リクエスト:頬も林檎色
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宿に帰ってきたオレは、部屋の真ん中にいるヨルとその周りに散らばっている赤を見て「うわ」と小さく声を上げて驚いた。
「…ヨル…、いくらなんでも…」
「ぅん?」
ヨルはりんご飴を口に咥えたまま飛段に振り返り、首を傾げる。
そのすぐ傍に置かれたガラスコップにはすでに10本以上の串が差されていた。
散らばっているりんご飴の数はまだ14、5本はある。
ヨルの幸せに満ちた顔と食べかけの途中で新たなりんご飴を手にしたのを見て、今日中に全部食べきるのではないかとオレは顔を青ざめた。
窓際に座っている角都は、先程本屋で買ったばかりの分厚い本を読んでいる。
「おい、目の前に金の無駄遣いしてる女がいるってのに無視かよ」
この前はヨルが調子に乗って5本買ってしまい、角都から折檻を受けていたのを見ている。
「買ったんじゃねー。くれたんだよ」
「誰が?」
「りんご飴売ってる店の若い娘が」
見た目はヨルと変わらないくらいの年代の女らしい。
りんご飴を1本買っただけで「全部持ってっちゃってください」と店中のりんご飴を渡されたとか。
「余ったんだとさ」
そんなに余るわけないだろ。
「…おまえも罪な奴だよなァ」
気に入っても、相手が鈍ければ損するだけだな。
「ん?」
首を傾げるヨルだが、オレは「いいから早く全部食え」と手を払った。
ヨルは幸せな顔でりんご飴を食べ続けた。
翌日、苦痛に歪めるとも知らずに。
もちろん、オレも角都も知るわけがなかった。
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