24:勝者の行進
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*ヨル
翌日の朝、オレ達は闘技場のステージへと集まった。
昨日とは違って、観客席にはこちらを見下ろす大勢の客が座っていた。
忍もいれば、ただの一般人もいる。
見下ろされるのはいい気分じゃないな。
すでに他の忍達も到着していた。
さすが、腐っても忍。
時間は厳守するようだ。
だが、違う里同士と組んでいるせいか、どのチームもピリピリとした空気を纏っている。
耳を澄ませると、遠くの方で「オレの里はテメーの里のせいで…」「なんでテメーらと組まなきゃ…」と喧嘩しているチームまでいた。
違う里同士はいがみ合いが起こるらしく、面倒なものだ。
「さ、殺伐としてますね;」
「喧嘩してるチームはもうダメね。気に入らなくても、仇だったとしても、すべてを受け入れつつ冷静に振るまうことができなきゃ、一人前の忍とは言えないわ」
忍の心得だな。
オレは今、トーナメント表を取りに行った角都と飛段を待っていた。
水波とセキの2人と。
セキの実力はわからないが、小さな体であの腕輪をちゃんとこの闘技場に運んだということは少しはできるのかもしれない。
水波もここにいる他の忍と違って、緊張することなく冷静に相手を分析している。
「なにやらかして抜け忍になったんだ?」
オレはふと気になって2人に尋ねると、2人はこちらに顔を向けた。
「それを知ってどうするの?」
「興味があるだけだ。過去を知ったところで、オレにはどうすることもできねーよ」
だが、チームを組んだからにはどんな奴か知っておきたい。
一瞬にして警戒の目を見せた水波だったが、少し黙ったあと、簡単に答えた。
「ある禁術の巻物を盗んだ。それだけ」
「そうか…」
それ以上聞くなという目をされたから、それ以上は聞かない。
その禁術は、たぶんこの大会で目にすることだろうし。
「セキ、おまえは?」
セキもセキで気になる。
こんな臆病そうな奴がなにをやらかしたんだか。
「ちょっと、セキはいいで…」
「えと…、里に両親を殺されました」
水波が止めようとしたとき、セキは苦笑しながら答えた。
「!」
「本当は上役の罪だったのに、なすりつけられたんです。それで、散々いたぶられた挙句、死刑になりました。ボクに里に復讐する力はない。でも、里にもいたくなかったので、思い切って飛び出しちゃいました」
それで里の追い忍に追われていたところを水波に救われたのだと話した。
口元は笑ってるのに、目には涙がこぼれていた。
水波はセキを抱きしめ、「よしよし」と優しく頭を撫でる。
「わ…、悪かった…」
好奇心で他人の過去は聞くべきではなかった。
「トーナメント表、もらってきたぜェ」
その場にいずらくなったとき、タイミング良く角都と飛段が戻ってきた。
飛段は手に持っていたトーナメント表の紙をオレ達に見せる。
チームは全部で24組。
オレ達のチーム名はどれだろうか。
昨日、解散前にチームが決まれば、チーム全員の名前と決定したチーム名をヌマチに報告しなければならなかった。
「昨日は聞きそびれたが、まさか、チーム“暁”にしてねーだろうな?(汗)」
チーム名を決めたのは飛段だと角都から聞いた。
「いくらなんでもそこまでバカじゃねーよ」
飛段はゲハゲハと笑った。
「それならいい…」
そこで一目瞭然のチーム名を見つける。
チーム“ジャシン☆”
「いいわけあるかァ!!!」
パーン、と丸めたトーナメント表で飛段の頭を叩いた。
だが、水波は気に入ったのか笑っている。
「アハハハ! いいねえ、チーム“ジャシン”!」
チーム名の変更はできないらしい。
まあ、“ジャシン様”とか“ジャシン教”とかつけられるよりはマシか。
集合時間ジャストとなり、ステージの真ん中にドロンと煙とともにヌマチが現れた。
忍達の視線が一斉に集まる。
「ご注目ください。これより、武闘大会を始めさせていただきます。始める前に、皆様にはあらかじめルールを説明しておきます。
対戦形式は1対1。5戦中、先に3勝したチームが次の対戦へと進むことができます。敗北したチームはそれまでです」
