砂城の呪われた宝石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
助けられたヨルは、男が案内するままにその大きな背中についていく。
角都よりガタイがいいほうではないが、頼もしい背中だ。
通路に2人分の足音が響き渡る。
「驚いたな。どうやってここに入ってきた?」
先を進みながら、男は肩越しのヨルに尋ねた。
「…いきなり、さっきの奴らの仲間に砂の中に引き摺り込まれた」
それを聞いた男は一度立ち止まり、「ウソだろ?」と言いながら驚いた顔で振り返った。
ヨルは「ウソなもんか」と睨みつける。
「奴らに引き摺りこまれたら一巻の終わりだ。海の底に引き摺り込まれるのと変わらないからな。どんだけ大した肺活量なんだよ。それに、あそこから抜けだしたってのもスゲー話だ」
「オレは普通の人間より死ににくいんだよ。それに、諦めも人一倍に悪い」
「…そうか」
男は意味ありげな笑みを浮かべて再び歩き出した。
今度はヨルが質問する。
「あんたはどうやってここに来たんだ?」
男は前を見ながら答える。
「オレは安全な別ルートから来た。ここに来て、もう5日経つ」
「5日!?」
先程の砂人形達もいるというのに。
「ちょっと探し物があってな。けど、これがなかなか見つからない。ちょうど人手が欲しかったところだ」
「…人手?」
ヨルは自分自身を指さし、首を傾げた。
男は肩越しに言う。
「さっき助けてやった代価だ。オレの手伝いをしてもらおうか。そしたら、オレが来た安全ルートでここから出してやる」
「……………」
確かに助けてもらったのは事実だ。
ヨルは眉を寄せて面倒臭そうな顔をしたが、「嫌だ」とは言わなかった。
借りたカリを返さないほど薄情ではない。
「わかった」
「そうこなきゃな。で、おまえ、名前は?」
「……ヨル」
「オレはガフだ。よろしくな」
(…ガフ?)
ヨルはその名に聞き覚えがある気がしたが、すぐに思い出すことができなかった。
それよりも気になっていることを尋ねる。
「ガフ、ここはどこだ? さっきの奴らは、あれはなんなんだ?」
「ここは砂の中の古城だ。さっきの奴らは、この城を守る兵隊と言ったところか」
「砂の中の城だと…? ていうか、兵隊って…」
「……かわいそうな兵隊だ。壊してやるのが救いってもんだ」
聞けば聞くほど質問が増えていく気がした。
ヨルは喉が渇く前に、懐から水筒を取り出し、中身の血を一口飲んだ。
*****
砂上は真夜中となった。
角都は戦慄の3人と焚き火を囲いながら話し合っていた。
「貴様らの目的は、地図の記された場所ではなく、その古城なのか」
角都の問いにアルトは答える。
「そうだ。地図に記されているのは、その古城へ行くルートだ。本来は全部で3か所あるが、残り1か所のルートが記された地図の半分は持っていかれてしまった。ボクが砂人形に引き摺り込まれ、古城に行く手も考えたが、本当に古城に連れて行ってくれるかはわからない。土遁の心得もないから砂の中の移動もできないからな」
「古城にはなにがある?」
角都の質問に、アルトは不気味な笑みを浮かべ、己の首輪を指先で撫でた。
「最強のお宝だ。それを手に入れれば、世界も人間も動かせる」
.