14:引き摺り込まれる
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図書館をあとにしたヨル達は、公園のベンチに座って休憩をとっていた。
ヨルは途中でりんご飴を売っている店を見かけ、自分と月代の分のりんご飴を小遣いで買ったあと、今ここで食べている。
月代は自分だけが食べるのは悪いと思ったのか、隣にいる飛段にも差し出した。
飛段は遠慮なくりんご飴に噛り付いている。
「今日中にここを発つ」
ヨルがりんご飴を食べ終えた頃に言いだしたのは、角都だった。
飛段は文句を言う。
「えー! せっかく町に来たんだから宿とろーぜェ」
「まだ日中だ。のんびり過ごすわけにもいかん。時は金なりだ」
雷遁の属性を持つ心臓は、未だ角都の背中にはない。
この3日間で何人か賞金首を仕留めたが、どれも角都が求める心臓を持っていなかった。
五大性質を揃えたいのはわかるが、早くその空席を埋めてくれないとヨルと飛段が落ち着かない。
飛段はそれ以上文句を言わず、「チェー」と口を尖らすだけで終えた。
月代もそれをマネしている。
「買い出しを済ませ次第、この町を出て他国へと向かう。おまえ達はここで待っていろ」
そう言って公園を出ていく角都の後ろを、ヨルは慌てて追った。
食べ終わったりんご飴の串は足下に落としたが、拾わず放置する。
「オレも行く!」
飛段と月代にはここで待っていてもらい、ヨルは角都と肩を並べて公園を出ていく。
公園から離れたのを肩越しで確認したあと、ヨルは角都に尋ねた。
「賞金首を狩りたいってのもあるけど、他にもここを出たい理由があるんだろ?」
「……………」
無言だったが、角都の片眉がピクリと吊りあがったのを見た。
思えば、この国に入ってからだ。
角都がどことなくそわそわしている気がしたのは。
飛段がそれに気付いたのかは知らないが。
図書館で他の本を漁っている時に、ヨルはなんとなく角都の様子がどことなくおかしい理由に気付いた。
「おまえの故郷…、滝隠れの里? が近いんだろ?」
「……地図を覚えたか」
角都は前を向いたまま呟くように言った。
ヨルは視線を角都に向けたまま尋ねる。
「里を抜けたけど、戻りたいと思ったことはないのか?」
角都が里を抜けたのは、里に裏切られたからだ。
抜けなければ、処刑されていた。
あれは仕方のないことだった、とヨルはよく知っている。
生に執着する角都を目の当たりにし、それを見兼ねて抜け出す手伝いをしたのは、ヨルなのだ。
「家族…とかは?」
質問を変えると、角都は小さく答える。
「……女房がいた」
「え」
予想外の返答に、ヨルは思わず立ち止まった。
すぐにはっとし、先へ行く角都を駆け足で追いかけて動揺を露わに問う。
「け、けけ、結婚してたのか!?」
(たしかに、よくよく考えれば角都はモテるっちゃモテるし、縫い目のない頃だと尚更…)
普段の性格を知っているだけに驚きも大きい。
「こ、こここ、子供とかいたのか!?」
いたらいたで見てみたいものだが、存命していたとしても今は高齢だろう。
「さあな。抜けてからは連絡を一切とっていない。オレもこの年だ。生きていたとしても、齢80を越えているか、それとも……」
言葉を切り、それ以上は続けなかった。
ヨルはやっと自分が聞いてはいけないことを聞いたと察する。
相手の傷(過去)に、うかつに触れてしまったのだ。
「……せめて、元気だと伝えることはできなかったのか?」
気付いたというのに、口が勝手に問いかける。
「馬鹿か。それがバレたら、相手はどうなる」
「…!」
里の者から責め苦を受けるのは間違いないだろう。
「これ以上、くだらん話をするな」
里を抜け出したあと、角都は一人でずっと血を浴び続けてきた。
一人でずっと傷を与えられてきた。
ヨルは再び立ち止まり、先を行く大きな背中に目で問いかける。
(今までなにを思って生きてきた? 死にたいと思ったことは本当にないのか? おまえは、孤独でいたかったオレとは違うだろ)
角都を真っ赤に汚してしまったのは、里の者でもない…。
ヨルの背中に暗く重いものが圧し掛かり、歩みを止める。
先を歩いていた角都はふと立ち止まり、こちらに振り返った。
「ヨル、早く来い」
「角…」
その時、横の建物がこちらに倒れようと傾いたのが目の端に映った。
「「!!」」
咄嗟に、角都の地怨虞で伸ばされた右手にヨルは胸倉をつかまれて引っ張られたおかげで、倒れてきた建物から逃れることができた。
ズウン、という轟音に伴って建物が倒れ、周りは騒ぎになる。
通行人達は悲鳴を上げ、倒れた建物の近くに住んでいた住人達が慌てて家から飛び出した。
「茫然とするな、死ぬぞ」
「あ…、ありがとう…」
地面に転がっていたヨルはすぐ目の前にいる角都を見上げ、立ち上がって服に付着した土を払う。
「「!」」
瞬間、殺気に気付き、ヨルと角都は同時に振り返った。
「また会ったな、例外者共」
そこには、見覚えのある外套を身に纏い、腰には三日月形の鞘を差し、頭には角都のような頭巾を被った男がいる。
「日ノ輪…!!」
名前は確か、スペードだ。
「一緒に来てもらおうか、ヨル。ヒルが呼んでいる」
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