リクエスト:神の禁制
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賞金首とその部下達を仕留めた飛段と角都は合流する。
「仕留めたか」
「最初は歯ごたえあると思ってたけどよォ、全然超ダメだな。もっと強ェ贄捧げねーとなァ。角都みたいな」
飛段は意地の悪い笑みを浮かべた。
角都の眉間に皺が寄る。
「殺すぞ」
「冗談だっての。本気で怒んなよ」
笑いを含めながら言う飛段の目の前を通過した角都は、賞金首の死体に近づいてしゃがみ、賞金首の右袖を捲った。
「…?」
賞金首の右腕を見た角都は怪訝な表情を浮かべた。
そのまま、左袖を捲り、左腕も確認する。
(…おかしい…)
己の懐からビンゴブックを取り出し、目の前の賞金首の手配書を確認する。
顔は一致している。
整形した痕もない。
先程見た術は間違いなく本人のものだ。
ただの偽物が簡単にできる術ではない。
「どういうことだ?」
あるはずのものがなくなっているのだ。
「なあ、どうしたんだよ角都ゥ。…おい、聞いてんのか?」
飛段が角都の方に触れた瞬間だ。
バチィ!!
「「!!?」」
いきなり強い電流が角都と飛段の体を襲ったのだ。
角都は思わず飛段から離れる。
「な…、なんだ…?」
飛段は己の手のひらを呆然と見つめた。
ただの静電気とはわけが違う。
「…!」
角都の目が飛段のペンダントに移り、角都ははっとする。
「やられたな…」
「あ?」
飛段は角都の視線をたどり、ペンダントを見下ろした。
「!?」
ペンダントに、常人では解読不能な文字が書かれていたのだ。
「なんだ!? ペンダントが…! 痛って!!」
飛段がペンダントをつかむと、ペンダントから電流が走った。
「印文字を移されたようだな」
ペンダントに移された印文字は、賞金首の両腕に刻まれていたものだ。
この印文字があれば、印を結ばずともすぐに強力な術を発動することができる。
賞金首に刻まれていたのは、雷遁の印文字だ。
誰もが駆使できるものではない。
角都は飛段の頬に触れようと手を伸ばす。
触れようとしただけでも強めの静電気がそれを邪魔しようとする。
飛段の意思とは関係なくだ。
「ペンダントを外そうとすれば、持ち主でも関係ないのか」
(まるで呪いだ)
角都は口布の下で小さく舌打ちする。
雷遁であるため、土遁では防ぎようもない。
「でもよォ、これ戦いに有利じゃねえ? だって、オレに近づいた瞬間にバチバチッ! っていくんだろ? なんか、ジャシン様に護られてるみたいで…」
その瞬間、角都は足下にある石を拾い、飛段に投げつける。
ゴッ!
「だァ!?」
眉間に直撃し、飛段はその場に尻もちをつく。
「いきなりなんだてめー!!」
「遠距離からの攻撃は護ってくれないようだな。中途半端な加護で満足しているのならずっとそのままでいろ」
角都は賞金首を拾いながらそう言ったあと、飛段に背を向け、換金所へ行こうと歩き出した。
「なにキレてんだよ、おい角都、待てコラァ!!」
飛段は怒声を上げ、勢いよく立ち上がって角都を追いかける。
飛段は常に電流を帯びている体になってしまった。
隣にいるだけでも静電気を感じるのだ。
町では危険物と化してしまうのは間違いないだろう。
山中にある宿にも泊まれない。
「風呂入りたい」
「電気風呂にする気か」
だから角都は当然の如く野宿を選んだ。
焚火を挟んで2人は丸太に座っている。
「それに腹減ったァ」
「それなら川に入ってこい」
「は?」
「すぐそこにある」
「???」
