空の巻物
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人間にとって、宿に泊まることは喜ばしいことなのだろう。
特にほとんど野宿暮らしの者にとっては。
服が土で汚れることもないし、虫に刺されることもないし、火の番をすることもないし、メシが出るところもあるし、風呂もあるし布団もある。
だけど、オレはどちらかと言えば野宿の方がいい。
2人より早く眠ったせいか、2人より早く起きてしまった。
目を覚ました途端、「しまった」と思った。
おそるおそる隣の布団を見る。
同時に盛大なため息をつきたくなった。
壁側の布団で眠っていたはずの飛段が、真ん中で眠る角都の布団に潜りこんでいたからだ。
男女の夜の営みのようなことをやらかしていたわけではない。
わけではないが、目撃した者はなんとも言えない気持ちになる。
飛段は寝ぞうが悪いため、着ている浴衣は眠っている間にはだけているから尚更だ。
「貧血起きそう…」
なぜオレが顔を赤らめねばならないのか。
まあ、角都を真ん中にすることを提案したのはオレだ。
だって、オレか飛段が真ん中になると、寒がりなのか、飛段がオレの布団に潜りこんでくるからだ。
子供なら許せるが、自分が20過ぎの成人だということを自覚してほしい。
他人(角都)が己と同じ目にあっているのを目の当たりにすると、軽い罪悪を覚えてしまう。
「さてどうしたものか」とオレは悩んだ。
角都を先に起こせば、オレは間違いなく怒りの巻き添えを食らう。
飛段は強く叩くでもしないかぎりなかなか起きない。
それに気付いた角都が起きてしまってはやはり前者と同じようになってしまう。
だからといって放っておけばやはりそれはそれで角都に怒られそうだ。
「……………」
オレは2度寝を決め込んだ。
できれば飛段が起きてくれれば平和な朝を迎えられるのだが、それはムリな話というものだ。
オレは布団をバレない程度に離し、とばっちりがこないように布団の中に潜りこむ。
なんて目覚まし時計いらずなんだろう。
角都が起きる前に、オレはさっさと夢の中へと避難する。
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