砂城の呪われた宝石
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廃村のとある民家の奥で、薄暗い部屋の中、少年は膝を抱えたままそこにいた。
民家に入ってきたガフを死んだような目で見上げる。
『おい、おまえだけか?』
『みんな…、石になった』
ボソボソと呟くように少年は答えた。
言葉にさえ生気を感じない。
少年の首には金の首輪が光っていた。
『……………』
ガフは黙ったまま、少年の顔の文字を見つめた。
それから片膝をついて少年と目線を合わせる。
『それが呪いか…。ガキ、名前は?』
『…名前? ……覚えてない』
名前を呼ばれないで随分経つ。
少年が自分の名前を忘れるほどに。
ガフは笑みを浮かべ、少年を指さす。
『なら、カナデだ。いい名前だろう?』
その名は、ガフの死んだ息子の名前だった。
少年―――カナデは目先の人差し指を見つめ、首を傾げる。
『カナデ?』
『オレの相棒になれ、カナデ』
『相棒?』
『そうだ。オレの相棒になってくれれば、その代価に、オレは必ずおまえの呪いを解いてやる』
「なあ」
「!」
追憶に浸っていたガフを呼び戻したのは、ヨルの声だった。
「オレ、思いついたんだけどさ…」
ガフから呪いの話を聞いたあと、ヨルはひとつ閃くことがあった。
「王の部屋は?」
「王の?」
「呪術にはリスクがある。もしかしたら、それを解く本も持ってるかもしれない」
「……………」
ガフは考える仕草をしたあと、本を閉じて古びた椅子から立ち上がった。
「…危険だし、場所は不明だが、当たってみるか」
ヨルはとりあえずこの部屋から出られる解放感に内心で浸っていた。
図書館を出た2人は通路を進んでいく。
「…相棒はどこにいる?」
「危険だから町に置いてきた。…子供だしな」
最後の言葉を口にするとき、一瞬、躊躇ったように見えた。
「子供の相棒か…」
反芻して、ヨルは小さく笑った。
「おかしいか?」
「いや、オレが組んでる奴らも、年齢もなにもかもがデコボコなコンビでな」
思い出すと、早く会いたいという思いがよりいっそう強くなる。
「そうか…。オレとカナデも、年齢も性格もデコボコでな…」
「カナデ」と聞いたヨルは立ち止まり、ガフの顔を凝視した。
「…カナデ?」
『ガフはどこだよ!?』
そこで、カナデがガフの名前を口にしたことを思い出した。
「そうか…。あいつが言ってたのは、あんたのことだったのか」
「? カナデを知ってるのか?」
「スリされてとっつかまえたとき、戦慄っていう盗賊団のひとりに襲われた」
「…!」
明らかにガフの顔色が変わった。
「そのあと戦闘になって、たぶん、カナデはちゃんと逃げたと思う」
はっきりとは言い難い。
それでも、ガフはそれを聞いてホッと胸をなで下ろした。
「そうか…」
「奴らはなんでカナデとあんたを狙ってるんだ?」
「……それは…」
ガフは観念したかのように、歩を進めながら正直に話し始めた。
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