20:夜明けの先へ
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翌日、オレ達は夜明けとともに村を出ることにした。
飛段は昨日のダメージが残っている。
「う~…、頭痛てェ…;」
これが二日酔いか。
オレは頭を抱えて呻いている飛段を呆れた目で見つめた。
飛段は回復が早いから、2日もかからないだろう。
見送りは村長ひとりだ。
村人達は騒ぎ疲れて村長の家でそのまま眠っている。
月代も、みんなと眠っているはずだ。
「では、頼んだぞ」
「ええ。旦那もお達者で…」
月代はこの村で育ててもらうことになった。
角都がここに来たのは、やはりそういう理由だった。
飛段は何度もチラチラと村長の家の玄関に目をやっている。
親代わりとはいえ、酷く懐かれていた。
未練があるのだろう。
それでも構わず角都が歩き出し、オレと飛段もそれについていく。
その時、家の中からバタバタと小さな足音が聞こえた。
それは玄関の扉を開け、裸足のままこちらに駆け寄ってくる。
「ママ!!」
「月代!?」
月代は飛段の腰にしがみついた。
月代は泣きながら訴える。
「ママいっちゃヤダ!! もっとママといっしょにいたい!!」
飛段は困惑した顔だ。
角都は近づき、月代を見下ろす。
「月代、おまえはこの村で一生を過ごせ」
「ヤダヤダヤダ!! いいこにしてるから!! いうこときくから!! もうつかまったりしないから!!」
「ごねるな。おまえの時間は戻った。朱鬼の能力もなくなったただの子供のお守りがオレ達にできるわけがない。それでもオレ達についてくるというのなら、オレはおまえを殺すほかない」
「角都! 言い方ってのがあるだろ!」
オレは怒鳴ったが、すぐに言い返された。
「甘やかすなヨル!」
オレと角都の言い合いが始まろうとしたとき、飛段はその場にしゃがみ、月代と目線を合わせた。
「オレ達はおまえのために言ってんだぜ、月代。オレ達は死なない。けど、おまえは死ぬ。オレ達と来ても、おまえは真っ先に死ぬ。それこそ、オレ達と2度と会えなくなるぜ」
自分が死んだところを想像したのか、月代はビクリと体を震わせた。
涙を浮かべるが、喚かないように耐えている。
「…ま…っ、また…、きて…くれる…?」
「おう」
飛段は月代の頭を撫でた。
「……ほ…、ほんとうの…ママみたいに…、しなない?」
「!」
月代はわかっていた。
実の母親が死んでいることを。
飛段を母親と同じように慕っていたのは、本当に、そうなるように仕組まれていたことだったのか。
それとも、ただ純粋に母親の存在が欲しかったのか。
「ああ、死なねえよ」
「飛段、行くぞ」
角都が声をかけ、飛段は立ち上がって月代に背を向けて歩きだした。
もう月代は追いかけてこない。
それを確認したオレも、2人の背中についていく。
肩越しに振り返ると、月代は大粒の涙を流しながら、手を振っていた。
それから、村長とともに家の中へと入っていく。
きっと、家の中の者達があたたかく迎えてくれるから、大丈夫だろう。
月代の居場所はここでいい。
「……泣き喚いてもいいんだぜ;」
飛段の顔を覗くのはちょっとためらった。
肩が震えてるし、耳赤いし、鼻を啜る音が聞こえる。
「泣いてねえっ。泣いてねーよっ。二日酔いでだるいだけだ。酒飲み過ぎて目から溢れてるだけだァ」
オレと角都は目を合わせた。
それから、オレは飛段の頭を後ろから撫でてやる。
「慰めんなァ!!」
飛段は顔をムキッとさせて喚いた。
そのあと、オレは耳鳴りに、飛段は二日酔いの頭痛に苦しんだ。
呆れた角都がため息をつく。
「はぁ」
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