12:鬼の目覚め
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*飛段
振るう三連鎌を、日ノ輪の外套を脱ぎ捨てたココロは腕や脚につけた飛輪で踊るように防ぎ続ける。
刃先が少しでも、かすることさえ許さない。
「血を取り込んで呪いをかけるのよねぇ?」
オレの力まで知られてるから余計に面倒だ。
角都がいれば地怨虞でこの女を縛って動けなくし、その間にオレが手傷ひとつ負わせれば終いだ。
自分がとろいのはわかってるが、相方一人いないだけでこんなに苦労するとは。
「うふふっ」
ブシュッ!
「ぐぅっ!」
懐に飛び込まれ、飛輪付きの体で抱きしめられた。
「あなたが血を流してばっかじゃない。もうちょっと頑張りなさいよぉ」
「…っ、テ…メ…」
首筋を伝う血を舐められる。
その時、
「!!」
ココロの背後に迫った影が剣を横に振るった。
気付いたココロは身を屈めてオレから離れる。
かすったのか、短い毛がハラハラと目の前から落ちていった。
「誰に断って血ィ舐めてんだよ」
現れたのは、両手に夢魔を持ったヨルだった。
今度は本物のようだ。
「ヨル!」
オレの血を舐められたのが腹立たしいのか、険しい顔をココロに向けている。
「誰に断って」と言うが、おまえも大概オレの抗議を無視して飲んでるからな。
「おまえどこから…」
オレが問うと、ヨルはココロを睨みつけながら答える。
「近場でおまえが戦ってるのを感じて来た。けど、おまえのところに通じてなさそうだったから、罠の起爆札を何枚か使わせてもらった」
それで通路の壁に穴を空けてこちらに来たそうだ。
「罠を利用したのね。そっちのコよりは賢いじゃない」
「褒めてもなにも出ねーぞ」
まただ。
ヨルとココロの間に火花が散っている。
ちょっとビビったオレは一歩下がった。
なんの合図もなしにヨルとココロは走り出し、武器を交える。
それこそまるで舞っているかのようだ。
刃と刃がぶつかり合って火花が散る。
「アンタもとろいわねぇ!」
ココロは4枚の飛輪を地面に向けて投げつける。
「ヨル! 急に下から飛び出してくるぞ!」
オレが声をかけ、ヨルは周りを警戒した。
下を進む飛輪の音が聞きとれたのか、ヨルの反応は早かった。
前後左右から飛輪が飛び出すと同時にヨルは両手の夢魔を横に振るい、全て払い落とした。
しかし、ココロの攻撃はそれで終いではなく、すぐに6枚の飛輪を飛ばした。
一瞬の隙ができたヨルの体を容赦なく切りつける。
「く…っ」
6枚の飛輪はココロの手の中に戻ろうとした。
その時、オレはヨルが密かにほくそ笑んだのを見逃さなかった。
それはすぐに明らかになった。
「!!」
先に気付いたのはココロだ。
ドン!!
いつの間にか、飛輪に起爆札が貼られていたのだ。
*ヨル
起爆札を1枚残しておいてよかった。
6枚のうちの1枚にそれを捨て身で貼り付けたのだ。
ココロが気付く可能性も考え、手の中に戻る前に起爆するようにセットした。
「な…」
煙の中ではオレが有利だ。
瞬時にココロの位置を突き止め、左手の夢魔を振り下ろした。
「くっ!」
手応えあり。
左肩に傷をつけた。
ギイン!
ココロが振り上げた右腕が左手の夢魔に当たり、夢魔は宙を掻きながらオレの後方へと飛んだ。
ココロは飛輪を目の前のオレの喉に突きつけた。
オレはそれを見下ろし、落ち着いた口調で言ってやる。
「…テメーはもう終わりだ」
「なにそれ? もうあんなふざけた罠にはかからないわよ」
口元は笑っているが、目つきは鋭い。
「もう仕掛けない。準備は整ったからな」
「準備?」
「おまえ、誰かひとり忘れてねーか?」
ココロは顔をはっとさせ、オレ越しを見た。
オレも肩越しに振り返る。
地面に血のジャシンマークを描き終えたあいつは、その上に立ったままオレの夢魔についたココロの血を舐め、体を変色させた。
「アンタ…、剣を飛ばさせたのはわざと…!?」
ココロの表情には余裕の欠片も見当たらない。
オレは笑みを浮かべて冷ややかに返す。
「おまえの体に傷一つでもつければ、あとはもうあいつのもんだ」
「ゲハハハ!! 今日は頭が冴えるじゃねえか、ヨル!!」
飛段は懐から伸縮式の杭を取り出して伸ばした。
「これから儀式を始める!! さっきの痛み、倍にして返してやるから覚悟しろよォ!!」
儀式が出来ることに興奮し、この空間全体に響く声を上げた。
オレの耳にも毒だ。
ココロがオレを睨みつけ、先に殺してしまおうと飛輪を振った。
その前に飛段が杭で自分の右手のてのひらを貫く。
ドス!
