砂城の呪われた宝石
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ボタボタと血を滴らせながら、飛段は壁の端を走った。
走るたびに床の砂が飛び散る。
「ん~。逃げてばかりいないで、相手してくれよ」
シャフは両腕を金属化させて飛段に襲いかかる。
飛段は大鎌を振り回し、その振り下ろされた腕を弾いた。
そのまま勢いをつけて半回転し、シャフの顔面目掛け大鎌を振るう。
ギイン!
「!」
シャフの頭部は金属化されていた。
そのまま、全体が金属化していく。
金色の鋼鉄の体に、目はルビーのような赤い宝石になっている。
これでは傷一つつけることは叶わない。
かするだけで、勝率がかなり上がるというのに。
シャフは右手を伸ばし、飛段の外套をつかみ、引き寄せた。
「ん~。やはりおまえ…」
ジロジロと飛段の体を眺め、ビリィッと音を立てて外套を引き裂いた。
飛段の左側の布が破かれ、肌と傷が露出する。
それを玉座の後ろから見ていたカナデは息を呑んだ。
貫通傷だらけだ。
角都とヨルに貫かれた傷も、まだ完全に完治していない。
この城ではよそ者は再生能力まで衰えさせてしまう。
「傷の治りが遅いな」
シャフはほくそ笑んだ。
「飛段!」
「いいから、そこでじっとしてろ!」
飛び出そうとするカナデに、飛段は目の前のシャフを睨みながら言った。
それから、右脚を大きく上げ、シャフのアゴを蹴りあげる。
ゴッ!!
ダメージは与えられないものの、シャフの手がぱっと離れ、飛段は素早く後ろに飛び退いてシャフから一度離れる。
シャフはニィと楽しげな笑みを浮かべ、飛段に突っ込んだ。
同じく、飛段も床を蹴ってシャフに突っ込む。
傷を恐れない者と死を恐れない者が激突する。
王の間には金属音が響き渡った。
飛段は大鎌を振り回しながら、シャフの顔を宙で蹴ったり、何度も大鎌を振り下ろすが、シャフが術を解かない限り傷つけることはできない。
空中戦でシャフは飛段の背後に回り込み、両手を組み、それを飛段の背中に振り下ろす。
ガン!!
「ぐあ!」
飛段は床に叩きつけられた。
床の上の砂が飛び散り、床にはヒビが刻まれる。
誰から見ても飛段の劣勢だ。
戦いを眺めることしかできないカナデはどうにかできないものかと考える。
「…! 飛段! この玉座を壊せ!」
「!」
飛段はそちらに振り向く。
「この玉座の中に、チャクラを半減させる宝玉が埋め込まれてある!」
壊せば、飛段だけでなく、角都とヨルの本来のチャクラも戻る。
「カナデェ!!」
シャフは甲高い声を上げ、カナデに切りかかった。
右肩を切られ、持っていた本の表紙も破けてしまう。
「ぐ…!!」
カナデは尻餅をつき、左手で傷口を押さえる。
「カナデ!」
大鎌を支えに立ち上がった飛段は叫んだ。
シャフはカナデの首をつかみ、持ち上げる。
「この…呪われたクソガキが~! 余計なことを…!」
「か…っ」
そのまま喉を潰されるかと思ったとき、
「!!」
シャフの体が大鎌のワイヤーに縛られた。
その拍子にシャフの手が緩み、カナデはその場に落ちる。
「その御自慢の体は、さぞかしカテェんだろーなァ!!」
ゴッ!!!
