リクエスト:その芳香だけが
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ある町の宿の一室で、飛段は角都の背に己の背を預け、ビンゴブックを見つめたまま尋ねる。
「この細目の野郎が今回の相手かァ?」
先程、飛段が今回のターゲットなどが何者なのかを聞いたとき、角都はビンゴブックを懐から取り出してその賞金首が載せられたページを開き、己の背でくつろいでいた飛段に手渡したのだ。
角都は古書を読みながら短く答える。
「そうだ」
2人はその賞金首を仕留めるために、この町に来ていた。
写真の賞金首は、25~30代くらいの男で、細身の体にチャイナ服を着ている。
本当に目を開けているのか怪しく思うほどの細目である。
「風の国からアジトを移転し、この町にやってくる。町に入られる前に仕留める」
賞金首の居場所は、この町の情報屋から得た情報だ。
「…どういう奴なんだ?」
飛段は、載せられた賞金首の顔を見つめながら問い、角都は答える。
「人形を集めている」
「人形?」
そこでやっと飛段の目がビンゴブックから角都の背中へと移った。
「気に入った人間を生身のまま人形にし、コレクションにしているらしい」
「サソリみたいに?」
「奴は手を加えて傀儡にする。その男はそのまま人間の内面を人形のように変える」
「???」
飛段は角都の説明が理解できていない。
角都は面倒になってため息をつき、それ以上賞金首については説明しなかった。
その代わり、賞金首をどう仕留めるかを話す。
「今回はオレひとりで動く」
「え?」
「相手はお香を使った術を使う。それに…」
飛段はその賞金首に気に入られて狙われる確率が高い。
なぜなら、賞金首は若くて美しい男女を人形として集め続けている。
キレもののため、頭脳戦に持ち込まれれば己はともかく飛段は間違いなく不利になるだろう。
賞金首についての情報も少ないため、できれば飛段を参加させたくないのだ。
「「それに…」なんだよ?」
「……とにかく、オレが帰るまで待ってろ。いいな?」
有無を言わさぬような言葉だ。
飛段は「儀式できると思ったのによォ」と膨れていたが、しばらく黙ったあと、「早く帰ってこいよ」と角都の背中に己の頬を擦りつけた。
角都は背を向けたまま頷く。
「…お香と言えば…、角都もつけてる?」
「死臭を消すためにな」
賞金首を仕留めたあとはその死体を換金所まで運ばなければならない。
数日持ち続けなければならないこともある。
だから角都は自ら調合したお香をつけている。
きつくもなければ、甘ったるくもない匂いだ。
「いい匂いだな…」
飛段はこの匂いが好きなのだ。
鼻を角都の背に軽く当て、ゆっくりと鼻で呼吸を繰り返す。
そしていつしか眠ってしまった。
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