「きゃあ!!」
ココロのてのひらにも同じ傷ができる。
痛みのあまり持っていた飛輪を落とした。
左手で傷を押さえ、呻いている。
「うぅ…っ、ヤダァ…、死にたくない…!」
その表情には絶望が浮かんでいた。
オレは飛段に声をかける。
「飛段、遊んでねーでさっさとトドメ刺せ!」
ヒルじゃあるまいし、敵を痛めつけて面白がるのは趣味じゃない。
「あァ!? 一撃で殺したら…」
「飛段!」
早くしろ、と目で促した。
飛段は舌打ちし、杭の先を自分の胸へと向けた。
ビクリとココロが震え、恐怖の色を浮かべる。
「いや! いやぁ! 死にたくない―――!!」
「ああそうかよ!!」
飛段は自分の胸の中心に杭を振り下ろした。
杭の先端が胸の皮膚を破る直前、
ボコッ!!
「!?」
飛段の下の地面がいきなり盛り上がり、陣を崩した。
地面から現れたのは、人骨の集合体だ。
「なっ!?」
「飛段!!」
そのまま勢いよく地面から出現したそれに飛段は壁へと吹っ飛ばされてしまった。
壁が崩れた音が聞こえる。
地面がヒビ割れ、先程までいた場所の半分が下へと落下した。
オレもそれに巻き込まれ、落下する。
「なんだ!?」
地面に着地し、骨の集合体を見上げた。
それは巨大な人骨の形を成していた。
「ヒシギ! アンタ、こんなところで使う術じゃないでしょ!?」
吹き抜けのようになった空間で、落下を逃れたココロの声が上から聞こえた。
「そう言うな。けっこう腐れ手強かったんだ」
大きな骸骨が喋った。
あの声はヒシギという男の声だ。
巨大な人骨の両手にはなにかが握られていた。
それは、
「角都!!」
戦いの最中で角都が何者かと戦っているのには気付いていた。
そして、追い詰めれていることも。
「角都!」
オレは左手の夢魔を呼び戻し、構えて切りかかった。
「放せコラァ!!」
「今、いいところなんだ」
鱗が剥がれるように、巨大な人骨から小さな人骨が一体一体剥がれてオレの阻止にかかる。
「ジャマすんな!!」
夢魔で人骨を破壊していくが、キリがない。
「ごほ…っ」
左右の手の親指で腹を圧迫され、角都はマスクの下で血を吐いた。
骸骨の中にいるヒシギは不気味に笑い、角都を見下ろす。
「潰されるか? 食われるか?」
このまま殺されると思ったが、マスクの下の微かな嘲笑をオレは聞きとった。
「…偽暗を潰すくらいだ…。それなりにできる忍かと思ったが…、やはりガキだな」
明らかに見下したような言い方だ。
「……蟻のように潰される方が好きみたいだな」
「角都!!」
襲いかかる人骨の群れのせいで近づくことも許されない。
間に合わない、と絶望がオレの中をよぎった。
その時、
「ぐう!?」
呻き声を上げたのは、角都ではなく、ヒシギの方だった。
緩んだ手の中から角都は抜け出し、地面に着地する。
オレの邪魔をしていた他の人骨達もただの動かぬ骨へと地面に崩れた。
巨人の人骨が足下から徐々に形を失っていく。
オレは落下していくる大量の骨に巻き込まれないように角都の隣へと避難した。
巨大な骸骨からヒシギが這うように出てくる。
その首を、角都の切り離された右手がつかんでいた。
「ぐ…!」
苦しみを味わいながら角都を見上げて睨みつける。
角都は冷ややかな目でそいつを見下ろした。
「小さな弱い蟻でも、捕まれば、噛みついて反撃するものだ」
「ど…うじ…て…」
最初から見ていたわけではなかったが、おそらく、わざと捕まって右手を切り離し、骨の集合体に忍び込ませたのだろう。
ヒシギは巨大な人骨の司令塔であるが、神経が人骨に繋がっているわけではないため、体の中を動き回る右手の存在に気付けなかった。
まるで、毒のようだ。
気付いた時にはもう遅い。
「腐れ…ヤロ…」
その言葉を最後に、ヒシギは角都の手によって首の骨を折られた。
.