飛段は力を入れてワイヤーを大きく振り、シャフの体を玉座にぶつけた。
シャフの鋼鉄な体は玉座を砕くには充分だった。
玉座から飛び出した濃い青色の丸い宝玉は宙で音を立てて砕けた。
「カナデ…」
飛段は小声でカナデに尋ねた。
聞いたカナデは少し躊躇ったが頷く。
「やってみる」
「おまえら~!!」
立ち上がったシャフから怒りが伝わってくる。
金属化した顔が歪んでいた。
「オレを使いやがって~!!」
飛段はカナデの背中を押し、自分から離れることを促したあと、大鎌の刃先を向けた。
「かかってこいよ。ジャシン様の贄にしてやるからよォ!」
「ん~!? 誰が贄になるって~!?」
シャフは高くジャンプし、飛段に躍りかかり、飛段の体を正面から切りつけた。
その時、
「逆口寄せの術!!」
「!」
カナデの叫びとともに、床に敷かれるようにあった砂が全て消えた。
カナデは飛段に砂を消してくれるように頼まれていた。
飛段から離れたあと、自分の血で術式を包帯に描き、砂の上に置いて発動させた。
消えた砂は今頃砂上だ。
今、カナデは素顔でいた。
飛段が気味悪がらないことを知っているため、もう隠そうとはしない。
「なにを…」
シャフがうろたえた瞬間、飛段は血を滴らせたまま走り出す。
「ん~。また逃げる気か~!?」
シャフは走り出した飛段を追いかける。
飛段はふと立ち止まり、大鎌を振るった。
「だからムリだって言ってるだろ~!!」
シャフは大鎌を弾き、その腹に蹴りを入れた。
「ぐ!」
飛段は床を滑るように転がり、すぐに立ち上がってまた走り出す。
今度は玉座の近くだ。
そこでシャフと刃を交える。
飛段は自分が叩きつけられた場所をチラリと一瞥し、そこへ飛んだ。
シャフもそれを追いかける。
先に着地した飛段はその場に片膝をついた。
「ん~! 不死身男ももう限界か~!?」
シャフがそこに着地する寸前、飛段は右手を床について言う。
「逆口寄せの術」
「!?」
べコッ!!
途端に、床が大きく凹んだ。
切り取られた部分は砂と同じ場所に移動したのだ。
体が金属化しているシャフの重みに耐えきれず、薄い床は砕けた。
シャフの体が半分床に埋まる。
「な…!!」
飛段の足下には、術式の描かれたカナデの包帯があった。
飛段とシャフが玉座で戦っている隙にカナデが素早く置いたものだ。
飛段が逆口寄せの術を使えたのは、カナデに自分から離れるよう背中を押して促したとき、同時に血に触れたからだ。
その血を使って術を発動させた。
シャフの体がどんどん重みで沈んでいく。
「く…!」
飛段はニヤリと笑い、わざとらしくカナデに尋ねる。
「カナデー、この下ってどうなってんだっけー?」
「螺旋階段のちょうど中央。落ちたら金属だろうがバラバラになる。惨すぎ」
それを聞いたシャフは焦った。
(まずい。ここで金属化を解いてしまえば、不死身男に傷をつけられる…! いや、でもお頭の話じゃ、こいつの能力は、相手の血を摂取し、血で描かれた円陣の上に立たなければ発動しない…)
思わず不敵な笑みが浮かび、シャフは金属化を解いた。
すかさず飛段が大鎌を振るう。
抜け出たシャフは後ろに飛んだが、右腕を傷つけられてしまった。
飛段はそれを摂取し、体を白黒に変色させる。
それでもシャフには余裕があった。
すぐに全身を金属化させて飛段に襲いかかる。
「円陣が描かれる前に、バラバラにしてやる~!!」
ズバン!!
飛段の左二の腕から下が跳ぶ。
「痛っ!!」
「次に首だァ!!」
その瞬間、シャフは左腕に痛みを感じた。
見ると、自分の左腕も切断されているからだ。
「なあああ!!?」
「ゲハハハハ!!」
痛みに顔をしかめていた飛段はしてやったというように笑いだした。
「なぜだ!? おまえは円陣を描かなきゃ…」
「描いたぜ。でっけーのをなァ」
「!!」
シャフは今までの飛段の行動を振り返り、はっとした。
そう、真上から王の間を見ると、見事なジャシンマークが描かれてある。
「このオレが、ただ闇雲に逃げてたと思うかァ?」
すべてはシャフによって体を貫かれた時から始まっていた。
走り回り、流れる血で陣を描いていた。
砂上では陣が描けないため、カナデに消してもらった。
すべての行動の意味が明らかになる。
飛段は懐から伸縮式の杭を取り出して伸ばし、胸の中央に当てた。
「た…、助け…」
「てめーの神に祈りなァ!!」
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