リクエスト:要は中身
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「角都の旦那とその相方さんが入れ替わった、と?」
長方形の低い机を挟み、ヨルは隣に並んで座っている角都と飛段の突然の異変について、向かい側に座っている店の主人に話した。
ヨルの話に「うんうん」と頷きながら、中身飛段の角都の体はだるそうに胡坐をかき、中身角都の飛段の体は礼儀正しく正坐していた。
横目でそれを見たヨルは「うわぁ…」と物珍しそうに眺め、そして若干引いていた。
話を聞き終えた主人は信じられないような表情をし、2人を交互に見たが、2人の左手にはめられた指輪を見て、「ああ…」と納得の声を漏らす。
「その指輪が原因ですな…」
ヨルは「やっぱり」と内心で呟いた。
角都と飛段は指輪を自分の目先に近づける。
「やはり原因はこの指輪か…」
「ただの指輪じゃなかったんだなァ」
「なら、その指輪外せば解決じゃ…」
ヨルの提案に角都は「いや…」と首を横に振った。
「オレもそれを考えたが、見ての通り…、抜けん」
人差し指にはめられた指輪を外そうと引っ張ってみるが、指輪の位置は一ミリもズレない。
飛段も「ハァ!?」と声を上げ、中指の指輪を外そうとするが、結果は角都と同じだ。
「一度はめたら外れないようになってるのか」
まじまじと角都の人差し指の指輪を見つめながら、ヨルが言った。
「呑気に言ってんじゃねェ! どーすんだコレ! マジありえねーんだけど! このままじゃ、5回しか儀式できねーじゃん! ああっ、ジャシン様ァァァ!」
飛段は角都の胸にぶら下げられているジャシンペンダントを両手で握りしめ、祈るように掲げた。
「その顔でそのセリフと行動がマジありえねー」
角都の声で飛段口調だとヨルにとって非常に不気味なことだった。
2度とお目にかかれないだろう貴重なシーンだが、できれば見たくなかった。
それは飛段の体で喋る角都も同じだ。
「どけ」と己の体を突き飛ばし、ため息をつく。
「騒ぐな飛段。まったく…、気味の悪いものを見せてくれる…」
「おまえもな★」
ヨルは躊躇せず笑顔でツッコむ。
「この指輪、どこで手に入れた?」
尋ねる角都に主人は一度真上を見上げて考える仕草をし、「確か…」と思い出すように言う。
「引き取ったのですよ。名前も顔もうろ覚えですが、「ここで引き取っていただけると助かる」と言って、半ば押し付けられるように…」
「なんてもん引き取ってんだ、おっさん」
飛段の言葉に同意して思わず頷きそうになったヨルだが、奥にしまわれてたものを勝手に取り出して勝手に開けて勝手に自分の指にはめた張本人は飛段だということを思い出し、縦に振りかけた首の動きを止めた。
「うろ覚えじゃ手掛かりゼロか…」
天井を見上げてため息まじりに言うヨルの言葉に、飛段は「なに!?」と大きく動揺する。
「それじゃあずっとこのままかァ!?」
その様子にヨルは「慌てるな」と手で制し、机の隅に置かれた小箱に目を移し、手に取った。
「どこかに取説入ってねーかな…」
箱を開けてみるが、中は空っぽだ。
打つ手がないと落ち込んだとき、角都は「おい」と声をかけた。
「見せてみろ」
差し出された手に、ヨルは素直に小箱を角都に渡した。
渡された角都は小箱をひっくり返し、それを3人の見せるように見せつける。
「あったぞ。手掛かりが」
「!」
小箱には達筆な筆文字で“ウツリ”と記されていた。
「まさか…、この指輪の名前…、あるいは制作者の名前か?」
その名を凝視したヨルは視線を上げて角都に尋ねる。
「それはまだ、わからんが。これしか手掛かりはないだろう。なにも記されていないよりかはマシだ」
とにかく、“ウツリ”という文字だけで情報を集めるしかない。
角都がそう思ったとき、飛段が「よっしゃー!」と勢いよく立ち上がった。
「そいつからこの指輪の開け方聞きだせばいいんだな!? 任せろ!」
部屋から出ようと駆けだした飛段に、ヨルは急いで呼びとめようと試みる。
「おい待て角…! じゃなくて飛段! これから情報を集めるんだって!」
ガン!!
その時、客間の出入口である障子を開けた途端、大きな音とともに飛段が仰向けに倒れた。
「飛段!? なんだ今のスゲー音!」
ヨル達は上から飛段を覗きこんだ。
目を回し、額には大きなタンコブができている。
「…こいつ…、今の自分の身長をまったく考えてなかったな」
その出入口は、180センチ以上の人間は自分から潜らないと頭をぶつける自然な仕組みになっていた。
「指輪を外す前に、オレの体がもつかどうか…」
角都は腕を組み、憂鬱なため息を吐きだした。
.