リクエスト:偽りの恋唄
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早朝、宿をあとにした飛段とカタリは行く当てもなく町の大通りを歩いていた。
早朝で人の行き来も少ない。
飛段は眉間に皺を寄せたままそわそわと落ち着きがなかった。
「なあ、なんでさっさと町出ねーの?」
「飛段の足枷を断ち切らなければな。安心はできない」
カタリは薄笑みを浮かべて答えた。
飛段は舌を打つ。
「はっ、足枷もクソもねーよ。さっさと町を出て行けば、追いかけてくるのは精々オレの組織の追手だけだ」
暁は裏切り者を許さない。
大蛇丸と同じように始末の命が下されるだけだ。
不死身だから命を奪われるようなことはないが、心配なのは人間であるカタリだ。
川沿いの道に出た時だ。
そういうことを考えていると、カタリは不意に立ち止まり、飛段は首を傾げてカタリの右隣で立ち止まった。
「どうした?」
「……飛段、意外と来るのは早かったようだ」
「!?」
はっと振り返ると、明らかに殺気立っている角都が距離を置いて立っていた。
「どこで道草を食っているかと思えば…」
飛段は殺意のこもった瞳で角都を睨む。
構わず角都は「戻るぞ」と声をかけた。
「エラそうにほざいてんじゃねーよ」
飛段は背中の大鎌を手に取り、構えた。
「飛段?」
飛段の様子がおかしいことにはすぐに気付いた。
あんな冷たい目は今まで向けられたことがなかった。
それに見知らぬ相手にほいほいとついていくほどの間抜けでもない。
「飛段はオレと共にいたいらしいぞ、角都」
カタリは冷笑を浮かべて馬鹿にするように言った。
「貴様、飛段になにをした?」
「なにを? くくっ、昨夜、宿で、飛段にナニをしたのか、そんなに聞きたいか?」
角都を奥歯を噛みしめ、カタリに突進し、硬化させたコブシを振り上げてカタリの顔面目掛けて振るう。
それを阻止したのは飛段の大鎌だった。
「カタリ! 油断してんじゃねェ!!」
「どけ! 飛段!」
「どくかよバーカァ!!」
飛段は大鎌を大きく振るいながら角都のコブシを弾いていく。
「ゲハハッ、殺してやるよォ! 角都ゥ!!」
「馬鹿が!」
角都は右手で飛段の大鎌の柄をつかみ、左手を地怨虞で伸ばして飛段の首をつかんだ。
「ぐっ…」
荒いやり方だが、他に飛段を止めるやり方は思いつかない。
「目を覚ませ! 貴様はそいつに唆されているだけだ!」
「うるせェ!! 黙れェェェェ!!」
「飛段」
カタリが飛段の名を呼び、琵琶を奏でる。
「!?」
角都は己の異変に気付いた。
大鎌をつかむ右手と飛段の首を絞める左手の力が緩んだ。
その音色にチャクラが急速に吸われているかのように。
「く…っ」
「この時を待ったぞ、角都」
カタリはすぐさま角都の背後に回り込み、琵琶の柱を引いて仕込み刀を取り出した。
防ごうとした角都だったが、チャクラを吸収されてしまったため、硬化が遅れてしまった。
「失敬」
ズバンッ、と仕込み刀の刃が角都の背中を切り裂く。
ほくそ笑んだ飛段はその場で一回転し、角都の首目掛け大鎌を振るった。
「!」
だが、すぐに持ち変え、代わりに角都の腹に勢いのついた蹴りを打ちこんだ。
「っ!」
角都は堤防を越えて川に落ち、大きな水飛沫を上げ、姿を消した。
飛段は堤防まで走り、川の水面を見つめて角都の姿を探したが、水面には影も形も映っていない。
「チッ。どこ行きやがった?」
「溺れてないか? この川はけっこう深い…」
「それぐらいで死ぬタマなら苦労しねーよ! それにあいつは心臓が…」
「ああ、知っている。5つあるんだろう?」
飛段はカタリに振り返り、首を傾げる。
昨日の宿でも角都のことはカタリには喋ったが、心臓の数までは話していない。
なぜカタリが知っているのか。
「さっき、チャクラを吸引する調べを奏でた。少なくとも大技を出す心配はない」
「……………」
飛段の表情が曇り、カタリは片眉を吊りあげた。
「なんだ? 奴が心配か?」
「ち、違う…」
「そうだ。飛段はオレの心配だけをしていればいい」
「当たり前だろ」
それでも飛段の瞳は虚ろながら揺らいでいる。
先程もわざと大鎌を使わなかったのを見逃さなかった。
それがカタリにとっては気に食わない。
なぜあんな男の心配などするのか。
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