振るう三連鎌を、日ノ輪の外套を脱ぎ捨てたココロは腕や脚につけた飛輪で踊るように防ぎ続ける。
刃先が少しでも、かすることさえ許さない。
「血を取り込んで呪いをかけるのよねぇ?」
オレの力まで知られてるから余計に面倒だ。
角都がいれば地怨虞でこの女を縛って動けなくし、その間にオレが手傷ひとつ負わせれば終いだ。
自分がとろいのはわかってるが、相方一人いないだけでこんなに苦労するとは。
「うふふっ」
ブシュッ!
「ぐぅっ!」
懐に飛び込まれ、飛輪付きの体で抱きしめられた。
「あなたが血を流してばっかじゃない。もうちょっと頑張りなさいよぉ」
「…っ、テ…メ…」
首筋を伝う血を舐められる。
その時、
「!!」
ココロの背後に迫った影が剣を横に振るった。
気付いたココロは身を屈めてオレから離れる。
かすったのか、短い毛がハラハラと目の前から落ちていった。
「誰に断って血ィ舐めてんだよ」
現れたのは、両手に夢魔を持ったヨルだった。
今度は本物のようだ。
「ヨル!」
オレの血を舐められたのが腹立たしいのか、険しい顔をココロに向けている。
「誰に断って」と言うが、おまえも大概オレの抗議を無視して飲んでるからな。
「おまえどこから…」
オレが問うと、ヨルはココロを睨みつけながら答える。
「近場でおまえが戦ってるのを感じて来た。けど、おまえのところに通じてなさそうだったから、罠の起爆札を何枚か使わせてもらった」
それで通路の壁に穴を空けてこちらに来たそうだ。
「罠を利用したのね。そっちのコよりは賢いじゃない」
「褒めてもなにも出ねーぞ」
まただ。
ヨルとココロの間に火花が散っている。
ちょっとビビったオレは一歩下がった。
なんの合図もなしにヨルとココロは走り出し、武器を交える。
それこそまるで舞っているかのようだ。
刃と刃がぶつかり合って火花が散る。
「アンタもとろいわねぇ!」
ココロは4枚の飛輪を地面に向けて投げつける。
「ヨル! 急に下から飛び出してくるぞ!」
オレが声をかけ、ヨルは周りを警戒した。
下を進む飛輪の音が聞きとれたのか、ヨルの反応は早かった。
前後左右から飛輪が飛び出すと同時にヨルは両手の夢魔を横に振るい、全て払い落とした。
しかし、ココロの攻撃はそれで終いではなく、すぐに6枚の飛輪を飛ばした。
一瞬の隙ができたヨルの体を容赦なく切りつける。
「く…っ」
6枚の飛輪はココロの手の中に戻ろうとした。
その時、オレはヨルが密かにほくそ笑んだのを見逃さなかった。
それはすぐに明らかになった。
「!!」
先に気付いたのはココロだ。
ドン!!
いつの間にか、飛輪に起爆札が貼られていたのだ。
*ヨル
起爆札を1枚残しておいてよかった。
6枚のうちの1枚にそれを捨て身で貼り付けたのだ。
ココロが気付く可能性も考え、手の中に戻る前に起爆するようにセットした。
「な…」
煙の中ではオレが有利だ。
瞬時にココロの位置を突き止め、左手の夢魔を振り下ろした。
「くっ!」
手応えあり。
左肩に傷をつけた。
ギイン!
ココロが振り上げた右腕が左手の夢魔に当たり、夢魔は宙を掻きながらオレの後方へと飛んだ。
ココロは飛輪を目の前のオレの喉に突きつけた。
オレはそれを見下ろし、落ち着いた口調で言ってやる。
「…テメーはもう終わりだ」
「なにそれ? もうあんなふざけた罠にはかからないわよ」
口元は笑っているが、目つきは鋭い。
「もう仕掛けない。準備は整ったからな」
「準備?」
「おまえ、誰かひとり忘れてねーか?」
ココロは顔をはっとさせ、オレ越しを見た。
オレも肩越しに振り返る。
地面に血のジャシンマークを描き終えたあいつは、その上に立ったままオレの夢魔についたココロの血を舐め、体を変色させた。
「アンタ…、剣を飛ばさせたのはわざと…!?」
ココロの表情には余裕の欠片も見当たらない。
オレは笑みを浮かべて冷ややかに返す。
「おまえの体に傷一つでもつければ、あとはもうあいつのもんだ」
「ゲハハハ!! 今日は頭が冴えるじゃねえか、ヨル!!」
飛段は懐から伸縮式の杭を取り出して伸ばした。
「これから儀式を始める!! さっきの痛み、倍にして返してやるから覚悟しろよォ!!」
儀式が出来ることに興奮し、この空間全体に響く声を上げた。
オレの耳にも毒だ。
ココロがオレを睨みつけ、先に殺してしまおうと飛輪を振った。
その前に飛段が杭で自分の右手のてのひらを貫く。
ドス!
