リクエスト:その芳香だけが
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とある飯屋の地下で、男はせっせと旅の準備をしていた。
追われるように焦りながら、風呂敷に適当な荷物を包み、金の入ったアタッシュケースを2つ両手に提げて通路に続く扉へと急ぎ足で向かう。
途中で風呂敷に包まれた小物がこぼれたが、両手の金さえあればいいのか気にしない。
男が扉を開けようとしたとき、
「!!」
目の前の扉は粉々に破壊され、その衝撃で男は尻餅をついた。
「ひ…!」
その姿を見た男は恐怖で体を震え上がらせた。
逃げたくても、腰を抜かしてしまったため立ち上がることさえ叶わない。
「さっさと逃げるつもりだったろうが、一足遅かったな」
男の目の前に立つ角都は、殺気のこもった目で男を見下ろした。
男の顔には冷や汗が浮かんでいる。
「オレが捜していた賞金首に、オレと飛段の情報を売ったな? そして、あとから来たオレはまんまと貴様に罠のガセネタをつかまされたわけだ。賞金首もそうだが、貴様もやってくれる…」
そして今まさに、その賞金首から受け取った金でとんずらしようとしたのだ。
角都を知らない情報屋はいない。
万が一角都が生き残ってしまえば、すぐに報復に来るだろうと予想はしていたが、その行動の速さはこの情報屋にとっては予想外だった。
「そ…、そんなことは……」
男は目の前の相手に言い訳してはならないと途中で言葉を止め、「も、もも、申し訳ございません」と倒れるように頭を下げた。
今の状態では正しい土下座は難しい。
「か…、金は返します…。もちろん…、倍額で…、ひぃ!?」
それが角都の神経を逆なでした。
角都は男の首を右手でつかみ、持ち上げる。
「オレは、金には換えられないものを取られたんだぞ」
「が…っ」
怒りのままに角都の指に力が込められる。
男は角都の手首を両手でつかんだが、ビクともしない。
意識が遠くなりかけたとき、角都の声が脳に響いた。
「貴様の命、なにに換える?」
*****
飛段は賞金首のアジトの一室にある椅子に座らされていた。
その周りは、妖しい紫色の煙を立ちのぼらせるお香に囲まれている。
飛段の体は指一本も動かすことができず、首を少しでも動かすと頭痛が走る。
目は布で隠され、暗闇しか見えない。
「名前は?」
そんな飛段の目の前に座る賞金首が飛段に声をかける。
「…飛…段…」
意思と反して飛段は答える。
自白剤と同じ効果のお香を嗅がされているからだ。
「所属している組織は、暁…でしたか?」
「ああ…」
「相方の名は?」
「角都…」
飛段はもう一度、「角都」と繰り返す。
「その方のことを、詳しく聞かせてください」
そして、角都のことを聞きだした賞金首は「これは使える」と口端を吊り上げ、笑みを浮かべた。
「動いていただきましょうか、私のお人形さん」
右手の人差し指の指先を飛段の眉間に当て、左手の人差し指を己の口元に当て、術を唱えた。
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