠っている。
「え…と…、か…、角都…?」
起こそうとその肩に触れようとしたとき、
「もう少し寝かせてあげてよ」
「!」
はっと窓際に振り返ると、そこにはあぐらをかいて座っているイヅナがいた。
「おまえ…」
飛段は助けた子ぎつねのことを思い出す。
「ようやく眠ったところなんだ。飛段が目を覚まさないから、心配で。「これで大丈夫だから」って何度も言ったのに…」
「…なにがあったんだ? オレ…、確か仮面のヤロウに胸を貫かれて…」
胸を見るが、紋様は痕を残さず消えていた。
イヅナは腕を組む。
「順に話すよ」
そう言って、今までのことを話した。
角都が飛段の魂玉を取り返すために、どれだけ必死になっていたのかも。
「……そうか…」
飛段は優しげな視線を角都に向け、その頭を撫でた。
「ありがとな…、角都…」
よほど疲れていたのか、角都は寝息を立てたまま起きる様子を見せない。
「そういえば、角都と一緒にいて、いじわるとかされなかったか?」
「? いや…」
いじめといういじめは受けていない。
むしろ、励まされた方だ。
なぜ飛段がそんなことを言うのか首を傾げると、飛段は苦笑混じりに話した。
「こいつ、昔、キツネに酷い目に合わされたらしいんだよな。オレが埋められてる間。うまいこと死んだフリ決めて助かったし、オレも助けられたけど、それ以来、キツネが嫌いで…」
だから、すぐにイヅナを助けようとはしなかった。
角都はそんなことはイヅナの前では一言も口にしなかったし、そんな素振りも見せなかった。
目を丸くしていると、飛段は安心させるような笑みを浮かべて言う。
「おまえのおかげで、キツネ嫌いも少しはマシになったんじゃねーの?」
それを聞いてイヅナはほっと胸をなで下ろした。
「…オレっちはそろそろ行くよ。仲間も待ってるし…」
そう言って窓を開け、窓枠に飛び乗る。
「もう行くのか?」
「うん。ヤコも捕まえたし、仲間も「スゴい」って褒めてくれた。…角都に礼言っといて。「ありがとう。オレっちも角都のような忍になれるよう、頑張る」って…」
イヅナは角都を一瞥したあと、「じゃあ」と言って窓から飛び降り、宿の前で並んで待っている仲間のもとへと戻った。
「…なんか…、嫉妬するなァ…」
布団の脇には、木の葉で包まれた稲荷寿司が置かれていた。
イヅナが置いていったものだろう。
飛段は口元に笑みを浮かべながら角都の頭を優しく撫で、角都が起きないようにそっと膝を引き抜いて布団から出ると、押入れから別の毛布を取り出し、角都にかけた。
そして、自分もその毛布に潜りこみ、角都の背中に頬と耳を押し当てる。
心臓達がみんな外に出ているため、1人分の心音しか聞こえない。
「…おまえの魂玉ってどんなだろうな。オレも気になってきた…」
瞳のように、鮮やかな赤なのか、それとも緑なのか。
艶のある黒なのか。
それとも意表をついた別の色なのか。
「どんな色でも、キレーなんだろうなァ…」
再び眠気がやってきた。
今度は、角都が起こしてくれるはずだ。
起きたら、一緒にイヅナからもらったあの稲荷寿司を食べよう。
「角都ゥ、お疲れさま」
魂玉の中にいた時よりも安らかな顔で、飛段は再び眠りにつくのだった。
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