リクエスト:歌声よ届け
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病院に運ばれた角都は、長時間にわたる手術のあと、無事一命をとりとめた。
しかし、意識は戻らないままだ。
角都がいる病院の個室には、AKATSUKIと事務所の社長が来ていた。
「角都…」
飛段が呼んでも、角都は目を覚まさない。人工呼吸器から角都の息が聞こえる。
(大ごとになる前に対処できてよかった…)
社長のペインはホッと胸をなで下ろしていた。
スタジオの者が叫ぶ飛段に気付き、状況を理解してすぐに救急車を呼んだ。
一般人はAKATSUKIのマネージャーが刺されたということは知らない。
「今回はうちの者が気付いたから良かったものの。飛段、おまえは冷静に場所と状況を考えろ。ヘタをすれば、全国ライブは中止だ」
その言い方に苛立ったデイダラはパイプ椅子から立ち上がり、社長を睨みつけて怒声を上げる。
「あんなの、冷静になれって方がムリだ! うん! それに、どちらにしろこんな状況で飛段が歌えるはずが…」
「やめろデイダラ」
デイダラの隣に座っていたイタチは、座ったままデイダラの手首を握った。
デイダラはその手を振り解き、唸り声を漏らした。
「…ライブには出る」
「!」
そう言ったのは、飛段だった。
角都の顔を見つめたまま、言葉を続ける。
「角都もそれを望んでる。オレは角都を裏切りたくない」
「飛段…」
デイダラは飛段がマイクを離していないことを理解した。
角都が病院に運ばれた時の飛段は見てて痛々しいものだったが、今はその背中が頼もしく見えた。
この男のためにギターを弾きたいと思える。
それはイタチも同じだ。
「……ラスト、あの曲、歌ってみようかと思う」
飛段のその言葉に、デイダラはあの楽譜を思い出した。
「あの曲を? いいのか?」
飛段は「歌えない」と言ってその曲を歌うのを拒んでいた。
今度は自らすすんで歌おうとしている。
飛段はデイダラ達に振り返り、笑みを見せた。
「今なら、歌える。たぶん、今までの曲以上に」
その顔は自信に充ち溢れていた。
今までこんな顔をした飛段を見たことがあっただろうか。
それはメンバーも社長も同じだった。
飛段は角都の頬に手を添え、涙を堪えて言う。
「時間がない。始めようぜ」
ライブまであと1日。
それまで、全力で曲の練習だ。
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