悪党共は盃を交わす
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1週間前、野宿をしている時に角都がその話を持ち出した。
ヨル、角都、飛段の真ん中に開いたビンゴブックを置き、その手配書に注目させた。
手配書には初老の男が載せられている。
「この男を始末する」
額を見ると、その首に800万両の賞金がかけられていることがわかった。
飛段は眠そうに欠伸をしながらその手配書を見、ヨルは手配書から角都に顔を上げて尋ねる。
「いきなり直球だな。普段はなにも言わずにさっさと目的地に向かって協力させて始末するのに」
「オレが無理強いしているような言い方だな」
「無理強いさせてんだろが」
なにを今更、とヨルがガクッと肩を落としてツッコむ。
「面倒だろうが、今回は計画的に貴様らに動いてもらう」
これも今更思うことだが、もっと頼み方というものがないのか。
ヨルと飛段はほぼ同時に思った。
けれど口にはしない。
殴られることは重々承知している。
「で、どう動けばいいんだ? つうかまず、こいつなんなんだよ?」
飛段は人差し指でトントンと手配書を軽く叩いた。
詳細も知らずに動かされるのも癪だ。
「暁と繋がりのある組を覚えているか?」
当然、ヨルは知らない。
実は飛段も知らない。
「さあ?」
角都は「やはり…」とため息をついて説明する。
「青獅子組という組だ。おまえも一度出入りしているはずだぞ、飛段。その組と敵対している組が赤虎組。そこの組長がこの男だ。ただの初老の男に見えるが、世間で禁止されているはずの薬物の売買を裏で繰り返している。もう少し賞金を伸ばしておきたかったが、青獅子組が痺れを切らした」
「つまりは掃除役か。まあ、大事な取引相手でもあるしな」
そう言ってヨルは失笑した。
「先日も青獅子組の組員の何人かが赤虎組の手によって始末された。抗争を仕掛けるにも、人手不足だ」
「で、オレ達に頼んだわけだ。こいつの賞金プラス、謝礼金も含めて」
ヨルの言葉に角都は頷く。
「だったら3人で襲撃してそいつ殺しちまおうぜ」
確かにその方が手っ取り早い。
飛段らしい荒っぽい手だが、ヨルも飛段の意見に賛成だ。
「この男、青獅子組の者達どころか、赤虎組の組員達の前にも姿を見せたことがないらしい」
「ハァ?」
「この男を通して若頭が組員達に伝えているようだ」
よくそれで組員達が赤虎組に身を置いているものだ。
「その一度も姿を見せたことがない男が赤虎組とやらのアジトにいる可能性はない、と? それでどうやって捜すつもりだ?」
「そこでおまえ達に動いてもらう」
ヨルと飛段は怪訝そうな顔を互いに合わせた。
角都が立てた作戦は、プランその1、最初にヨルが赤虎組に潜入し、内部を調べる。
屋敷の中に賞金首がいると発覚すれば襲撃をかける計画だ。
プランその2、数日なにも出てこなければ飛段を潜入させる。
赤虎組の縄張りで角都とわざと喧嘩して飛段を暁を追い出せば、赤虎組は喜んで飛段を迎えるはずだ。
そこでヨルとは他人のフリをしながらも一緒に捜査し、青獅子組にいる角都に伝える。
そこでヨルは待ったをかけた。
「あっちが飛段を迎え入れる確証がどこにある? スパイかもしれないって怪しまれないか?」
「怪しまれないよう派手に喧嘩するつもりだ。それに、あちらは飛段を欲しがっている」
「あ?」
飛段の頭に「?」が浮かぶ。
理由を聞いても「知らん」と返されて顔を逸らされた。
「あともう1つ、べつに飛段を潜入させなくてもオレひとりでもできるんじゃないのか?」
ヨルが人差し指を見せつけ、親指を自分に当てて言うと、角都は腕を組んだままヨルと目を合わせて答える。
「オレなら、得体の知れない奴をいきなり傍に置いたりしない。部下か用心棒程度だろう。だが、飛段ならそれより身近に接近できる可能性がある」
「じゃあオレがヨルの代わりを…」
「それもムリだ。おまえは頭が弱いからな」
「んだとコラァ!!」
失礼な言い方に飛段は立ち上がって怒鳴った。
ヨルは「確かに」と内心で納得しながらも「まあまあ」と飛段をなだめる。
「おまえ達2人が協力してやれ。オレは顔と経歴を知られているうえに、簡単にそっちの仲間に入れるとは思われていないからな」
確かに不向きだ。
角都はヨルと飛段を交互に見て決めてのセリフを言う。
「おまえ達にしかできない。頼りにしているぞ」
その言葉に心を打たれたのか飛段は目を輝かせ、「ハァー」と興奮するように息を吐いた。
「待ってろよ角都! オレらやるからよォ!」
「待つのは貴様だ、飛段。先にヨルが動くからな」
「勝手に決定してるし…」
それから「あれ?」と首を傾げる。
(ひょっとして丸めこまれた?)
それでも作戦決行を強いられるのは、やはりいつものことだった。
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