厳しい言い方だな。
わからないのが、それに違う里の忍同士が組む意味があるのかということだ。
5人まとめて対戦に臨むならともかく、ひとりずつ戦えってのはどういうことだ。
他の忍達も同じことを考えているはずだ。
飛段(バカ)を除いては。
ふとそいつを見ると、もうすぐで戦えることにうずうずしているのか、疑いもなくすっかりやる気になっている様子だ。
「1対1の対戦では、戦闘不能、死亡、反則で負けと判断します」
「反則ってなんだ?」
手を挙げてそれを聞いたのは飛段だ。
「その1、審判…つまり私を殺すこと。その2、1対1の対戦中に他者が割り込むこと。その3、戦闘放棄。これを破った者は拘束させていただきますので、そのおつもりで」
「飛段、破るなよ?」
オレは飛段に念を押しておく。
“その1”をやらかす可能性があるからだ。
飛段は不敵な笑みを浮かべる。
「オレは調子に乗っちまうからなァ。あの審判、ムカつくし…」
「自分で言うな」
角都は飛段の頭にコブシを振り下ろした。
「びっ」
舌を噛んだようだ。
「以上を踏まえ、これより武闘大会を開催します!」
会場が待ちわびたかのように歓声を上げ、その轟音にオレは思わず耳を塞いだ。
観客はわかっているのだろうか。
これから殺し合いが始まるというのに。
「!!」
背筋が凍りつくような視線を感じ取ったオレは、耳を塞いだままはっと振り返った。
ローブを身に纏い、大きめのフードで顔を隠した5人組がこちらをじっと見据えていた。
真ん中の奴の口元が笑った気がする。
本戦が始まった。
だが、すぐにオレ達の出番というわけではない。
開催が宣言されたあと、オレ達と他の忍達はそれぞれの闘技場の地下にある控え室で、あのステージで行われている対戦が終わるまで待たなければならなかった。
それまで控え室から出ることは許されない。
控え室にいるのはオレ達5人だけで、冷たい石畳の上で戦いが終わるのを待っていた。
トーナメント表通りなら、オレ達の対戦は7番目に行われる予定だ。
床に胡坐をかいて座っている飛段は不服そうに口を尖らせていた。
「オレ達は他の試合を見るなって…、なんだそれ」
オレはため息まじりに言い返す。
「相手を知らないまま戦えってことだろ」
「それはそれで面白ェかもしれねーけどよォ」
「待ってる間って、き、緊張しますね…;」
セキは胸の中心の服をつかみ、緊張のあまり体を小刻みに震わせながら、出入口の扉を見つめていた。
出入口には2人の見張りが立っている。
水波は部屋の隅に立ち、腕を組んで部屋の窓を見つめながら大人しくしていた。
角都は角都でいつも通り、飛段の隣に座ってビンゴブックの確認をしている。
この大会に参加している賞金首でもチェックしているのだろうか。
ゴッ!!
「!」
「なんだァ?」
闘技場全体に響いた轟音に全員がはっと顔を上げた。
微弱な地震のように揺れ、天井からホコリが舞い落ちる。
「…ひとり死んだな」
オレがボソリと呟くと、全員の視線がこちらに集まった。
「あ、そっか。ヨルなら外の音が聞こえるんだっけか」
飛段はオレの耳の性能を思い出して口にした。
セキは「そうなんですか!?」と露骨に驚いている。
「正確にはわからねえけど、潰されたみたいだ。虫みたいにな。ちなみに、その前にもひとり瞬殺されてるぜ」
これは勘だが、瞬殺されてるチームの相手はあのローブを纏った連中ではないだろうか。
「とんだバケモノチームが紛れ込んでるな」
オレ達が勝ち続ければ必ず当たるだろう。
「角都、今戦ってるチーム名は?」
オレが尋ねると、角都はビンゴブックに目を通したまま、トーナメント表を見ずに答える。
「チーム“稲妻”対チーム“虚(そら)”だ」
「虚…」
それがバケモノチームの名の気がした。
真上から、グシャ、という人間の肉が叩き潰された音が聞こえ、オレは当然のように小さく呟く。
「もう終わった」
しばらくして、出入口の扉が開かれた。
入ってきたのは、この控え室の扉の前にいた見張りだ。
「チーム“ジャシン☆”。出番だ」
.