わけもわからないといった表情で、飛段はすぐ背後の茂みを過ぎたところにある、川へと向かう。
服を脱いで川へと入った瞬間、飛段は角都に言われたことの意味を理解する。
「角都角都ー!スゲースゲー! 魚いっぱい獲れたァ!!☆」
プカプカと水面に浮かぶ魚達にはしゃぐ飛段。
それを遠くで聞く、串用の枝を集めていた角都。
*****
食べ終わった飛段は腹を出したまま満足そうに眠っていた。
周りには食い散らかされた魚の骨が散らばっている。
角都は焚火用の薪を足しながらその寝顔を見つめていた。
(確かに、その術は便利なものだが…)
角都は飛段に触れようと手を伸ばす。
だが、やはり静電気に邪魔をされてしまった。
本人が起きていようが寝ていようが関係なく術が発動する。
静電気程度なら、飛段にダメージは及ばないようだ。
「……………」
角都は己の手のひらを握りしめ、ペンダントを睨みつけた。
(忌々しい…。術でないものに邪魔をされているようだ)
この状態が続くのは、角都にとって酷であった。
明日、アジトに戻ってペインに相談すると決め、飛段から離れて眠りに就いた。
2人を知る者から見れば、珍しい光景だ。
ペインがいるアジトまで最低でも5日はかかる。
それでも、角都は飛段を連れて足早に進んだ。
木々に挟まれた道を歩き続け、飛段は角都の背後で根を上げ始める。
「角都ゥ、早ェって…」
かれこれ5時間、休む間もなくぶっ続けで歩いているのだ。
「口を動かすな。足を動かせ」
脅すように言うそんな角都は、飛段の目からは急いでいるように見えた。
いや、実際、少しでも到着を早めようと急いでいるのだ。
5日も飛段の体に触れられないのは我慢ならないからだ。
ジャシンに独占されているように思うと苛立ちが募る一方である。
無論、そんなことを本人の前であっさりと口にする角都ではない。
「角都、角都って、おい…」
「「!」」
同時に角都と飛段は気配に気づいて反射的にそこから左右に飛びのいた。
2人が先程いた位置に手裏剣とクナイが突き刺さる。
「誰だァ!?」
飛段はワイヤーを使って大鎌を茂みへと飛ばす。
すると、そこから3人の忍が飛び出してきた。
全員覆面をしていて顔が目以外ほとんど隠れている。
「…追手か」
額当てを見た角都は、それが先日倒した賞金首の仲間であると理解した。
どこかで自分達を見ていたのかもしれない。
機を窺って仇討ちにかかったのだろう。
3人の忍が同じ形状の長刀を取り出し、構えた。
「来るぞ」
角都が言うと同時に、忍達は飛段を一点に集中して飛びかかる。
「飛段!」
「上等だコラァ!!」
飛段は恐れずに突進し、大鎌を振り回す。
忍達の攻撃を受けたり避けたりもしたが、忍達の方が上だった。
まず、忍の一人目がその大鎌を刀で受け止め、次に、2人目が飛段の心臓を突き刺し、最後に、3人目が飛段の左腕を切り落とした。
(今の飛段に触れて感電しないということは、あの刀、雷遁に耐えるのか)
角都は刀を見つめながらそう推測した。
「チィ!」
左手が体から離れる前に神経が切れる寸前に右手に持ち替えて勢いよく振り上げた。
心臓を突き刺した忍を下から縦に切り裂いたが、それは水となって飛び散った。
「ハァ!? 分身!?」
飛段は声を上げ、忍達はすぐに飛段から飛びのいた。
「不死とは本当だったか」
飛段の左腕を切り落とした忍が印を結ぶと、新たな分身が10人以上に増えた。
「ただの水分身ではないな」
角都は飛段の腕を拾おうとした。
忍が攻撃を仕掛ける前に飛段に縫い付けなくてはならない。
だが、
バチィ!!
