罪と祝福の日
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*飛段
日付が変わった頃だろうか。
昨日は夜から角都のバイトに付き合わせれてしまった。
ビンゴブックに載せられている賞金首と森で遭遇したからだ。
そのわりには大した奴じゃなかったし、あっさりとジャシン様の贄になった。
角都が近場の換金所に行っている間、オレは血で描いたジャシン様のシンボルの上で仰向けになり、胸に杭を刺したまま祈祷の真っ最中だ。
なのに、近くにいるヨルは辺りをきょろきょろとしたり、立ち上がったかと思えばオレの周りをウロウロと落ち着きなく歩いている。
「おい、なんだよウゼーなァ」
「増援が来るかもしれないだろ」
あ、目を逸らした。
オレは舌を打つ。
「相手は単独で行動してたんだぜ? 増援なんか来るかっての」
「仲間がいない可能性だってゼロじゃないんだ。だからこうしてコウモリを飛ばしてる」
さっきから、ヨルの元にコウモリが来てはまた飛んでいくの繰り返しだ。
何匹操ってるのかは知らねえが、怪しい奴らがいないか捜してくれているのだろうか。
ご苦労なこった。
「なぁ、ヨル、いい加減答えろよ。なに隠して…」
そう言いかけた時だ。
ヨルが突然ビクリと震え、両手で耳を塞いでその場に膝と手をついた。
「ぐ…!」
「ヨル?」
耳が痛いのか、顔を苦痛そうに歪めている。
「ううう…!!」
「ヨル!?」
歯を食いしばっているヨルの耳から血が流れていた。
オレは上半身を起こし、杭を引き抜いて立ち上がる。
近くに敵がいるのは間違いなさそうだ。
だが、なんでヨルの方が先に気付かなかったのか。
茂みから葉と葉が擦れ合う音が聞こえた。
かと思えば、突然曲線型の刀を持った奴らが茂みから一斉に飛び出してきた。
格好から見てどこぞの里の忍ってわけでもなさそうだ。
数は10。
ナメてんのか。
足りねーよ。
オレはすぐに背中の大鎌を手に取り、向かってきた奴らを薙ぎ払った。
「なんだァてめーら、挨拶もなしにいきなり奇襲かよォ!?」
ヨルが誤魔化しに言ってた賞金首の仲間ってわけでもなさそうだ。
角都がいない間に仕掛けてきたのは偶然なのか。
まあ、どうでもいいや。
殺しまくって息のある奴だけ儀式用に使ってやる。
「ヨル!」
「クソッ、耳をやられた!」
奇襲前にヨルを苦しめていたなにかがおさまったのか、ヨルは背中から夢魔を引き抜いて構えた。
耳が聞こえてるかどうかは別として状況は理解できてるはずだ。
オレ達が肩を並ばせると、さっきの威勢はどうしたのか奇襲ヤロウ共がたじろいだ。
すると一番奥にいる奴が懐からなにか取り出した。
この中で最年長と言えるような眼鏡をかけたオッサンだ。
「ベル?」
ベルを持ったその男はそれを掲げ、リーン、と音を鳴らした。
次の瞬間、
「うわ!!」
「うぐ!!」
オレは鼓膜に痛みを覚え思わず両手で耳を押さえた。
心地のいい音色だったのに、まるで黒板を爪で引っ掻いたような嫌悪を覚える。
それどころか、全身の鳥肌が立ち、脳を揺さぶられているかのように吐き気と目眩までした。
ヨルの方がオレより酷いことになっている。
夢魔を地面に突き立てて倒れないように自身の体を支えているが、耳からは血が流れ、ガクガクと痙攣を起こしている。
「ヨル!」
耳をやられてるから聞こえないのか。
リーン、とまたあのベルが鳴らされる。
「ぐあああ!!」
そして襲いかかる頭痛と耳鳴り。今度は全身を針金で締め付けられるような痛みを感じた。
ヨルはオレより倍痛みを受けている様子だ。
なんで他の奴らが平気なのかも判明した。
耳にイアホンをつけているからだ。
てっきり無線機かと思った。
オレは頭がおかしくなりそうな痛みを引き起こしているベルを壊そうと立ち上がるが、その前に奴らに囲まれる。
「飛だ…! 逃げ…!」
ヨルは叫んだが、遅かった。
4・5人は振り回した大鎌やワイヤーで弾き返したものの、一歩遅れて襲ってきた奴らはどうしようもない。
最初に右腕に痛みが走った。
次に両脚、左腕、最後に首。
「飛段!!」
「あ?」と思った時にはオレの頭部は地面に転がった。
打ちつけた額が痛む。
いや、もっと痛がるべきところはあるが、考えてる余裕はなかった。
「手に入れたぞ!」
ベルを持ってたオッサンがオレの髪をつかんでオレの頭部を持ち上げる。
その顔は嬉々としていた。
「撤退だ!」
そいつの声で他の奴らもバラバラにしたオレの一部を持って撤退準備に入る。
「ぐあ!」
その時、その内の1人が短い悲鳴を上げた。
見ると、ヨルがそいつの右ふくらはぎに噛みついていた。
「そいつを…返せ…!!」
ギロリと睨むヨルの目は朱色に変色していた。
「放せガキィ!!」
噛みつかれた奴は左足でヨルの右肩を蹴飛ばした。
その衝撃でヨルの口からそいつのふくらはぎが離れる。
ズボンには血が滲んでいた。
「かまうな! さっさと行くぞ!」
オレの頭部を持った奴が叫び、全員が茂みへと走った。
「飛段―――!!」
遠くからヨルの声が聞こえたが、オレは布に包まれてくぐもった返事しか返せなかった。
なんて事態だ、チクショウ。
角都に殺されるだろって、オレが言うセリフじゃねえけどさァ。
.