翌日の朝、オレ達は闘技場のステージへと集まった。
昨日とは違って、観客席にはこちらを見下ろす大勢の客が座っていた。
忍もいれば、ただの一般人もいる。
見下ろされるのはいい気分じゃないな。
すでに他の忍達も到着していた。
さすが、腐っても忍。
時間は厳守するようだ。
だが、違う里同士と組んでいるせいか、どのチームもピリピリとした空気を纏っている。
耳を澄ませると、遠くの方で「オレの里はテメーの里のせいで…」「なんでテメーらと組まなきゃ…」と喧嘩しているチームまでいた。
違う里同士はいがみ合いが起こるらしく、面倒なものだ。
「さ、殺伐としてますね;」
「喧嘩してるチームはもうダメね。気に入らなくても、仇だったとしても、すべてを受け入れつつ冷静に振るまうことができなきゃ、一人前の忍とは言えないわ」
忍の心得だな。
オレは今、トーナメント表を取りに行った角都と飛段を待っていた。
水波とセキの2人と。
セキの実力はわからないが、小さな体であの腕輪をちゃんとこの闘技場に運んだということは少しはできるのかもしれない。
水波もここにいる他の忍と違って、緊張することなく冷静に相手を分析している。
「なにやらかして抜け忍になったんだ?」
オレはふと気になって2人に尋ねると、2人はこちらに顔を向けた。
「それを知ってどうするの?」
「興味があるだけだ。過去を知ったところで、オレにはどうすることもできねーよ」
だが、チームを組んだからにはどんな奴か知っておきたい。
一瞬にして警戒の目を見せた水波だったが、少し黙ったあと、簡単に答えた。
「ある禁術の巻物を盗んだ。それだけ」
「そうか…」
それ以上聞くなという目をされたから、それ以上は聞かない。
その禁術は、たぶんこの大会で目にすることだろうし。
「セキ、おまえは?」
セキもセキで気になる。
こんな臆病そうな奴がなにをやらかしたんだか。
「ちょっと、セキはいいで…」
「えと…、里に両親を殺されました」
水波が止めようとしたとき、セキは苦笑しながら答えた。
「!」
「本当は上役の罪だったのに、なすりつけられたんです。それで、散々いたぶられた挙句、死刑になりました。ボクに里に復讐する力はない。でも、里にもいたくなかったので、思い切って飛び出しちゃいました」
それで里の追い忍に追われていたところを水波に救われたのだと話した。
口元は笑ってるのに、目には涙がこぼれていた。
水波はセキを抱きしめ、「よしよし」と優しく頭を撫でる。
「わ…、悪かった…」
好奇心で他人の過去は聞くべきではなかった。
「トーナメント表、もらってきたぜェ」
その場にいずらくなったとき、タイミング良く角都と飛段が戻ってきた。
飛段は手に持っていたトーナメント表の紙をオレ達に見せる。
チームは全部で24組。
オレ達のチーム名はどれだろうか。
昨日、解散前にチームが決まれば、チーム全員の名前と決定したチーム名をヌマチに報告しなければならなかった。
「昨日は聞きそびれたが、まさか、チーム“暁”にしてねーだろうな?(汗)」
チーム名を決めたのは飛段だと角都から聞いた。
「いくらなんでもそこまでバカじゃねーよ」
飛段はゲハゲハと笑った。
「それならいい…」
そこで一目瞭然のチーム名を見つける。
チーム“ジャシン☆”
「いいわけあるかァ!!!」
パーン、と丸めたトーナメント表で飛段の頭を叩いた。
だが、水波は気に入ったのか笑っている。
「アハハハ! いいねえ、チーム“ジャシン”!」
チーム名の変更はできないらしい。
まあ、“ジャシン様”とか“ジャシン教”とかつけられるよりはマシか。
集合時間ジャストとなり、ステージの真ん中にドロンと煙とともにヌマチが現れた。
忍達の視線が一斉に集まる。
「ご注目ください。これより、武闘大会を始めさせていただきます。始める前に、皆様にはあらかじめルールを説明しておきます。
対戦形式は1対1。5戦中、先に3勝したチームが次の対戦へと進むことができます。敗北したチームはそれまでです」
厳しい言い方だな。