「きゃあ!!」
ココロのてのひらにも同じ傷ができる。
痛みのあまり持っていた飛輪を落とした。
左手で傷を押さえ、呻いている。
「うぅ…っ、ヤダァ…、死にたくない…!」
その表情には絶望が浮かんでいた。
オレは飛段に声をかける。
「飛段、遊んでねーでさっさとトドメ刺せ!」
ヒルじゃあるまいし、敵を痛めつけて面白がるのは趣味じゃない。
「あァ!? 一撃で殺したら…」
「飛段!」
早くしろ、と目で促した。
飛段は舌打ちし、杭の先を自分の胸へと向けた。
ビクリとココロが震え、恐怖の色を浮かべる。
「いや! いやぁ! 死にたくない―――!!」
「ああそうかよ!!」
飛段は自分の胸の中心に杭を振り下ろした。
杭の先端が胸の皮膚を破る直前、
ボコッ!!
「!?」
飛段の下の地面がいきなり盛り上がり、陣を崩した。
地面から現れたのは、人骨の集合体だ。
「なっ!?」
「飛段!!」
そのまま勢いよく地面から出現したそれに飛段は壁へと吹っ飛ばされてしまった。
壁が崩れた音が聞こえる。
地面がヒビ割れ、先程までいた場所の半分が下へと落下した。
オレもそれに巻き込まれ、落下する。
「なんだ!?」
地面に着地し、骨の集合体を見上げた。
それは巨大な人骨の形を成していた。
「ヒシギ! アンタ、こんなところで使う術じゃないでしょ!?」
吹き抜けのようになった空間で、落下を逃れたココロの声が上から聞こえた。
「そう言うな。けっこう腐れ手強かったんだ」
大きな骸骨が喋った。
あの声はヒシギという男の声だ。
巨大な人骨の両手にはなにかが握られていた。
それは、
「角都!!」
戦いの最中で角都が何者かと戦っているのには気付いていた。
そして、追い詰めれていることも。
「角都!」
オレは左手の夢魔を呼び戻し、構えて切りかかった。
「放せコラァ!!」
「今、いいところなんだ」
鱗が剥がれるように、巨大な人骨から小さな人骨が一体一体剥がれてオレの阻止にかかる。
「ジャマすんな!!」
夢魔で人骨を破壊していくが、キリがない。
「ごほ…っ」
左右の手の親指で腹を圧迫され、角都はマスクの下で血を吐いた。
骸骨の中にいるヒシギは不気味に笑い、角都を見下ろす。
「潰されるか? 食われるか?」
このまま殺されると思ったが、マスクの下の微かな嘲笑をオレは聞きとった。
「…偽暗を潰すくらいだ…。それなりにできる忍かと思ったが…、やはりガキだな」
明らかに見下したような言い方だ。
「……蟻のように潰される方が好きみたいだな」
「角都!!」
襲いかかる人骨の群れのせいで近づくことも許されない。
間に合わない、と絶望がオレの中をよぎった。
その時、
「ぐう!?」
呻き声を上げたのは、角都ではなく、ヒシギの方だった。
緩んだ手の中から角都は抜け出し、地面に着地する。
オレの邪魔をしていた他の人骨達もただの動かぬ骨へと地面に崩れた。
巨人の人骨が足下から徐々に形を失っていく。
オレは落下していくる大量の骨に巻き込まれないように角都の隣へと避難した。
巨大な骸骨からヒシギが這うように出てくる。
その首を、角都の切り離された右手がつかんでいた。
「ぐ…!」
苦しみを味わいながら角都を見上げて睨みつける。
角都は冷ややかな目でそいつを見下ろした。
「小さな弱い蟻でも、捕まれば、噛みついて反撃するものだ」
「ど…うじ…て…」
最初から見ていたわけではなかったが、おそらく、わざと捕まって右手を切り離し、骨の集合体に忍び込ませたのだろう。
ヒシギは巨大な人骨の司令塔であるが、神経が人骨に繋がっているわけではないため、体の中を動き回る右手の存在に気付けなかった。
まるで、毒のようだ。
気付いた時にはもう遅い。
「腐れ…ヤロ…」
その言葉を最後に、ヒシギは角都の手によって首の骨を折られた。
.