砂城の呪われた宝石
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「いい加減にしねえとキレるぞコラァ!!」
飛段は大鎌を振り回し、砂人形達を次々と切り捨てていった。
再生する前に、刃先や足で石を砕いていく。
砂上と違って数人だったため、いったん休息に入る。
飛段は前屈みになり、息を弾ませた。
「クソ…、おかしいぜ。もう疲れてきやがった…」
「この城は、外部の者のチャクラを強制的に半減させる。力を温存しながら戦わないと…」
「…なんでおまえがそんなこと知ってんだ?」
先に進もうとしたカナデは立ち止まった。
飛段はその小さな背中にさらに質問をぶつける。
「ここの移動手段だってそうだ…。あれ、口寄せの術の術式だよな? なんでおまえの血で…」
「……ここの人間だったからだ」
「…なに?」
ここに来た時に流した涙は、懐かしさの涙だった。
「昔、ここに住んでたんだよ。呪いを受けて、ここから出なきゃならなかったから、一族の者達と出たんだ」
カナデは前を見ながら言い、顔の包帯に触れた。
呪いを受けた時のことを思い出したのか、その小さな体は震えている。
「あの逆口寄せの術は、オレ達一族の血でしか発動しない。オレはその血をガフに与えた。そしてガフは出て行ってしまった。相棒なのに…!」
飛段は思った。
自分も角都に勝手に置いていかれてしまったら、カナデのように怒るのではないかと。
心細くなるのではないかと。
「ガフは言ってくれた。「おまえの呪いは必ずオレが解いてやる」って。そう言ってくれたガフまで失ったら…」
カナデはせり上がってきた不安に耐えきれず、走り出した。
「カナデ!」
その時、カナデの足下が崩れてしまった。
「!」
飛段はすぐに手を伸ばし、カナデの右腕をつかんだ。
カナデの足下は大広間となっていて、落ちたらひとたまりもないだろう。
「先走るな! バカガキが! てめーが死んでも意味ねえってこと忘れんな!!」
「飛段…」
カナデは引っ張り上げられ、飛段とともに床に仰向けに転がった。
「ったく、どんだけ古ィ城なんだよ。足下にまで気ィ使わなきゃいけねーのか」
「わ…、悪い…」
カナデは疲れ切った飛段の横顔を見つめ、落ち着いたのか、ふっと笑みを浮かべた。
「よし、また砂のヤロウ達が来ねーうちに、てめーの相棒探そうぜ。オレの連れ2人もな」
「ああ」
飛段が立ち上がり、カナデも遅れて立ち上がって飛段と肩を並べて先を進む。
「つうかそれ、呪いだったのか。まあ、ジャシン様の呪いの方がスゲーけど」
「ジャシン様?」
「お、興味あるか?」
「全然」
「ならジャシン教に入信してみるか?」
「人の話聞いてる?」
「ジャシン教っていうのはな…」
*****
ガフとヨルは螺旋階段をのぼりきり、通路を進み、王室を目指していた。
「カナデはなぜ今まで生きてた?」
ヨルは話題をカナデの話に戻す。
古城で起こったことが大昔というなら、カナデの姿が子供のままというのもおかしな話だ。
「カナデは、王の首飾りをしていた」
「…呪いの宝石か?」
「ああ。不死の首飾りだ。身につければ、バラバラにされようが、燃やされようが、潰されようが死ぬことはない。…そんな凄い首飾りの正体が王様ってのも、皮肉な話だな」
ヨルはカナデに会った時のことを思い出す。
その時は、首飾りをしていなかった。
「今もつけてるのか? その首飾り」
「奪われた」
「……………」
そう話していると、いつの間にか大きな扉の前に着いた。
ガフとヨルは顔を見合わせ、ガフは一歩前に出て扉を開ける。
永年開けられなかった扉なのか、扉の上からホコリが落ちてきた。
床もホコリが積もっている。
「ここが王室か?」
「わからないが、捜すしかない」
「なら、オレはそれらしい他の部屋を捜してみる」
ヨルはそう言って、別の部屋を捜すためにその部屋を出て行った。
ガフは構わず、クローゼットやベッドの下などを物色する。
広い部屋なので、時間がかかりそうだ。
(待ってろよ、カナデ。絶対、見つけてやるから…)
壁の全身鏡に近づいたとき、
「!」
背後に大きな影が迫ってきたのが見えた。
ガシャァン!!
