砂城の呪われた宝石
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「ベッ、ベッ」
飛段の顔に砂が降りかかり、飛段は顔をしかめて口に入った砂を唾とともに吐き捨てる。
周りはすっかり砂にまみれていた。
飛段の体は、胸まで砂で埋まっている。なのに、飛段は落ち着いていた。
どちらにしても自分は死なないとわかっているからだ。
「ハァー。これどうすっかなァ…」
右脚は折れている。
天井の一部の下敷きになったからだ。
「オレも優しくなったもんだな」
カナデとガフを助けたのは、自分の意思なのか、それは飛段自身もわからない。
上から砂の滝がいきおいよく降ってくる。
飛段の頭はそれで完全に埋まってしまった。
(このまま、生き埋めかァ)
その時、右脚の痛みがやわらいだ。
それからすぐに、
ドン!!
辺りの砂が飛び散った。
目を見開くと、目の前には角都が立っていた。
「角都…!」
角都はその場に片膝をついて飛段の右脚の具合を確かめると、
「うお!?」
飛段を肩に担いだ。
「こんなところにいても死ねんぞ」
「べ、べつに死ぬつもりは…」
「おまえはオレが殺すことを、忘れるな」
その言葉に、飛段は茫然とし、はっとして言い返そうとした。
「だ、だから、それをオレに…」
言い終える前に角都は飛段を担いだまま、扉に向かって走り出した。
落ちてくる天井を避け、砂の滝をくぐっていく。
*****
ヨルは角都が飛段を連れて帰ってくるのを扉の前で待っていた。
もう時間もない。
だからといって、今自分が飛び込めば角都の足を引っ張ることはわかっている。
その後ろで、カナデとガフは脱出するための術式を床に描いた。
「あの2人はまだか!?」
ガフはヨルに尋ねた。
ヨルは答えずただ耳を澄ませる。
通路もそろそろ限界だ。
床と壁に次々とヒビが刻まれていく。
「出来た!」
カナデはガフとヨルに声をかけた。
「まだ2人が…」
ヨルがカナデに振り返ってそう言いかけたとき、ヨルの耳に一人分の足音が聞こえた。
「…!」
はっと扉を見たとき、角都が飛段を抱えて飛び出した。
「角都! 飛段!」
同時に、通路の全てのヒビから砂が噴き出した。
「カナデ!」
ガフが声をかけ、カナデは床の術式に手を触れる。
「逆口寄せの術!!」
5人の姿が消えると同時に、通路は崩れた。
*****
5人は石板の近くに現れ、砂上に着地した。
陽の下に脱出することができたので、緊張が解けたカナデはその場に仰向けになる。
「ギリギリすぎ…」
ガフとヨルもつられるようにその場に座り込む。
「重い」
「ゲハッ!」
角都はその場に飛段を落とした。
「てめー、落とすことねーだろ! コラ! 角都!」
「黙れ。早く腕を出せ」
ズウン…!!
「!」
砂丘を上がると、目の前の砂漠が大きく凹んでいた。
古城が完全に崩れたことが明らかになる。
「……………」
カナデはそれを静かに眺めていた。
けれど、悲しんでいるようではなく、むしろどこかホッとしているように見える。
「やっと眠れるんだな…」
静かにそう呟いた。
隣のガフはその頭を優しく撫でるだけだった。
「…終わったなァ」
角都に左腕を縫ってもらいながら、飛段はその2人の背中を見つめて呟いた。
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