21:永遠の意
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*飛段
「貴様が聞いていなかっただけだ」
宿の部屋に戻って早々オレが問い詰めると、着物姿で窓側に座っていた角都は平然とそう言いやがった。
それで「あーそう」と納得するオレではない。
角都に詰め寄り、文句を連ねてやる。
「だからてめーが言わなかったんだろ! ボケてんじゃねえよジジイ!」
この際殴られようが構わねえ。
とにかく角都はオレに言わなかった。
オレは間違っちゃいねえよ。
いくらヨルと騒いでたとしても角都の言葉はちゃんと聞いてる。
角都の文字通りの鉄拳が飛んでくることを覚悟していたが、角都はため息をついて「黙れ」と呆れたように言っただけだった。
殴られるよりムカついた。
青筋を立ててさらに突っかかろうとしたところでサソリがオレと角都の間に胡坐をかいて座った。
もちろん、ちゃんとヒルコから出たサソリだ。
「もういいか?」
サソリはヒルコの中から2つの瓶を取り出し、角都と自分の前にどんと置いた。
中身はおそらく酒だ。
「今日は飲む約束してたからな」
サソリは肩越しにこちらに振り返り、薄笑みを浮かべた。
角都は袖からおちょこを2つ取り出した。
自分とサソリの分だろう。
「オレとサソリで飲む約束だ。下戸のおまえには関係ない」
確かにオレは下戸だ。
角都のように長く飲むことはできない。
角都の言う通り、オレには関係ないことだ。
「オレらは話し合いするから、てめーらは勝手にヒルコの中にある弱めの酒持ってって隣で語ってろ」
サソリはしっしと手を払った。
「旦那も勝手だな。うん;」
そう言いながらデイダラはヒルコの中から数本の酒瓶を取り出し、オレとヨルと一緒に、隣の部屋へと向かう。
ちなみにそこは芸術コンビの部屋だ。
部屋を去る際、オレは角都とサソリに向かって「あっかんべー」と我ながらガキみたいに舌を出して部屋を出ていった。
酒飲み過ぎてオレよりアホにならねえかな、あのオッサン2人。
オレももう22だ。
ガキ扱いするなっての。
下戸でも、言ってくれりゃあ酒に付き合ってやるのに…。
*ヨル
酒をちびちびと飲んでいたオレとデイダラは、早くもうんざりしていた。
「角都ゥー、あのクソジジイがァー」
飛段が絡み酒を始めたからだ。
「聞いてくれよヨルー、デイダラちゃーん」とオレとデイダラの肩にしがみついてつらつらと角都への文句を垂れる。
その状態は1時間近く続いた。
オレとデイダラはある意味吐きそうで顔が青い。
うざすぎて。
「はいはい、わかったわかった、角都が悪いよな;」
オレはこうして何度も飛段の肩を軽くぽんぽんと叩きながら慰めているのだが、飛段は「そうだろォ」と言ってまた同じ文句を連ね始める。
しかし、先程とは違ってうとうとしてきた様子だ。
まぶたを開けたり閉じたりをゆったりと繰り返している。
あともう少しだ。
「それにしても、サソリって酒が飲めたんだな」
傀儡だから食べたり飲んだりしないものだと思っていた。
デイダラは首を振って否定する。
「ありゃ油だ。傀儡用のな。うん」
「油って美味いのか?;」
「味はしないらしいが、いい匂いがする」
匂いを楽しみながら飲んでいるのか。
ここからでは隣の匂いがわからない。
聞き耳を立てるのは悪趣味だと思い、やめた。
別に2人きりで内緒話はないだろう。
あったとしても、角都にはオレの耳の良さはわかっているからどちらにしても話せないはずだ。
おちょこに入った透明な酒をまた一口飲む。
飛段はこんな状態だが、アルコールと味もきつくはないので飲みやすい。
