リクエスト:歌声よ届け
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それから2年の歳月が経過した。
飛段が好きだったバンドの事務所のマネージャーである角都のスカウトで、飛段はヴィジュアル系ロックバンド“AKATSUKI”で活躍していた。
ボーカルの飛段、ギターのデイダラ、ベースのイタチ、ドラムのトビの4人で活動している。
その歌声と奏でられるメロディーは人々を魅了させ、今では色んな番組出演を依頼されるほどだ。
熱狂的なファンは今でも増え続けている。
今日は大人気音楽番組のライブだ。
ライブに入る前に、番組の音楽ランキングのコーナーが始まった。
AKATSUKIのランキングは現在4位をキープしていた。
PVの一部が流され、スタジオにいるAKATSUKIに視聴席から拍手が送られる。
飛段達は嬉しそうな笑みを浮かべて礼をした。
「たった2年でここまでのし上がるバンドはなかなかいませんよ」
司会者に言われ、飛段はマイクを口元に近づけて返す。
「応援してくれるファンの皆さんと、仲間のおかげです」
視聴席から「ひだーん」と女子の黄色い声が上がった。
「うまいこと言いやがって。うん」
デイダラは隣の飛段の頭をガシガシと撫でる。
それから時間となり、AKATSUKIはスタンバイに入った。
準備も整い、それを確認した司会者はカメラ目線に言う。
「それでは、AKATSUKIで、“シャウト”です。どうぞ」
テレビカメラがAKATSUKIのステージに切り替わる。
ちょうど、飛段が右手の黒のリストバンドにキスしていた。
赤や緑、青などのカラフルなスポットライトが照らされ、最初にドラムが叩かれ、ギターとベースが同時に弾き、飛段は息を吸い込み、歌にのせて吐きだす。
脳まで揺さぶるその歌声に会場は盛り上がりを見せた。
*****
番組が終了し、AKATSUKIは楽屋で休息をとっていた。
「大盛り上がりだったな。うん」
デイダラは水の入ったペットボトルを飛段に渡した。
「でも、やっぱああいう大勢の人が見てるとこは緊張するぜェ。危うく歌詞間違えそうになったし」
飛段は渡されたペットボトルを受け取ったあと、キャップを開けて中の水を飲む。
「けど、今回でランキングが上がるかもしれないっスよ。もしかしたらベスト3入りで、オレの人気も上昇するかも~♪」
テンションの高いトビはその場でくるくると回転した。
イタチはその様子を呆れた顔で眺めながら言う。
「ヴィジュアル系には好き嫌いがあるからな。油断はできない」
その時、楽屋の扉がノックされ、角都が入ってきた。
「あ、マネージャー」
デイダラに続き、飛段は軽く手を振って出迎える。
「よぉ、角都ゥ。どうだったァ? オレ達の素敵ライブ♪」
「曲名通り、ただ叫んでいるだけだったな」
「な…」
その冷たい言葉に飛段は眉を寄せた。
「マネージャー、その言い方は…。飛段の歌声のおかげでオレ達はここまでこれたんです。現に、ベスト10に入れました。今はベスト3の手前です」
イタチは口を出すが、角都の冷たい口調は変わらない。
「いい作詞・作曲家を雇っているからな。最初はその順位に入ってもらわなくては困る。4位をキープしているが、入るならベスト1位だ。いつまでもキープできると思うな」
「……………」
飛段は悔しげにコブシを握りしめ、うつむいたまま黙った。
角都は目の前の飛段に指をさして命令口調で言う。
「今度の全国ライブは本気を出せ。わかったな? 飛段」
飛段がうつむいたまま小さく「ああ」と答えると、角都は楽屋を出て行った。
バタン、と閉められた扉の強めの音が楽屋に響く。
「…クソ…!」
「わっ、わわ!? 先輩ストップ!!」
トビは、扉に向かってペットボトルを投げようとする飛段の体に飛びついて止めた。
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