「「!!」」
左腕に触れた瞬間、強力な電流が角都の手を襲った。
角都の震える手からは煙が出ている。
「体から離れていても、術は続くのか」
「その通り」
忍は嘲笑混じりに答え、言葉を続ける。
「それなら、首を切られても元には戻せない。それが殺されたリーダーの呪いだと思え」
リーダーとは賞金首のことだ。
飛段に印文字を移し、自分の仇討ちを飛段の目の前にいる忍に任せたのだろう。
飛段は怒りで震える。
額にはくっきりと青筋が浮かんでいた。
「呪いだァ? 呪いはジャシン様とオレの専売特許だ!! こんなちんけな呪いでいい気になってんじゃねーよ、無神論者共がァ!!」
「そのちんけな呪いで貴様は終わる」
刀を携えた忍達が一斉に飛段に躍りかかった。
八つ裂きどころかバラバラにする気だ。
飛段は闇雲に大鎌を振り回そうと構えたが、目の前に現れた大きな影がそれを遮り、飛段を抱きしめた。
2人の体に電流が走る。
ビシャアアアア!!
「ぐ…!!」
「か…、角都…!!」
飛段は角都を突き飛ばした。
放っておけば、角都が感電死してしまうところだったからだ。
「なんで庇った!?」
責めるように角都に問い、角都は答える。
「…バラバラにされてもその術は続く。首を飛ばされれば、確かに終わりだ…」
抱きしめる前に角都は体を硬化させていたため、忍達の刀から飛段を守ることができた。
角都自らが躍り出たのは、圧害達では間に合わなかったからだ。
「いい展開だ。まとめて始末してやろう」
忍達は再び刀を構える。
角都は立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
(…回復までもう少しかかるな。…心臓を一つくれてやるか…)
相手は角都の心臓が5つあることを知らない。
角都を殺したと思い上がった隙を狙うしかないだろう。
しかし、それを「はい、そうですか」と済ませる飛段ではない。
「……………」
飛段は己を落ち着かせようと呼吸を繰り返し、両手でペンダントをつかんだ。
同時に、電流が飛段を襲う。
「うあああああ!!」
「飛段!?」
「うううぅ!!」
電流が体中を走るなか、飛段はペンダントを強く引っ張り、
ブチィッ!
引き千切った。
ペンダントヘッドが地面に落ち、飛段は大鎌を振り下ろし、大刃の刃先でペンダントヘッドを砕く。
途端に、電流はおさまった。
「貴様…、無茶苦茶だ…!」
忍は驚愕していた。飛段は、額には汗を、口元には笑みを浮かべる。
「無茶苦茶なのは、元からだァ!」
相手が驚いている隙に、飛段は大鎌を振るった。
*****
飛段が本物を仕留めた瞬間、分身は全て水に還った。
それで忍が最初から一人だったことが判明した。
ペンダントも砕かれ、ようやく飛段の体に触れることができるので、角都は先に左腕とその他の切り傷を地怨虞で縫い始める。
「…よかったのか?」
「なにがァ?」
角都の視線は粉々になったペンダントに向けられていた。
それを目で追った飛段は「…ああ」と言って答える。
「ペンダントは…、また取り寄せる…。自分でも、やっぱちょっと背信行為的なことやっちまったかなって思ったけど…、ジャシン様は…ここにいるわけだし…」
胸に手を当てて笑みを浮かべるが、すぐにはっとした顔になる。
「ハァッ。でも毎回儀式の度にグサグサ刺してるよな、オレ…。じゃあジャシン様はオレの体のどこにィ!?」
「落ち着け」
急に焦り出した飛段の額を角都は軽く叩いた。
「傍にいるとか、上から見ているとかいう考えはないのか。信者らしく」
こういうことを己が口にすると複雑な気持ちになる。
「とにかく…、オレが言いたいのは…、その…、ペンダントは何度でも替えがきくけど、おまえ、心臓5個しかねーじゃん。それに…、オレのせいで一つでも潰されたら……」
その小さな独り言のような声は、角都の耳にしっかりと届いていた。
ちょうど縫い終わり、角都は飛段の頭に手をまわし、己の肩に押し付けた。
「か、角都!? 苦し…、なに!?」
「黙れ。お預けしていた分はきっちり返せ」
「お…、お預けって…」
飛段は抵抗するが、腕はがっちりとつかまれ、角都は飛段の衣類を器用に脱がしていく。
ふと、再度砕けたペンダントを見下ろし、口布の下で優越の笑みを浮かべる。
(今度はオレが見せつける番だ)
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