蜜柑も忘れずに
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
角都と飛段は焚き火を囲み、ヨルが戻ってくるのを待っていた。
飛段は空腹のあまり、その場に寝転んでゴロゴロと猫のように丸まって寝転んでいる。
飛段が眠気を覚え、角都がこめかみに青筋が立たせたとき、
「角都ー!」
ヨルが食材を両腕に抱えながら木の枝から枝へと飛び移り、集合場所に戻ってきた。
木から飛び降りたとき、目を輝かせながら真っ先に角都に言う。
「オレ、コタツほしい!!」
「却下」
ドシャッ!
角都の即答のせいで見事に着地失敗。
正面から地面に激突してしまった。
それで死んだら苦労はない。
すぐに起き上がって角都にがなりだす。
「いきなりかよ!!」
「貴様こそいきなりすぎだ。なんだ、唐突にコタツなど…」
起き上がった飛段は、ヨルのいきなりの発言にただただ驚いていた。
ヨルは食材を抱えて立ったまま、必死に身振り手振りで先程の民家のこと、そしてコタツの魅力について長々と角都と飛段に語った。
その間、角都と飛段は焚き火に枯れ枝をくべたり、ビンゴブックの確認をしながらヨルの話に耳を傾ける。
「だから、コタツ!!」
「なにが「だから」だ」
ようやく話が終わったが、鋼鉄でできている角都の意思は少しも曲がらない。
「ガキみたいなことを言うな」と簡単にあしらう。
だが、ヨルは簡単に諦める女ではない。
「だったら、この食材あげねーよ」
「ハァ!?」
食材を人質にとられ、空腹中だった飛段はキレかけた。
だが、角都にその手は通用しない。
次の瞬間、背後から角都の切り離された右手がヨルに襲いかかり、地怨虞を体に巻きつけたあとすぐ背後の木の枝に逆さに吊るした。
まるでミノムシのようだ。
いきなりのことだったので、風呂敷から食材がすべてこぼれ、飛段の頭上に落ちた。
「おろせ―――!!」
捕獲されたヨルは体を激しく揺らしながら喚いた。
「お、肉まで入ってるぜ、角都」
飛段は右手で頭のコブを擦り、左手で肉をつかんで嬉しそうな声を出した。
「野菜も摂れ」
角都は細枝でトウモロコシや半分に切られたキャベツを串刺しにし、焚き火の手前の地面にに突き刺して焼いていく。
相手にされず、ヨルはさらに喚く。
「コ―――タ―――ツ―――!!」
「うるさい」
角都は嫌がらせの如く、脱いだ外套で焚き火の煙をヨルの方へとやった。
吊るされたままのヨルは抵抗できずに噎せる。
「ゲホッ、やめ、ゲホッ、角都コラァ!! ゲホゲホッ」
他に、頭に血がのぼっている状態で飛段にクルクルとまわされたり、枝で額をつつかれるなど、いじめのようなこともされた。
*****
次の日、目覚めた飛段は声を上げて驚いた。
「アレ!? ヨルがいねえ!!」
ヨルが失踪したのだ。
2人が寝ている間にヨルは散々暴れた挙句、枝を折って逃走したと見える。
報復したかったが起きられると面倒なので、あえてなにもせずに去ったのだ。
「逃げたか」
角都は腕を組んでため息をつく。
(あれだけヒデェ仕打ちされりゃあ…)
他人事のように言うが、飛段も人のことは言えない。
「面倒臭い奴だ」
「つかさァ、ヨルが物ねだるのって、あんまねーだろ? ちょっとは甘やかしてもよかったんじゃねーの?」
ねだると言えば、人間の血か、好物のリンゴ飴くらいだ。
「なら、コタツ代は貴様がもて」
「ハァ!? って怒るほど持ってねーよ」
あまり小遣いはもらえない。
「ゼツ」
「うお!?」
角都が名を呼ぶと、ゼツは飛段の足下から、にょきっ、と現れた。
バランスを崩した飛段はその場に尻餅をつく。
「ヨルなら…」
「コノ先ノ町ニ行ッタ」
その頃、早々と小さな町に到着していたヨルは、
「コタツください」
「兄ちゃん、コタツって野菜はないねぇ」
八百屋にいた。
(ここもか…)
ヨルはがっくりと肩を落とした。
ここに来る前は、魚屋、肉屋、服屋にも訪れたが、皆同じように答えた(当たり前である)。
ここでようやくヨルは人に尋ねればいいことを思いつく。
「コタツってどこに売ってるモンなんだ?」
「そりゃ…、家具屋だろ」
八百屋の親父は当然だろと言いたそうに答えた。
ヨルはその場所を聞いたあと、礼を言って足早に向かった。
*****
小さな家具屋に入ったヨルは、薄暗く狭い店内を見回ったあと、それを発見した。
「あった! コタツ!」
民家で見た、家族用の少し広めのコタツだ。
だが、机に貼られたその値段を見て「げっ」と思わず小さく声を上げた。
1000両以上もするのだ。
小さなサイフにそんな金は入っていない。
仕方ないので、店の主人を呼び出して尋ねる。
「一番安いコタツはないのか?」
「ああ、それでしたら…」
主人は奥に案内し、800両のコタツを見せた。
800両なら、ギリで払える。
だが、そのコタツを見たヨルは「うーん」と腕を組んで唸った。
「…これじゃ、狭いな…」
ひとりで入る分には十分な広さだと言うのに、納得しなかった。
結局、ヨルは肩を落としたまま家具屋をあとにした。
とぼとぼと歩いているときだ。
ふと目の端にアレが映った気がしてはっと振り向くと、粗大ゴミの中に、毛布のない机だけのコタツが捨てられていた。
コタツは足が折れてるだけだ。
ヨルは近所の家から道具を借り、人目を気にすることなくコタツの足の修理にあたる。
慣れないことなので、何度か別の足を折ってしまったり、自分の親指を金づちで打ってしまったり。
「(;`・ω・´)」
それでもめげずに頑張る。
「(#゚Д゚)!!」
「Σ(゚ロ゚ノ)ノ」
飛段に見つかってしまった。
怒鳴り始める前に、ヨルは手を合わせてお願いする。
「(>人<;)」
「(・_・)」
キョトンした飛段だが、
「(・`ー^)b」
手伝ってくれる様子。
「「(;`・ω・´)」」
そして、見事に元の形に戻ったコタツ。
「「\(≧∇≦)/」」
.