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オレの向かい側で、飛段が美味そうにあんみつを食べている。
その隣に座るヨルは静かに茶を啜っていた。
目を伏せ、「なんで茶屋にはりんご飴がないんだろな」と質問かどうかもわからない呟きが聞こえたが、オレは無視する。
オレにも知らないことはある。
それより、2人は周りの視線に気付いているのだろうか。
他の旅の者にかなり見られているということに。
女性客は露骨に「あの2人カッコいい」などと指をさしながら言っているのが見える。
オレは目の前の2人を見た。
オレから見れば、ただの馬鹿2人だ。
嫌気が差し、茶を啜るのもだるくなった。
綺麗ものがひとり増えただけで騒ぐ者が増えるのは実に鬱陶しい。
オレと飛段だけの時も、飛段は女性にヒソヒソと騒がれていたのだ。
ヨルはオレより耳がいいはずだ。
オレでも聞こえるヒソヒソ声が聞こえないはずはない。
「……………」
オレの視線に気付いたヨルと目が合った。
「モテモテだな」
どうやら、女性客がオレと飛段のことで騒いでいると勘違いしているらしい。
目の前の女は鏡と向き合ったことがないのか。
嫌味を言われたようで、そばにある湯呑みをぶつけたくなる。
「食った食ったァ」
あんみつに満足した飛段は間抜けな顔で余韻に浸る。
この馬鹿ヅラで女性客の熱が冷めるかと思いきや、「カワイイカワイイ」とさらに騒ぎだした。
オレの苛立ちがさらに募る。
「ほら、口の端」
「んー?」
飛段の顔を見たヨルは、おしぼりを手に、飛段の口の端についた黒蜜を拭いとった。
「キャー!!☆」
なにを思ったのか、女性客が全員立ち上がり、そのシーンを撮影し始めた。
パアン!
思わず、手にしていた湯呑を握りつぶしてしまった。
女性客にもオレにもびっくりする2人。
「か…、角都?」
なにもしてないのに、と動揺しているのが見てとれる。
「暑苦しい」
「ハァ!?」
我ながら理不尽だ。
頭が痛いうえに、目眩まで覚えた。
居心地が悪くなり、オレはさっさと店員に金を払ったあと、2人を連れて茶屋から出る。
外の方がまだ涼しい。
今夜中に町に到着する予定だったが、野宿にしたい。
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