10:鮮血の道化師
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部屋を抜け出したヨルと飛段は、窓から見えた町の広場へと続く通りを歩いていた。
その通りから広間まで、準備している屋台や営業を始めている屋台や人で賑わっている。
向かいから来る人間を避けながら、2人は大きな広場へと目指した。
「帰ったら角都に殺される…」といろんな屋台に目移りしながらも、ヨルは不安そうに呟いた。
「それをオレに言うのかよ♪」とどうせ殺せないからと飛段は余裕を見せる。
広場に到着した途端、ヨルは早速ある店を発見し、表情を明るくさせた。
「りんご飴!」
前に角都に買ってもらって以来、主食(血)の次に好きになるほど気に入っている。
「飛段、待っててくれ!」
自分の小遣いで買うつもりで懐から小さな巾着袋を取り出し、飛段の返事も聞かずに店へと向かった。
広場は通りより賑わっていた。
屋台の数も多く、真ん中の噴水ではなにか準備が行われていた。
見世物小屋だろうか、と飛段は首を傾げる。
一度、どこかの町で同じようなものを見つけ、角都に教えてもらったことがある。
幕が下りたままの小さい見世物小屋の前で、顔に仮面を被った者達がせっせと小さな椅子を並べていた。
「モタモタするな、腐れ野郎共」
それを眺めながら近くで指示してる男がいた。
背には太陽のようなマークがあり、色違いだが暁と同じような袖の長い外套を着、髪は栗色のクセ毛で肌は角都と同じ褐色、なぜか左目だけ白目を含め真っ黒だ。
「ヒシギ、まだ時間ある」
「ミツバか」
ヒシギと呼ばれた男に、ミツバと呼ばれた男が近づいた。
ヒシギと同じ格好だ。
髪は短い黒の蓬髪で、両目は包帯で巻かれている。
飛段が、なにやら小声で会話している2人を見つめていると、急に目の前にビラを突き付けられた。
「!」
「今夜、ショーがあるの。来てねぇ」
同じく背に太陽のマークの入った外套を着た女がそう言ってビラを手渡してくる。
髪は黒の短髪で一束だけおさげが作られ、両耳には大きなイアリングが光っていた。外套の前は全開で、長くて細い脚、凹んだ腹、豊かな胸が見える。外套の下の服は水着だ。
「…綺麗な目の色してるのねぇ。肌も白くて羨ましい…」
「!」
突然女の顔が目の前に近づき、飛段は思わず一歩あとずさった。
「うふふ。旅の人? 強そうな武器ね。あなたの?」
「あ…、あのさァ…」
無遠慮に近づかれて困惑していたとき、
「連れになにか用か?」
ヨルが飛段と女の間に割り込んだ。
右手には2本のりんご飴が握られている。
女の顔から一瞬笑みが消え、先程と違って冷たい目に豹変し、微笑んだ。
「“日ノ輪”のショーの宣伝よ。お嬢ちゃんも、ぜひ見に来てね」
「……………」
飛段からは、2人の間に火花が散っているように見え、気持ちが引く。
ヨルに声をかけようとしたとき、女の背後に近づいた男が声をかけた。
「ココロ、サボるなんて例外だぞ」
“日ノ輪”の外套に、三日月型の刀を腰に差し、頭には角都みたいな布を被っている。
「…あの人にチクらないでよぉ、スペード」
ココロはスペードを睨みつけ、「またねぇ」と笑顔とともに言ったあとヨルと飛段に背を向け、ビラ配りを再開した。
スペードもこちらを一瞥したあと、見世物小屋に向かう。
「…ほら」
それを見届けたヨルはもう1本のりんご飴を飛段に渡した。
「お…、おォ、サンキュ」
ヨルは先に袋を開け、りんご飴をじっくりと観察する。
見ていると癒されるらしい。
「嫌な匂いだ」
「オレが!?」
いきなり、眉をひそめて言い放ったヨルに、飛段は慌てて自分の袖をクンクンと嗅いだ。
「違う。あの女だ。あとから入ってきた男も…」
「?」
飛段は、スペードの方はわからないが、ココロの方はほんのり香水の匂いがしたのを思い出す。
ヨルの鼻にとっては悪臭なのだろう。
「…香水の他に…、妙な匂いまで混じってた…」
そう言ったヨルは、気を紛らわすようにりんご飴にかじりついた。
小さな赤い欠片がポロポロと地面に落ちる。
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