リクエスト:歌声よ届け
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翌日、AKATSUKIの事務所は電話のコールで騒がしかった。
どれも「“キズシルベ”のシングルCDはいつ発売されるのか」「配信はいつなのか」などの電話がライブ後から殺到しているからだ。
予約を求める者までいる。
そんな事務所内を、イタチとデイダラとトビは茫然と眺めていた。
「大変なことになってるな」
「けど、これ、間違いなく1位いただきだな。うん♪」
「ところで、飛段先輩はまだなんっスか?」
トビは携帯から電話をかけてみるが、電源が切られていた。
だが、イタチとデイダラは飛段の居場所の見当は大体ついていた。
*****
事務所に行く前に、飛段は角都が入院している病院に寄っていた。
「傷の具合はどうだ? 角都」
「まだ痛むが、しばらく安静にしていればまたそちらに復帰できる」
2人きりの病室で、飛段はベッドの脇のパイプ椅子に座り、角都のために不器用にリンゴの皮を剥いていた。
その様子を見て危なっかしいと感じた角都は「オレがやる」とリンゴと包丁に手を伸ばすが、飛段は自分でやると言ってきかない。
「あの歌…、おまえが作ったのか?」
「ゲハハッ。歌ってて超恥ずかしかったんだからな。で、どうだった?」
笑っているが、飛段の瞳は真剣だ。
「……聴いていたオレも恥ずかしかった」
「おい! 褒めろよ!」
そう言われて余計に恥ずかしくなり、飛段は顔を真っ赤にして頬を膨らませる。
その時、角都は飛段の手首にリストバンドがないことに気付いた。
「おまえ、リストバンドはどうした?」
「あ? ああ、リンゴの汁つかないようにポケットに入れてる。角都からのプレゼントだし、大事にしたいし」
「…!?」
笑みを向けてそう言った飛段に角都は酷く動揺した。
「い、いつ、オレがあげたと…」
「あ、やっぱりアレ、角都だったのか」
「!!」
かまをかけられた。
飛段もまさかと思っていたが、判明すると気恥ずかしいものだ。
「や、なんとなく…、そうじゃねーかなって…」
2年前のライブの前に、飛段は楽屋で、手首の傷が目立たないようにファンデーションを塗りたくっていた。
色が濃すぎて逆に目立ってしまう。
急いでクレンジングで落とし、どうやって隠そうかと頭を悩ませる。
「布でも巻こうかなァ」
「早くしろ。そんなもの、リストバンドで隠せばいいだろ」
扉の前に腕を組みながら立っていた角都は冷たく言った。
「持ってねーよ。ブレスレッドとかそんなんばっかだしィ」
仕方なく、その時は適当な布を巻いてライブに出た。
そして、ライブ後、都合良くリストバンドが贈られた。
角都の手から。
誰から見ても角都が怪しい。
しかし当時の飛段は角都をよく知らず、鬼のように厳しい人間と見ていたため、他人にプレゼントを贈ることはありえないと勝手に決め付けていた。
だが、先日、角都に助けられたとき、角都の口から「認めている」と聞いたとき、今まで自分は角都のことを思い違いをしていたのではないかと改めて考えなおした。
「えーと…」
プレゼントの持ち主が判明したあとのことを考えていなかったため、飛段は目を泳がせながら手元を動かし、
「あちィっ!!」
誤って右手の人差し指の指先の腹を切ってしまう。
飛段は慌てて包丁と剥きかけのリンゴを小棚に置き、左手で右手の人差し指を包んで「うわっ、血、血、血!」とおろおろとする。
角都は呆れてため息をつき、手を伸ばして飛段の手首をつかみ、
「!!」
その人差し指を口に含んだ。
「血が流れただけで慌てるとは、おまえも変わったな」
口に指をくわえたまま、角都は薄笑みを浮かべた。
「か…、角都…」
角都は口から指を離し、リクエストする。
「飛段、あの曲を歌ってくれるか?」
オレとおまえの歌を。
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