空の巻物
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戦闘を終えたオレ達は、近くの河原にきていた。
のどかな雰囲気とは裏腹に、ヨルは、触れたらチクリと棘が刺さるのではないかというくらいピリピリとしたオーラを漂わせている。
そして時折こちらを睨みつけていた。
数十分前の戦闘で、ヨルを背後から襲おうとした敵を、オレが殺した。
大鎌でザックリと頭のてっぺんから真っ二つに。
だが、立ち位置が悪かった。
ヨルは敵の血をモロに浴びてしまい、髪、顔、体が血で汚れてしまった。
ヨルにとっては、ごはんをひっくり返されてかけられたようなもんだ。
それで今、ピリピリしてるわけ。
油断してたのは自分だとわかってるのか、あまり文句は言ってこなかった。
ただ黙ったまま、自分の着ていた暁の外套とズボンを河原で洗っていた。
外套とズボンを擦り合わせるたびに、服に染み込んだ血が川の流れとともに流れていく。
今ヨルは、死体が身に着けていた忍服を着ていた。
サイズが合っていないのか、ちょっとだぼっとしている。
オレもついでにと自分の外套を洗い始める。
角都もさっきから外套と頭巾を洗ってるし。
犯罪者3人が並んでお洗濯、なんて傍から見たら妙な光景だ。
オレは隣でまだゴシゴシと無言で洗っているヨルに声をかけた。
「せっかくたっぷり血が染み込んでんだ。喉が渇いたら吸えるだろォ?」
ピタッとヨルの手が止まった。
ヨルはこちらを軽く睨みつける。
「そんなはしたないマネができるかよ。てめーは、みそ汁がかかった服をしゃぶるのか?」
「へぇ…、一応気にするんだな」
そう思い、ヨルが女だってことを再認識する。
普段はそんなこと気にせずに、喧嘩したら言い争ったり殴り合ったりしてるから。
「オレは人間の体内に流れる血を直で吸うのが好きなんだ」
「味が違うのか?」
「まあ…、おまえらにとっては、冷めたメシと温めたメシくらいの違いだと思うけど」
食ったこともねえくせに、よくそんな表現ができるな。
「…女だからって、守ってもらわなくて結構だ。オレはあの状態でも避けられたし…」
「違ェよ。おまえのこと、女だ男だとかあんま意識したことねーし」
「じゃあなんで助けた?」
そう言われるとよくわからない。
咄嗟だったから。
オレもなんか、いい表現できねえかな。
そう考えながらふと洗濯中の角都に視線を移し、戦闘中の角都を思い出す。
「ほら、角都だってオレが不死身なのにオレのこと助けてくれるだろ? そんなカンジだ」
「縫うのが面倒なだけだ」
角都はこちらを見ずにそう言った。
けれど、ヨルは「ふーん」と言う。
どこか納得している様子だ。
「そんなカンジなのか…」
ピリピリ感が薄れたのがわかった。
オレは自分の外套を木の枝に引っかけたあと、ヨルに近づいて横からヨルの服をとった。
「お、おい…」
「いいからいいから。汚しちまったのオレだし、ついでにやってやるよ。てめーはイノシシでも狩ってきやがれ」
これ以上メシが流されていくのを見るのは嫌そうだったし。
「ほら、行けよ」
オレが促したとき、オレは外套とズボンの間に黒い布切れのようなものをつかんだ。
「?」
広げてみると、
「!!」
ヨルの下着だった。
つうか、下着なんて着けてたのか。
背後に殺意を感じ、首筋に氷のような冷たさを覚えた。
刃を突き付けられている。
「ひ―――だ―――ん―――く―――ん―――?」
「……………!!」
死なないオレでも、その時は死の恐怖を感じた。
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