飛段はオレの肩に額を当て、うーうーと唸っている。
子供が眠いのを訴えているように。
角都と飲みあうと静かなものだ。
今は逆である。
「若いモン同士で飲むのも悪くはないな」
小さく呟いたその言葉を聞き逃さなかったのはデイダラだ。
「若いモン同士って…;」
はいはい、どうせオレは低くても102歳以上の高齢者だ。
前はガキより世間知らずだったが、角都が色々教えてくれたおかげでそれなりに世間の知識はつけたつもりだ。
それでも、経験や知識はそこらへんの若いモンとあまり変わらない。
「ヨルも、サソリの旦那派っぽいな」
「ん?」
「傀儡でもないその姿で旦那より長く生き続けてる。永遠に近い存在だ。うん」
この前語られた芸術論を思い出し、オレはふっと笑った。
バカにしたわけではない。
「ちょっと違うな」
「うん?」
「オレが生きている時間は、たかだか100年と数年だ。痛みも感じる生身だし、いつなにかのきっかけで死ぬかもしれない。“永遠の存在”とはまだまだ程遠い…。けど、要は感じ方だ。どこまでが永遠かはわからないが、オレは、オレ自身じゃなくてこの時間を“永遠”だと感じている」
「?」
時間を意識してから、そう思うようになった。
この2年が随分な時間に感じられた。
時間はゆっくりと、しかし一瞬一瞬と時を刻んでいるというのに。
「一瞬の永遠」
思い浮かんだ言葉がそれだった。
「そんな矛盾言葉、作るなよ。オイラと旦那が困る」
デイダラは困った顔をしていたが、口元には笑みが浮かんでいた。
その響きを嫌悪しているわけではなさそうだ。
「いいかヨル、一瞬ってのはな…」
今度はデイダラが絡み酒を始めた。
いや、これは素だ。
「それならジャシン様ってのはァ…」
関係ないのに飛段まで参加してきた。
宗教家と芸術家の言葉に挟まれ、貧血を覚える。
金色と銀色の髪が眩しい。
.
「貴様が聞いていなかっただけだ」
宿の部屋に戻って早々オレが問い詰めると、着物姿で窓側に座っていた角都は平然とそう言いやがった。
それで「あーそう」と納得するオレではない。
角都に詰め寄り、文句を連ねてやる。
「だからてめーが言わなかったんだろ! ボケてんじゃねえよジジイ!」
この際殴られようが構わねえ。
とにかく角都はオレに言わなかった。
オレは間違っちゃいねえよ。
いくらヨルと騒いでたとしても角都の言葉はちゃんと聞いてる。
角都の文字通りの鉄拳が飛んでくることを覚悟していたが、角都はため息をついて「黙れ」と呆れたように言っただけだった。
殴られるよりムカついた。
青筋を立ててさらに突っかかろうとしたところでサソリがオレと角都の間に胡坐をかいて座った。
もちろん、ちゃんとヒルコから出たサソリだ。
「もういいか?」
サソリはヒルコの中から2つの瓶を取り出し、角都と自分の前にどんと置いた。
中身はおそらく酒だ。
「今日は飲む約束してたからな」
サソリは肩越しにこちらに振り返り、薄笑みを浮かべた。
角都は袖からおちょこを2つ取り出した。
自分とサソリの分だろう。
「オレとサソリで飲む約束だ。下戸のおまえには関係ない」
確かにオレは下戸だ。
角都のように長く飲むことはできない。
角都の言う通り、オレには関係ないことだ。
「オレらは話し合いするから、てめーらは勝手にヒルコの中にある弱めの酒持ってって隣で語ってろ」
サソリはしっしと手を払った。
「旦那も勝手だな。うん;」
そう言いながらデイダラはヒルコの中から数本の酒瓶を取り出し、オレとヨルと一緒に、隣の部屋へと向かう。
ちなみにそこは芸術コンビの部屋だ。
