11:無力を与え
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*ヒル
早朝、海が近い廃墟の小屋で、ヒル達は真ん中に地図を広げてそれを囲っていた。
捜索した場所は赤いペンで×をつける。
「この島にもいませんか…」
見落としているところがないか、地図の上から捜す。
「…右手の調子はどうだ?」
ふと、ヒシギに問われ、ヒルは軽く五指を動かして笑みを向けながら答える。
「神経もうまく繋がってますよ」
あのあと、集合場所に到着したヒルは、ヒシギが手に入れた新しい右手を繋げてもらった。
付けたばかりは痛みを感じたが、今では難なく指を動かせる。
朱族特有の回復力も加わったおかげだろう。
顔の火傷もすっかり完治している。
「遊んでいるからあんな目に遭うんだ。例外だぞ、ヒル」
「わざと手加減して楽しむ悪癖、いい加減直してよねぇ」
スペードとココロにも説教されてしまい、苦笑した。
「お次は手加減はしません。…さて…、次は…」
現在地から次の目的地を指でたどったとき、
「地道じゃのぅ、ヒル」
「!!」
音もなく出入り口から現れた人物に日ノ輪のメンバーが咄嗟に武器を構えた。
ヒルは知っている、奴には束になっても敵わないと。
ヒルは日ノ輪のメンバーを手で制し、あまり近寄りたくないが、前に出た。
「……なんの用ですか?」
警戒しながら笑みを返す。
「少し早めの登場じゃったな。角都殿には1週間後に会えると言ってしまったのに、1日早かった」
たしなめているようには聞こえない。
「あなたにヒル達の行動まで指摘される覚えはありませんが?」
「それは、まあよい。ワシが言いたいのは…」
奴が右腕を振るうと、一瞬にしてヒル達は赤い蝶に囲まれてしまった。
妖しい笑みを保ったまま奴は言葉を続ける。
「次にヨルを殺そうとするなら、赤い蝶に誘われてしまうぞ」
一気に大きな殺気を叩きつけられ、片膝をつきそうになるのを堪えた。
日ノ輪のメンバーはスペード以外、嫌な汗を流し、顔を強張らせ、恐怖で体を小刻みに震わせている。
ココロは上から押さえつけられたかのように倒れる始末だ。
呼吸がうまくできないのか、涙目だ。
「! スペード!」
ヒルが声をかけるより先にスペードは刀を抜き、奴の胴体をたった一振りで切断した。
「ほう? 面白い術じゃな」
胴体が浮いたまま奴は言った。
それを見たスペードは少しばかり動揺を隠せないでいる。
「ヒル、“月代”の居場所、教えてやろう」
奴が手のひらを差し出すと、そこから現れた赤い蝶がヒラヒラとヒルの周りを飛び回る。
「それについていくといい。道案内だ」
「なぜ、あなたが…」
笑みを浮かべている余裕は、もうヒルには残っていなかった。
理由も目的もわからない施しが一番恐ろしい。
奴はクスクスと笑いながら蝶の群れと化し、出入り口から出て行った。
…落ち着きなさい。
“月代”を手に入れれば、あんな女…。
それなら一刻も早く、“月代”を我が手中におさめなければならない。
.To be continued
早朝、海が近い廃墟の小屋で、ヒル達は真ん中に地図を広げてそれを囲っていた。
捜索した場所は赤いペンで×をつける。
「この島にもいませんか…」
見落としているところがないか、地図の上から捜す。
「…右手の調子はどうだ?」
ふと、ヒシギに問われ、ヒルは軽く五指を動かして笑みを向けながら答える。
「神経もうまく繋がってますよ」
あのあと、集合場所に到着したヒルは、ヒシギが手に入れた新しい右手を繋げてもらった。
付けたばかりは痛みを感じたが、今では難なく指を動かせる。
朱族特有の回復力も加わったおかげだろう。
顔の火傷もすっかり完治している。
「遊んでいるからあんな目に遭うんだ。例外だぞ、ヒル」
「わざと手加減して楽しむ悪癖、いい加減直してよねぇ」
スペードとココロにも説教されてしまい、苦笑した。
「お次は手加減はしません。…さて…、次は…」
現在地から次の目的地を指でたどったとき、
「地道じゃのぅ、ヒル」
「!!」
音もなく出入り口から現れた人物に日ノ輪のメンバーが咄嗟に武器を構えた。
ヒルは知っている、奴には束になっても敵わないと。
ヒルは日ノ輪のメンバーを手で制し、あまり近寄りたくないが、前に出た。
「……なんの用ですか?」
警戒しながら笑みを返す。
「少し早めの登場じゃったな。角都殿には1週間後に会えると言ってしまったのに、1日早かった」
たしなめているようには聞こえない。
「あなたにヒル達の行動まで指摘される覚えはありませんが?」
「それは、まあよい。ワシが言いたいのは…」
奴が右腕を振るうと、一瞬にしてヒル達は赤い蝶に囲まれてしまった。
妖しい笑みを保ったまま奴は言葉を続ける。
「次にヨルを殺そうとするなら、赤い蝶に誘われてしまうぞ」
一気に大きな殺気を叩きつけられ、片膝をつきそうになるのを堪えた。
日ノ輪のメンバーはスペード以外、嫌な汗を流し、顔を強張らせ、恐怖で体を小刻みに震わせている。
ココロは上から押さえつけられたかのように倒れる始末だ。
呼吸がうまくできないのか、涙目だ。
「! スペード!」
ヒルが声をかけるより先にスペードは刀を抜き、奴の胴体をたった一振りで切断した。
「ほう? 面白い術じゃな」
胴体が浮いたまま奴は言った。
それを見たスペードは少しばかり動揺を隠せないでいる。
「ヒル、“月代”の居場所、教えてやろう」
奴が手のひらを差し出すと、そこから現れた赤い蝶がヒラヒラとヒルの周りを飛び回る。
「それについていくといい。道案内だ」
「なぜ、あなたが…」
笑みを浮かべている余裕は、もうヒルには残っていなかった。
理由も目的もわからない施しが一番恐ろしい。
奴はクスクスと笑いながら蝶の群れと化し、出入り口から出て行った。
…落ち着きなさい。
“月代”を手に入れれば、あんな女…。
それなら一刻も早く、“月代”を我が手中におさめなければならない。
.To be continued