空の巻物
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角都に釣り上げられた飛段は、角都と向かい合わせのまま黙っていた。
角都も飛段を見つめたまま、腕を組んで黙っている。
謝る気でいた2人だったが、どちらも他人に謝ることに慣れていないのだ。
どれくらいの時間が経過したのだろうか。
先に口を開いたのは飛段である。
「……そ…、その…、あんな言い方して…、わ…、悪かった…な…」
目を逸らしたままそう言った。
「……………」
「えっと…、マジで…」
「……………」
角都もどう言っていいものかと考えた。
「もういい、気にするな」と言うべきなのか、子供を許すように頭を撫でるべきなのか、「今後は気をつけろ」と注意するべきなのか。
黙ったままの角都に飛段の表情がだんだん不安げになっていく。
ここで飛段が「返事くらいしろよ」と怒鳴ったら、さらに腹を立たせるような言葉を返してしまうかもしれない。
そしてまた振り出しだ。
それがわからないほど己を知らないわけではなかった。
「……角…」
飛段の言葉を遮るように角都は言う。
「オレも…」
飛段は口を半開きにしたまま動きを止めた。
間を置いて角都は言葉を出す。
「オレも少し…、気が短かった」
それがプライドが高い角都の精いっぱいの謝罪だ。
それが伝わった飛段はホッとした。
「角都…」
「とりあえず…、部屋の前で倒れている奴にメシを与えてやれ」
「は?」
飛段は立ち上がり、部屋の出入口である襖を開けた。
そこには、力尽きて倒れたヨルが転がっていた。
「ヨル―――!!?」
「血ぃ…」
ずっと部屋の前で待っていたのだ。
「遅ェんだよ…」
まさか、部屋でもこんなにテンポが遅いとは思わなかったのだ。
空気を読んでずっと部屋の前でイライラに耐えていたことは褒めるべきところである。
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