「が…」
避ける前に首をつかまれ、背中が全身鏡に激突した。
片手でつかむ大きな手を、両手で外そうとするが力が入らない。
「見つけたぞ」
ガフはその低い声と赤と緑の目に息を呑んだ。
「お…まえは…」
喉からはかすれた声しかでない。
「お頭、久しぶりだな。今は、ボクがお頭をやらせてもらってる」
「…おまえ…ら…!!」
大柄の男越しには、かつての仲間がいた。
「角都、さっさと始末しろ。おまえが望んだのは、その男の首だろ?」
ガフは、戦慄の元・リーダーだった。
角都に押さえつけられた拍子に、ガフの腕の布がとれ、“戦慄”の刺青が露わになる。
「ん~。宝を独り占めしようなんて考えが甘い。甘すぎ~」
シャフはケラケラと笑った。
「あのガキを連れてこないなんて…、城の案内をさせるために相棒にしたんじゃないの?」
「…最初は…、そのつもりだった…。けど…、情が移っちまってな!」
ガフはポケットから小さな巻物を取り出して口寄せの術を発動させようとした。
だが、
「!!」
アルトの剣で切り裂かれてしまった。
「…ガキの世話ばかりしてるから、鈍ったか?」
アルトは笑みを向け、剣を腰の鞘におさめた。
「ぐ…」
「宝はどこにある?」
「知らん…。オレはただ…、カナデの呪いを解いてやりたいだけだ…!」
ガフのその言葉を、アルトは鼻で笑った。
「フン。すっかり親の顔だな。あんたを裏切って正解だったよ」
「もういいか?」
角都はコブシを左手を硬化させ、トドメを刺そうと構えた。
コブシがガフの顔面に直撃する寸前、
「!」
ギイン!
横から振り下ろされた剣から、角都は瞬時に身を守った。
剣を振り下ろした者は角都の右手が緩んだのを見計らい、ガフに飛びついて角都の手から離す。
「ゲホッ、ゴホッ」
首を圧迫されていたため、解放されたガフはその場で噎せた。
「なにしてんだよ…、なあ!? 角都!!」
ガフを助けたのは、ヨルだった。
「ヨル…」
角都はヨルに振り向き、呟いた。
「あら、あの貧乳じゃない」
「角都の仲間か」
「なになに? 仲間割れ~?」
戦慄の3人はその様子を観戦する。
「どけ。そいつは1500万両の賞金首で、オレの獲物だ」
「一応、こいつに助けてもらった身だ。借りた恩は返せ。貸し借り嫌いなのはてめーも同じだろ?」
ヨルは角都を睨み、右手の夢魔の刃先を向けた。
その瞳は真剣だ。
「自分のしていることがわかっているのか?」
角都の声がいっそう低くなった。
殺意がヨルの体に伝わってくる。
「引け、角都。あんたとは殺し合いたくない」
望まない戦いだ。
勝ち負け関係なく、あとのことが考えられない。
それでも角都の瞳には戦意が宿っている。
「オレの邪魔をするなら、殺す」
角都の両手が硬化した。
ヨルは両手の夢魔を構える。
「…ああ、そうかよ」
小さく言うと同時に、2人は同時に床を蹴った。
部屋の中はたちまち戦場となった。
ヨルが空中で両手の夢魔を振り下ろすと、角都はそれを両手で左右にのけるように弾き、一回転し、
ゴッ!!
ガラ空きとなったその腹に蹴りを食らわせた。
ヨルは吹っ飛び、天井に激突する。
「がはっ」
しかし、体勢を崩してなるものかとうまく着地した。
「上等だよ、角都!」
血を吐き捨て、角都に突っ込む。
その動きは先程より俊敏だ。
ヨルが右の夢魔を角都の顔面目掛けて横に振るい、角都はそれを屈んで避け、次にヨルは左手の夢魔を角都の足目掛けて横に振るい、角都はそれをジャンプして避けた。
続いてヨルは左手の夢魔を半回転で振るい、角都が上半身を反らして避けたと同時に右手の剣を口に咥えて一気に右に一回転した。
「!」
角都の右頬に一線の赤い傷ができる。
「面白い」
角都は親指で頬の血を拭い、硬化した右手をヨルの腹目掛けて突き出す。
ヨルはジャンプして避けたが、
「!!」
ガン!!