わからないのが、それに違う里の忍同士が組む意味があるのかということだ。
5人まとめて対戦に臨むならともかく、ひとりずつ戦えってのはどういうことだ。
他の忍達も同じことを考えているはずだ。
飛段(バカ)を除いては。
ふとそいつを見ると、もうすぐで戦えることにうずうずしているのか、疑いもなくすっかりやる気になっている様子だ。
「1対1の対戦では、戦闘不能、死亡、反則で負けと判断します」
「反則ってなんだ?」
手を挙げてそれを聞いたのは飛段だ。
「その1、審判…つまり私を殺すこと。その2、1対1の対戦中に他者が割り込むこと。その3、戦闘放棄。これを破った者は拘束させていただきますので、そのおつもりで」
「飛段、破るなよ?」
オレは飛段に念を押しておく。
“その1”をやらかす可能性があるからだ。
飛段は不敵な笑みを浮かべる。
「オレは調子に乗っちまうからなァ。あの審判、ムカつくし…」
「自分で言うな」
角都は飛段の頭にコブシを振り下ろした。
「びっ」
舌を噛んだようだ。
「以上を踏まえ、これより武闘大会を開催します!」
会場が待ちわびたかのように歓声を上げ、その轟音にオレは思わず耳を塞いだ。
観客はわかっているのだろうか。
これから殺し合いが始まるというのに。
「!!」
背筋が凍りつくような視線を感じ取ったオレは、耳を塞いだままはっと振り返った。
ローブを身に纏い、大きめのフードで顔を隠した5人組がこちらをじっと見据えていた。
真ん中の奴の口元が笑った気がする。
本戦が始まった。
だが、すぐにオレ達の出番というわけではない。
開催が宣言されたあと、オレ達と他の忍達はそれぞれの闘技場の地下にある控え室で、あのステージで行われている対戦が終わるまで待たなければならなかった。
それまで控え室から出ることは許されない。
控え室にいるのはオレ達5人だけで、冷たい石畳の上で戦いが終わるのを待っていた。
トーナメント表通りなら、オレ達の対戦は7番目に行われる予定だ。
床に胡坐をかいて座っている飛段は不服そうに口を尖らせていた。
「オレ達は他の試合を見るなって…、なんだそれ」
オレはため息まじりに言い返す。
「相手を知らないまま戦えってことだろ」
「それはそれで面白ェかもしれねーけどよォ」
「待ってる間って、き、緊張しますね…;」
セキは胸の中心の服をつかみ、緊張のあまり体を小刻みに震わせながら、出入口の扉を見つめていた。
出入口には2人の見張りが立っている。
水波は部屋の隅に立ち、腕を組んで部屋の窓を見つめながら大人しくしていた。
角都は角都でいつも通り、飛段の隣に座ってビンゴブックの確認をしている。
この大会に参加している賞金首でもチェックしているのだろうか。
ゴッ!!
「!」
「なんだァ?」
闘技場全体に響いた轟音に全員がはっと顔を上げた。
微弱な地震のように揺れ、天井からホコリが舞い落ちる。
「…ひとり死んだな」
オレがボソリと呟くと、全員の視線がこちらに集まった。
「あ、そっか。ヨルなら外の音が聞こえるんだっけか」
飛段はオレの耳の性能を思い出して口にした。
セキは「そうなんですか!?」と露骨に驚いている。
「正確にはわからねえけど、潰されたみたいだ。虫みたいにな。ちなみに、その前にもひとり瞬殺されてるぜ」
これは勘だが、瞬殺されてるチームの相手はあのローブを纏った連中ではないだろうか。
「とんだバケモノチームが紛れ込んでるな」
オレ達が勝ち続ければ必ず当たるだろう。
「角都、今戦ってるチーム名は?」
オレが尋ねると、角都はビンゴブックに目を通したまま、トーナメント表を見ずに答える。
「チーム“稲妻”対チーム“虚(そら)”だ」
「虚…」
それがバケモノチームの名の気がした。
真上から、グシャ、という人間の肉が叩き潰された音が聞こえ、オレは当然のように小さく呟く。
「もう終わった」
しばらくして、出入口の扉が開かれた。
入ってきたのは、この控え室の扉の前にいた見張りだ。
「チーム“ジャシン☆”。出番だ」
.