砂城の呪われた宝石
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目の前に迫る天使ノ劫火に、ヨルは右へ飛んで右手を床について受け身をとり、体勢を立て直す。
「きゃはは! どうしたの? 夢を見せてくれるんでしょ? そんなんじゃ話にもなんないわよ!」
床に刻印が刻まれ、地雷のように次々と爆発していく。
「うわ!」
床が崩れ、ヨルは崩れなかった床の端につかまり、落下を免れた。
下を見ると、こちらに来る時にのぼった螺旋階段が見える。
このまま真ん中の漆黒の空洞に落ちてしまえばひとたまりもない。
ヨルは両脚を勢いよく揺らして腕に力を入れ、宙返りで床に着地する。
「あっぶねー!」
視界の悪い爆煙のなかで、ヨルはソフラの姿を捜す。
「よそ見禁物」
「!」
すぐ横の壁には悪魔ノ刻印が刻まれていた。
ドン!!
「っ!!」
ヨルはその場に倒れ、左手で左横腹を押さえた。
壁の爆破で左横腹にケガを負ったからだ。
「く…っ、うぅ…っ」
(ヤバいな…。このままじゃ、あの女に近づくことさえできない…)
不利な状況をどう打破するかを考えるが、ソフラはそんなヒマは与えない。
「すごいわ。ここだと、宝石の能力が増幅されるようね。爆破の速度も威力も今まで以上。ちょっと扱い慣れてないのが欠点だけど」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ヨルを見下ろした。
ヨルは黙って睨みつける。
その目が気に入らなかったのか、ソフラは舌打ちをし、ヨルの左横腹を踏みつける。
「うあ! あああ!」
「ホンット、可愛げないわよねェ。「許してください」だの、「殺さないで」だの、「きゃああ」だの言いなさいよ」
何度も踏みつけ、足を引っこめたとき、ヨルはさっと背を向けた。
ザン!!
「きゃあああ!!」
ヨルの背に生えた夢魔が、ソフラの左脚と右横腹を傷つけた。
深手ではないのに、ソフラは大袈裟に痛がる。
「ザマァ…」
肩越しにヨルは額に汗を浮かべながらも、口元に笑みを浮かべた。
「…っ!! 天使ノ劫火!」
右手の人差し指を向けられ、ヨルは夢魔を引き抜き、防御の構えをしたが、
「なーんてね」
冷静さを失ったと思っていたソフラは冷笑を浮かべた。
ヨルははっとするが、もう遅い。
右手の甲に悪魔ノ宣告が刻まれた。
ソフラはいつの間にか、右手と左手の指輪を交換していた。
「きゃはは! あと数秒で爆発よ。切り落とす? それとも、そのまま吹っ飛んじゃう? きゃははははは!!」
「チッ!」
右手の甲の刻印を見たヨルは舌を打った。
いつ爆破するかは、あと数秒かもしれないし、今かもしれない。
「まあ、今まで殺してきた奴よりは頑張った方じゃないの?」
「あぁ?」
見下すような言い方をするソフラにヨルは唸るように返す。
「あとで仲間も爆破してそっちに送ってあげる。きゃはは!」
「…何様だ、てめーは」
その朱色の瞳にソフラはゾクリと寒気を覚えるが、どうせすぐに爆死するのだからと余裕の笑みを見せる。
「バイバイ」
刻印が妖しい光を放った。
ドン!!
爆煙がその場を包む。
ソフラは爆風でなびいた髪を撫でつけ、振り返った。
「さて、そろそろアルト達も終わった頃かしら」
その時、背後の爆煙に人影が映った。
「!?」
はっと振り返ったとき、頬を切りつけられた。
「な…!?」
そこに立っていたのは、夢魔を手にしたヨルの姿だった。
右手は失われずに夢魔を手にしている。
「ど…、どうして…!?」
ヨルの右手を見たソフラははっとする。
ヨルの右手は血で真っ赤に染まっていたのだ。
それを見て理解したソフラは鳥肌を思わず立たせる。
「手の皮を…!!」
爆破する寸前、ヨルは夢魔で素早く手の皮だけを削ぎ落とした。
爆破したのは、それだった。
少し食らってしまったのか、ヨルのこめかみからは血が流れていた。
「手、そのものを失うわけにはいかねーからな。…あいつらの足手まといになるのは死んでも御免だ。生きてるうちは尚更な」
「く…!!」
冷静を失いかけ、ソフラは天使ノ劫火を発動させる。
ヨルは印を結び、発動させた。
「火遁・鬼炎!!」
青白い炎と真っ赤な炎は激突し、相殺される。
「…っ! このおおおおお!!」
悪魔ノ宣告を連射し、壁や床に刻む。
ドドン!!
それから数秒後、次々と爆発していった。
「きゃはは! どう!? あんたみたいな…」
言いかけたとき、煙の向こうからレンガが投げられた。
それに刻まれた刻印を見て、ソフラは目を見開く。
(あたしの刻印!!)
ヨルは夢魔で、刻印が刻まれたレンガをくり抜き、ソフラに投げつけた。
ドン!!
気付いた瞬間、レンガはソフラの顔のそばで爆発した。
「きゃああ!!」
ソフラは顔中傷だらけになる。
顔に触れたソフラは怒りに顔を歪ませた。
「ざけやがって!! 出てきやがれ貧乳!! 今度こそ木端微塵にぶっ飛ばしてやる!! まあ、耳も目も使いものにならなきゃ意味ないよなあ!! きゃはははは!!」
ズバッ!!
瞬間、突然背後から現れたヨルに背中を切られた。
「は…」と笑みを止めたソフラは肩越しにヨルを見る。
「な…んで…?」
「闇染で自分を消して、おまえに近づいた」
「そうじゃない…! なんで…、あたしの位置が…」
「…耳も目も使いものにならなくなったら…、鼻がある。新鮮な血の匂いが、てめーの居場所を教えてくれた」
ヨルはソフラの髪をつかみ、
「闇で醒めろ」
ブツリ…ッ!
背後からその首筋に牙を立てた。
「いやああああああ!!」
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