部屋を去る際、オレは角都とサソリに向かって「あっかんべー」と我ながらガキみたいに舌を出して部屋を出ていった。
酒飲み過ぎてオレよりアホにならねえかな、あのオッサン2人。
オレももう22だ。
ガキ扱いするなっての。
下戸でも、言ってくれりゃあ酒に付き合ってやるのに…。
*ヨル
酒をちびちびと飲んでいたオレとデイダラは、早くもうんざりしていた。
「角都ゥー、あのクソジジイがァー」
飛段が絡み酒を始めたからだ。
「聞いてくれよヨルー、デイダラちゃーん」とオレとデイダラの肩にしがみついてつらつらと角都への文句を垂れる。
その状態は1時間近く続いた。
オレとデイダラはある意味吐きそうで顔が青い。
うざすぎて。
「はいはい、わかったわかった、角都が悪いよな;」
オレはこうして何度も飛段の肩を軽くぽんぽんと叩きながら慰めているのだが、飛段は「そうだろォ」と言ってまた同じ文句を連ね始める。
しかし、先程とは違ってうとうとしてきた様子だ。
まぶたを開けたり閉じたりをゆったりと繰り返している。
あともう少しだ。
「それにしても、サソリって酒が飲めたんだな」
傀儡だから食べたり飲んだりしないものだと思っていた。
デイダラは首を振って否定する。
「ありゃ油だ。傀儡用のな。うん」
「油って美味いのか?;」
「味はしないらしいが、いい匂いがする」
匂いを楽しみながら飲んでいるのか。
ここからでは隣の匂いがわからない。
聞き耳を立てるのは悪趣味だと思い、やめた。
別に2人きりで内緒話はないだろう。
あったとしても、角都にはオレの耳の良さはわかっているからどちらにしても話せないはずだ。
おちょこに入った透明な酒をまた一口飲む。
飛段はこんな状態だが、アルコールと味もきつくはないので飲みやすい。
飛段はオレの肩に額を当て、うーうーと唸っている。
子供が眠いのを訴えているように。
角都と飲みあうと静かなものだ。
今は逆である。
「若いモン同士で飲むのも悪くはないな」
小さく呟いたその言葉を聞き逃さなかったのはデイダラだ。
「若いモン同士って…;」
はいはい、どうせオレは低くても102歳以上の高齢者だ。
前はガキより世間知らずだったが、角都が色々教えてくれたおかげでそれなりに世間の知識はつけたつもりだ。
それでも、経験や知識はそこらへんの若いモンとあまり変わらない。
「ヨルも、サソリの旦那派っぽいな」
「ん?」
「傀儡でもないその姿で旦那より長く生き続けてる。永遠に近い存在だ。うん」
この前語られた芸術論を思い出し、オレはふっと笑った。
バカにしたわけではない。
「ちょっと違うな」
「うん?」
「オレが生きている時間は、たかだか100年と数年だ。痛みも感じる生身だし、いつなにかのきっかけで死ぬかもしれない。“永遠の存在”とはまだまだ程遠い…。けど、要は感じ方だ。どこまでが永遠かはわからないが、オレは、オレ自身じゃなくてこの時間を“永遠”だと感じている」
「?」
時間を意識してから、そう思うようになった。
この2年が随分な時間に感じられた。
時間はゆっくりと、しかし一瞬一瞬と時を刻んでいるというのに。
「一瞬の永遠」
思い浮かんだ言葉がそれだった。
「そんな矛盾言葉、作るなよ。オイラと旦那が困る」
デイダラは困った顔をしていたが、口元には笑みが浮かんでいた。
その響きを嫌悪しているわけではなさそうだ。
「いいかヨル、一瞬ってのはな…」
今度はデイダラが絡み酒を始めた。
いや、これは素だ。
「それならジャシン様ってのはァ…」
関係ないのに飛段まで参加してきた。
宗教家と芸術家の言葉に挟まれ、貧血を覚える。
金色と銀色の髪が眩しい。
.