罪と祝福の日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*飛段
哀れガラスの容器に入れられたオレは、オレを手に入れて喜んでいるクソヤロウ共を眺めることしかできない。
体を別のところに移動されたんじゃしょうがないだろ。
なんて日だ。
あんまりですよ、ジャシン様。
あ、ペンダント落としたんだ。
そりゃ最悪な日になるはずだ。
ハァ、とため息が出る。
せめて切り離されても角都みたいに自在に動かせればいいんだが。
それにしても懐かしい匂いだ。
鼻がツンとするくらい色んな薬品が混じり合った匂いと、血生臭い匂いと、死人の匂い。
慣れたと思ってたけど、久しぶりのその匂いに顔をしかめるしかない。
不死身になる前もこんな悪臭の部屋にいたっけ。
ジャシン様を宿すためとはいえ、最初は鼻が曲がるかと思ったもんだ。
ひとりひとり消えて、オレもそいつらみたいに消えるかと思ってたけど、ジャシン様と出会ってオレの存在を認めてくれたおかげでこうして今を楽しんで生きてるわけだ。
まあ、今は楽しめる状況じゃねえんだけどな。
だからこそ、思い出に浸っていた方が幸せってもんだ。
こんこん、とガラスが軽く叩かれる。
「お目覚めか?」
ベルを鳴らしてた奴だ。
今は白衣を着てて頭良さそうに見える。
「気分はスーパー最悪だグズヤロウ」
ベルのオッサンは笑みを崩さない。
首だけだからって余裕かましやがって。
「やはり、首を切られても平気そうだな」
「平気に見えるってんなら、新しい眼鏡に変えることを勧めるぜ。なんならてめーもこの痛み、味わってみるかァ? オレならキレーにスパッと切ってやるぜェ? ゲハハッ」
オレがバカにするように笑うとベルのオッサンは背を向けて言う。
「せっかくだが遠慮しておこう。キミのように首だけで喚くなんて芸当、できないからね」
それから肩越しにオレを見た。
冷たい目だ。
その目には見覚えがある。
同じ人間を見る目じゃねえ。
よく見れば周りの奴らもそんな目をしてやがる。好奇心に捕らわれた目と怯えた目に蔑んだ目。見てるだけで気色悪くなってくる。
連れてきたのはそっちだろうが。
動物園のトラじゃねーぞコラ。
当たらないとはわかっていてもオレはそいつらに向けて唾を吐いた。
ガラスに張り付いた唾越しに見るとそいつらが汚く見えて「似合ってるぜ」と内心で嘲笑し、口元に表す。
するとだんだん笑いが込み上げてきた。
「ゲハハハハァ! てめーら、オレをここに連れてきた時点で終わったぜ。今頃、最強のジジババコンビが向かってくる頃だァ! はいはいご愁傷様ってやつだな。よかったじゃねーか。てめーらの住み心地よさそうな根城が墓標になるなら…」
そこでオレの声は途切れた。
ベルのオッサンが容器の蓋に手を触れると容器の中が白く薄いガスで満たされる。
「黙ってろ、バケモノ」
「言ってろ」と言い返したかったが意識が朦朧としてきた。
とりあえず今は大人しく眠ってやる。
起きる時はあいつらのどっちかが起こしてくれるはずだ。
来てくれるよな。
たぶん、来てくれるはずだ。
.
哀れガラスの容器に入れられたオレは、オレを手に入れて喜んでいるクソヤロウ共を眺めることしかできない。
体を別のところに移動されたんじゃしょうがないだろ。
なんて日だ。
あんまりですよ、ジャシン様。
あ、ペンダント落としたんだ。
そりゃ最悪な日になるはずだ。
ハァ、とため息が出る。
せめて切り離されても角都みたいに自在に動かせればいいんだが。
それにしても懐かしい匂いだ。
鼻がツンとするくらい色んな薬品が混じり合った匂いと、血生臭い匂いと、死人の匂い。
慣れたと思ってたけど、久しぶりのその匂いに顔をしかめるしかない。
不死身になる前もこんな悪臭の部屋にいたっけ。
ジャシン様を宿すためとはいえ、最初は鼻が曲がるかと思ったもんだ。
ひとりひとり消えて、オレもそいつらみたいに消えるかと思ってたけど、ジャシン様と出会ってオレの存在を認めてくれたおかげでこうして今を楽しんで生きてるわけだ。
まあ、今は楽しめる状況じゃねえんだけどな。
だからこそ、思い出に浸っていた方が幸せってもんだ。
こんこん、とガラスが軽く叩かれる。
「お目覚めか?」
ベルを鳴らしてた奴だ。
今は白衣を着てて頭良さそうに見える。
「気分はスーパー最悪だグズヤロウ」
ベルのオッサンは笑みを崩さない。
首だけだからって余裕かましやがって。
「やはり、首を切られても平気そうだな」
「平気に見えるってんなら、新しい眼鏡に変えることを勧めるぜ。なんならてめーもこの痛み、味わってみるかァ? オレならキレーにスパッと切ってやるぜェ? ゲハハッ」
オレがバカにするように笑うとベルのオッサンは背を向けて言う。
「せっかくだが遠慮しておこう。キミのように首だけで喚くなんて芸当、できないからね」
それから肩越しにオレを見た。
冷たい目だ。
その目には見覚えがある。
同じ人間を見る目じゃねえ。
よく見れば周りの奴らもそんな目をしてやがる。好奇心に捕らわれた目と怯えた目に蔑んだ目。見てるだけで気色悪くなってくる。
連れてきたのはそっちだろうが。
動物園のトラじゃねーぞコラ。
当たらないとはわかっていてもオレはそいつらに向けて唾を吐いた。
ガラスに張り付いた唾越しに見るとそいつらが汚く見えて「似合ってるぜ」と内心で嘲笑し、口元に表す。
するとだんだん笑いが込み上げてきた。
「ゲハハハハァ! てめーら、オレをここに連れてきた時点で終わったぜ。今頃、最強のジジババコンビが向かってくる頃だァ! はいはいご愁傷様ってやつだな。よかったじゃねーか。てめーらの住み心地よさそうな根城が墓標になるなら…」
そこでオレの声は途切れた。
ベルのオッサンが容器の蓋に手を触れると容器の中が白く薄いガスで満たされる。
「黙ってろ、バケモノ」
「言ってろ」と言い返したかったが意識が朦朧としてきた。
とりあえず今は大人しく眠ってやる。
起きる時はあいつらのどっちかが起こしてくれるはずだ。
来てくれるよな。
たぶん、来てくれるはずだ。
.