砂城の呪われた宝石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飛段はカナデを抱えたまま通路を駆けていく。
「あのオッサンと兄ちゃん、あの3人に勝てるのか!?」
「少なくとも、どっちもオレより強い! それから、訂正するけど、あいつらはジイさんとバアさんだからな」
「はあ? 意味わからなすぎ」
しかし、年齢的に飛段の言っていることは事実である。
「…! そこを曲がって!」
T字に分かれた道が見え、カナデは突然指示を出した。
「?」
飛段はわけがわからないまま、指示された右の角を曲がった。
それからはずっと一本道だった。
真っ直ぐ進んでいくと、大きな扉が見えてきた。
「止まって!」
カナデの指示に飛段は素直に従った。
ゆっくり減速して立ち止まり、カナデをおろす。
カナデはゆっくりと扉に近づき、扉の傍に落ちてあるものを拾った。
それは、一冊の分厚い本だった。
砂やホコリで汚れた赤い表紙で、ページはところどころ破れている。
「……………」
本を抱いたまま、少し開けられた扉の向こうを窺う。
そこには、呪術の儀を行っている王の姿が見えた。
呪術は暴走し、王とその家来達は呪いで蝕まれていく。
砂に飲まれる王と家来達。
砂とともに扉から出てきたのは、宝石と化した王の姿だった。
「お…父様…」
それから駆けつけてきた城の者に抱え上げられ、呪われた城の者達とともに城をあとにした。
「カナデ…、カナデ!!」
飛段の声にはっとし、カナデは飛段の脚にしがみつきながら涙を流した。
「オレのせいなんだ…。オレの…せいで……」
「オレのせいって?」
カナデは片手に抱えた本をぎゅっと握りしめ、飛段から離れ、扉を開けた。
王の間の床はほとんど砂で覆われている。
王の間の奥には、かつての王の玉座があった。
「……この本は、王に反対する側近が持っていたものだ。王に逆らい、阻止に失敗して宝石に変えられてしまったけど…」
「なんでそれをおまえが?」
「盗んだんだよ。…オレも、お父様のすることには内心で反対していたから」
「お父様って…。ちょ、ちょっと待て。じゃあ、おまえって…」
飛段に指をさされ、カナデは苦笑した。
「この本の通りに、オレは呪いを解こうとした。……けど、大失敗が起こったんだ」
カナデは部屋の4隅を順番に指していく。
「あの4隅の柱の上にある宝玉、見える? 術が行われる前にあれを逆さにし、その状態の宝玉のてっぺんに決められた文字を書く。あと、汚れなき血を円陣の真ん中に垂らした。これはオレの血を使用した」
「……それで終わりか?」
「本にそう書かれていた。オレも本当にそれだけかと思ってたさ! けど、失敗しても何事もなく済む気がしてたんだ! なのに!!」
カナデは自責の念のあまり、頭を抱えた。
ガフに出会うまで、ずっとその思いに苦しんできたのだ。
自分だけ呪いが軽く済んだのは、その術に自分の血を使用したからだと考えている。
あるいは、神というものが与えた罰なのか。
「呪術にはリスクが付き物だ。触れただけでも、それは自分の身にふりかかるもんだ」
「……オレの呪いは、解くべきじゃないんだ…」
カナデの手から本が滑り落ちそうになったとき、
「ぜんぶぜ~んぶおまえのせい。哀れなカナデ」
「「!!」」
はっと振り返ると、そこにはシャフの姿があった。
シャフはカナデに向かって金属化した右腕を突きだした。
ドス!!
「飛段!?」
間に割り込んだ飛段が腹を貫かれた。
カナデの顔に飛段の血が数滴付着する。
「カナデ、てめーの痛みも相当だな。傷としてほしいくれーだ。…けどよ、相棒との約束だけは守りやがれ。今じゃなくていいからよォ」
『おまえはいつか必ずオレが殺してやる』
カナデに言ったとき、飛段の脳裏をよぎったのは角都のその言葉だった。
いつの間にか、カナデと自分を重ねていたようだ。
自覚した飛段から苦笑が漏れる。
シャフは飛段から手を引っこ抜いた。
金色の腕に赤い血がべったりと付着している。
「呪われたガキを助けてどうする?」
「呪われたガキか…。オレと似たようなもんだな」
不敵な笑みを浮かべた飛段は大鎌を手に取り、刃先を向けた。
.