リクエスト:汝の隣人を愛せよ
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「ファイトォ!! いっぱ――――つ!!!」
飛段の料理を食べたせいか、ペインはアジトから飛び出し、爆走していた。
*****
その頃、アジトの庭で飛段は豪快に大鎌を振り回していた。
「ゲハハハァ!!」
それを遠巻きに眺めている角都とイタチとデイダラ。
「…あれはなにをしてるんだ? うん?」
デイダラが隣にいるイタチに聞くと、イタチは首を傾げながら答える。
「たぶん、草刈りじゃないのか」
長く放置されていたため、伸びに伸びた草が刈られる。
庭は広く、一日ですべて刈り終えられるかわからない。
飛段は戦闘でもしているかのような勢いだ。
「飛段、そこまでしなくていいぞ」
角都が声をかけてもおかまいなしだ。
ザク!!
その時、明らかに草でないものを刈った音が聞こえた。
「あ」
飛段の動きが止まる。
「「「あ」」」
遅れて角都達も声を漏らした。
飛段が刈ってしまったのは、様子を見に来たゼツの、ハエトリ草の部分であった。
ゼツの頭の上から先がなくなっている。
「「ヒダン―――!!!」」
黒ゼツと白ゼツが同時に激怒し、飛段を食べようと鮫のように迫る。
「わざとじゃねーよ―――!!」
飛段は全速力で逃げる。
「!! こっちくんな―――!!」
デイダラも巻き添えになる。
*****
昼食の時間になり、飛段に料理を作らせてなるものかと角都と鬼鮫がキッチンに先回りしたが、あとから追うようにすぐに飛段がキッチンに転がり込んできた。
「あ、待った待った。昼食、オレが作る!」
急いでピンクの可愛らしいエプロンを装着している。
「そんな、いいですよ」
「飛段、おまえは朝食を作っただろ」
またあんなゲテモノを作られてはかなわんと鬼鮫と同じく阻止する角都。
エプロン姿をもっと見ていたいとは思うが。
飛段は「いやぁ…」と恥ずかしそうに頭を掻きながら言葉を続ける。
「朝食作りすぎちまってさぁ。片付けちまいたいなぁって…」
開けられた冷蔵庫には、異臭を放つ鍋が入っていた。
鍋の縁に黒いものがベッタリと付着している。
それを見た角都と鬼鮫は凍りついた。
「その…、昼食はもっとガッツリしたものがいいと思いますし、私がおかずを追加しておきますよ」
鬼鮫は笑みを引きつらせながら言った。
「そう…か? 悪いな、なんか」
「飛段、出来上がるまで食堂で待っていろ」
「おう」
飛段は怪訝な顔をひとつせずに素直に食堂へと向かった。
それを見計らい、キッチンの窓から小南が顔を覗かせた。
角都は冷蔵庫から鍋を取り出し、小南に渡す。
「処理は頼んだ」
「任せて」
小南の背後には、サソリとデイダラに捕まったペインがいた。
先程、爆走のランニングから帰ってきたばかりである。
息も絶え絶えなペインの口に鍋のものを流し込んだ。
「1・2・3、ダ―――ッシュ!!!」
意思とは反して再びアジトを飛び出して爆走するペイン。
「鬼鮫ェ、手入れ手伝ってやるよォ」
「イタチィ、団子一緒に食おうぜェ」
「デイダラァ、おまえの部屋掃除してやるよォ」
「サソリィ、オレの体で実験していいぜェ」
角都はイラついていた。
せっかくの休暇の日に一緒にいるというのに、飛段がかまってこないからだ。
いつもは鬱陶しいくらいに絡んでくるというのに、「角都ゥ、なあ、角都ってばー」の言葉がないのがこんなにやきもきすることとは。
別のメンバーに絡んでばかりな飛段に、いい加減我慢がならなかった。
「オレ達はこれから任務に向かう」
それを聞いた、小南に湿布を貼ってもらっている全身筋肉痛のペインは「へ?」と首を傾げた。
「おまえ達は休暇中だろ」
「行かせろ」
角都が懐から取り出したのは、飛段が作った兵糧丸だった。
「どうぞご自由に…」
ペインは逆らえなかった。
「もう勝手にしてくれ」と顔を伏せ、湿布の冷たさを感じていた。
*****
情報通り、目撃情報があった山に標的の賞金首が現れた。
部下もつれている。
「来るぞ、飛段。気を抜くな、死ぬぞ」
「だから、それをオレに言うかよ、角都」
いつものセリフを交わした2人は同時に敵に向かっていく。
「よっしゃー!」と勢いよく走りだした飛段だが、途中で「あ!」と声を上げて立ち止まった。
つられて角都も立ち止まる。
「どうした!?」
いきなり敵の罠にかかったのかと思いきや、飛段は両腕で大きな×を作った。
「悪い。ムリ。殺戮はダメだ」
「は!?」
「痛みは共有しちゃいけねえんだった」
「おまえ…、そんなふざけたことを言っている場合…」
仲間割れを始めたと思った敵は、こんな絶好のチャンスを逃すわけがなかった。
いきなり数人で飛びかかり、手裏剣を投げつける。
咄嗟に反応した角都は飛び退いてそれを避けたが、飛段は正面から受けてしまった。
「飛段!」
死なないとわかっていても、思わず声を上げてしまう。
飛段は、攻撃されたというのに、すぐにキレはしなかった。
「ゲハハハ! それで終いかァ!? それで満足かァ!? 気が済むまで刺せよォ!!」
笑い声を上げながら敵に向かっていく。
しかし、大鎌や杭を手にとることはしない。
敵は驚きながらも手裏剣やクナイを投げつける。
ザクザク刺さっても飛段は止まらない。
「ハァ! 一方的に与えられる痛みも悪かねーな!」
敵達の背筋がゾクリと凍りついた。
手裏剣やクナイが刺さっているにも関わらず、飛段は恍惚とした表情を浮かべているからだ。
「な…、なんだよ、あいつ…」
「全然死なねーぜ」
「っていうか、喜んでねえ!?」
色々驚く敵達。
「もっと満足するまで刺してこいや―――!!v」
「ギャ―――!!」
恐怖を感じた敵達は一目散に逃げ出した。
リーダーであるはずの賞金首はもう米粒になっている。
「あ!! 逃がしてどうする!!」
捕まえなければ換金した金が手に入らない。
角都は追いかけようとしたが、敵の姿はもう彼方遠くだ。
怒った角都は飛段の襟をつかんだ。
「貴様…!」
叩こうとしたが、飛段は目を輝かせている。
「角都、苛立ってる? 気が済むまで殴っていいぜ」
「…!!」
キラキラと光る飛段の目を見て、角都は殴るのを躊躇った。
(いかん…。このままでは飛段がドMになってしまう…!)
元から手遅れだと気付いていない角都さん。
怒りを吐き出すようにため息をつき、飛段の体に刺さった手裏剣とクナイを抜いていく。
「飛段、今日のおまえはかなり変だぞ。ジャシン教は殺戮がモットーではなかったのか?」
「だってジャシン様が「汝の隣人を愛せよ」って…」
「夢でも見たんじゃないのか?」
「マジホントだって! 祈りの最中にボンッと煙みたいに現れて…」
「……いつ頃だ?」
飛段はその時のことを思い出す。
「え…と、食堂でメシ食って、イタチとちょっと話して、部屋で儀式してたら…」
それを聞いた角都はピクリと片眉を動かした。
「イタチ…」
鋭い角都はすぐに勘付いた。
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