「ぐう!!」
地怨虞で伸ばされた左手で足首をつかまれ、床に叩きつけられた。
そのまま壁に叩きつけられようとしたとき、
「!」
ヨルは壁を蹴って角都に飛びかかり、左手の夢魔を振り下ろした。
バキン!!
角都のコブシと衝突し、左手の夢魔の刃は粉々に砕けた。
それでもヨルは攻撃をやめず、角都にしがみつき、その首に牙を立てようとする。
「!」
しかし、ヨルは一瞬躊躇ってしまった。
角都も硬化したコブシをヨルの頭に振りおろそうとしたが、動きを止めている。
「なにをしている!! 殺せ!! 殺し合え!!」
アルトが声を上げ、はっと我に返った2人は距離を置き、同時に突っ込む。
「角都!!」
ヨルは夢魔を構え、角都は右手を構えた。
ドス!!
ボタボタと床に落ちたのは、角都の血でもヨルの血でもなかった。
「!?」
「飛段…!?」
飛段は2人の真ん中に割り込み、夢魔と硬化した右手に胸を貫かれていた。
口から血を吐きだし、目の前の角都を睨みつける。
「頭冷やせや年寄り共…! 敵味方の区別つけられねえほど、ボケたかァ? つうか、思いっきり急所ズレてるぞ、どっちも」
「「!」」
角都とヨルは無意識に急所をずらしていたことに驚いた。
「あーあ、しらけちゃった。あんた、邪魔なのよ」
明らかに不機嫌な顔になったソフラは飛段に向けて左手の人差し指をさした。
悪魔ノ宣告を刻む気だ。
ヨルと角都はすぐに夢魔と右手を引っこ抜き、飛段を取り押さえた。
悪魔ノ宣告は飛段の頭上を過ぎ、壁に刻まれる。
その場にいるものはすぐに部屋を脱出した。
ドオン!!
爆音とともに部屋は吹き飛び、扉が壁に激突した。
「ガフ!」
部屋の外に待機していたカナデがガフに駆け寄った。
「カナデ!? なんでここに…」
「あんたを追いかけてきたんだと」
飛段はからかうような笑みを浮かべながらガフに教えた。
カナデは顔を真っ赤にし、「追いかけてきたわけじゃない!」と本人の前で否定する。
「角都、なぜ仲間を庇う? おまえはボク達の仲間だろう?」
「手を組んだだけだ。勘違いするな」
そんな角都の態度に、アルトは「ああそう」と冷たく言い、
「まあこちらも、ガフを殺したら、すぐにおまえにも消えてもらうつもりだったけどな。宝の山分けは3人で充分だ」
剣を抜いた。
剣の柄には、宝石が埋め込まれある。
「!! 逃げろ!!」
その宝石の能力を知っているガフは角都達に叫んだ。
「遅い」
瞬間、アルトの姿が消えた。
はっとした角都は両腕を硬化させ、ヨルと飛段の前に出る。
ババババババ!!
「!!?」
角都の外套が刻まれ、肌の部分には無数の切り傷ができた。
「「角都!!」」
ヨルと飛段は同時に声を上げる。
「く…」
アルトは元の位置に瞬時に戻り、笑みを浮かべた。
「ボクの剣は、音速だ。つかまえられるか?」
再びアルトの姿が消える。
「ヨル! おまえ、あいつの音聞き分けられねえのか!?」
「ダメだ、向こうが速すぎる! 飛段! 後ろに!」
飛段の背後に現れた瞬間、
ギイン!
「!」
ガフの鎖百足が飛段の背中を守った。
鎖百足はアルトの体を締め付け、鋭い刃でバラバラにする。
「奥へ逃げろ! こいつはまた復活するぞ!!」
「その通り」
転がった首が笑みを浮かべて喋った。
首輪が光り、体が再生していく。
「早く!!」
ガフが促し、ヨルはカナデを抱えて走り出す。
「ガフ!!」
「こんな通路じゃ逆に邪魔になっちまう!」
あとから飛段も追いかけ、角都に振り返る。
「角都!! おまえも早く来い!!」
「先に行け、馬鹿が」
角都はその場に残ることとなった。
「ソフラ、シャフ」
「「は~い」」
2人はガフと角都を通過し、3人を追いかける。
「あんた…」
ガフは隣の角都を見る。
角都は両手を硬化させた。
「貴様に逃げられるのも、あいつに追われるのも面倒だ。全部ここで片をつける」
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