日付が変わった頃だろうか。
昨日は夜から角都のバイトに付き合わせれてしまった。
ビンゴブックに載せられている賞金首と森で遭遇したからだ。
そのわりには大した奴じゃなかったし、あっさりとジャシン様の贄になった。
角都が近場の換金所に行っている間、オレは血で描いたジャシン様のシンボルの上で仰向けになり、胸に杭を刺したまま祈祷の真っ最中だ。
なのに、近くにいるヨルは辺りをきょろきょろとしたり、立ち上がったかと思えばオレの周りをウロウロと落ち着きなく歩いている。
「おい、なんだよウゼーなァ」
「増援が来るかもしれないだろ」
あ、目を逸らした。
オレは舌を打つ。
「相手は単独で行動してたんだぜ? 増援なんか来るかっての」
「仲間がいない可能性だってゼロじゃないんだ。だからこうしてコウモリを飛ばしてる」
さっきから、ヨルの元にコウモリが来てはまた飛んでいくの繰り返しだ。
何匹操ってるのかは知らねえが、怪しい奴らがいないか捜してくれているのだろうか。
ご苦労なこった。
「なぁ、ヨル、いい加減答えろよ。なに隠して…」
そう言いかけた時だ。
ヨルが突然ビクリと震え、両手で耳を塞いでその場に膝と手をついた。
「ぐ…!」
「ヨル?」
耳が痛いのか、顔を苦痛そうに歪めている。
「ううう…!!」
「ヨル!?」
歯を食いしばっているヨルの耳から血が流れていた。
オレは上半身を起こし、杭を引き抜いて立ち上がる。
近くに敵がいるのは間違いなさそうだ。
だが、なんでヨルの方が先に気付かなかったのか。
茂みから葉と葉が擦れ合う音が聞こえた。
かと思えば、突然曲線型の刀を持った奴らが茂みから一斉に飛び出してきた。
格好から見てどこぞの里の忍ってわけでもなさそうだ。
数は10。
ナメてんのか。
足りねーよ。
オレはすぐに背中の大鎌を手に取り、向かってきた奴らを薙ぎ払った。
「なんだァてめーら、挨拶もなしにいきなり奇襲かよォ!?」
ヨルが誤魔化しに言ってた賞金首の仲間ってわけでもなさそうだ。
角都がいない間に仕掛けてきたのは偶然なのか。
まあ、どうでもいいや。
殺しまくって息のある奴だけ儀式用に使ってやる。
「ヨル!」
「クソッ、耳をやられた!」
奇襲前にヨルを苦しめていたなにかがおさまったのか、ヨルは背中から夢魔を引き抜いて構えた。
耳が聞こえてるかどうかは別として状況は理解できてるはずだ。
オレ達が肩を並ばせると、さっきの威勢はどうしたのか奇襲ヤロウ共がたじろいだ。
すると一番奥にいる奴が懐からなにか取り出した。
この中で最年長と言えるような眼鏡をかけたオッサンだ。
「ベル?」
ベルを持ったその男はそれを掲げ、リーン、と音を鳴らした。
次の瞬間、
「うわ!!」
「うぐ!!」
オレは鼓膜に痛みを覚え思わず両手で耳を押さえた。
心地のいい音色だったのに、まるで黒板を爪で引っ掻いたような嫌悪を覚える。
それどころか、全身の鳥肌が立ち、脳を揺さぶられているかのように吐き気と目眩までした。
ヨルの方がオレより酷いことになっている。
夢魔を地面に突き立てて倒れないように自身の体を支えているが、耳からは血が流れ、ガクガクと痙攣を起こしている。
「ヨル!」
耳をやられてるから聞こえないのか。
リーン、とまたあのベルが鳴らされる。
「ぐあああ!!」
そして襲いかかる頭痛と耳鳴り。今度は全身を針金で締め付けられるような痛みを感じた。
ヨルはオレより倍痛みを受けている様子だ。
なんで他の奴らが平気なのかも判明した。
耳にイアホンをつけているからだ。
てっきり無線機かと思った。
オレは頭がおかしくなりそうな痛みを引き起こしているベルを壊そうと立ち上がるが、その前に奴らに囲まれる。
「飛だ…! 逃げ…!」
ヨルは叫んだが、遅かった。
4・5人は振り回した大鎌やワイヤーで弾き返したものの、一歩遅れて襲ってきた奴らはどうしようもない。
最初に右腕に痛みが走った。
次に両脚、左腕、最後に首。
「飛段!!」
「あ?」と思った時にはオレの頭部は地面に転がった。
打ちつけた額が痛む。
いや、もっと痛がるべきところはあるが、考えてる余裕はなかった。
「手に入れたぞ!」
ベルを持ってたオッサンがオレの髪をつかんでオレの頭部を持ち上げる。
その顔は嬉々としていた。
「撤退だ!」
そいつの声で他の奴らもバラバラにしたオレの一部を持って撤退準備に入る。
「ぐあ!」
その時、その内の1人が短い悲鳴を上げた。
見ると、ヨルがそいつの右ふくらはぎに噛みついていた。
「そいつを…返せ…!!」
ギロリと睨むヨルの目は朱色に変色していた。
「放せガキィ!!」
噛みつかれた奴は左足でヨルの右肩を蹴飛ばした。
その衝撃でヨルの口からそいつのふくらはぎが離れる。
ズボンには血が滲んでいた。
「かまうな! さっさと行くぞ!」
オレの頭部を持った奴が叫び、全員が茂みへと走った。
「飛段―――!!」
遠くからヨルの声が聞こえたが、オレは布に包まれてくぐもった返事しか返せなかった。
なんて事態だ、チクショウ。
角都に殺されるだろって、オレが言うセリフじゃねえけどさァ。
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