09:不器用な不死
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翌朝、大きな木の枝の上で、木に背をもたせかけて眠っていた飛段は、木漏れ日の光で目を覚ました。
だが、すぐには起きない。
昨夜の奇襲からイライラが止まらなかった。
角都のあの言葉を思い出すと余計にイライラする。
『飛段どけ! 邪魔だ!』
角都の「邪魔」って言葉が飛段の胃をじわじわと刺激する。
チリチリチリチリ。
昨夜、右横腹を貫かれたせいだろうか、と貫かれたところを擦ってみるが、とっくの昔に傷は塞がっている。
「飛段」
下からヨルが声をかけた。
「…なんだ?」
寝たフリしようかと思ったが、下手なのは知られているので仕方なく呼びかけに答えた。
「組み手に付き合ってくれよ」
「…ああ」
最近、ヨルは体術の練習をし始めた。
飛段は毎朝起こされて特訓に付き合わされる。
角都が「体術なら飛段に付き合ってもらえ」と言ったのが始まりだった。
若干広い更地でヨル達は外套を着ないまま特訓を始める。
その方が動きやすいからだ。
最初はやる気がなかった飛段だが、ストレスの解消ができる思えば楽しめる。
「来な」
飛段が挑発的に言うと同時にヨルは突進してきた。
飛段も同時に駆けだす。
軽くジャンプしたヨルはいきなり回し蹴りを食らわそうと空中で一回転した。
飛段は右腕で顔面を守り、左手のコブシをヨルの顔面に向けて突き出す。
女だからといって顔面を殴ることに躊躇いはない。
ヨルは素早く左手の甲でそれを受けて払いのけ、飛段から飛び退き、様子を窺うかと思えば瞬時に詰め寄ってきた。
しかも全力でコブシやら蹴りやらを繰り出してくる。
左のコブシが迫れば左腕で払い、左脚が迫れば右脚で払っていく。
「!」
顔面ばかり狙ってくるかと思えば、いきなりその場で屈んで足払いをかけられた。
一瞬浮遊感に襲われたが、横に転ぶ前に地面を左手を地面につけて受け身をとり、体勢を直す。
「チッ」
ヨルの舌打ちが聞こえた。
再びほぼ顔面ばかりを狙ってくる。
そろそろかと思ったとき、再び身を屈めて足払いをかけようとした。
飛段はすぐにジャンプし、ヨルの脚を避ける。
「同じ手に引っ掛かるかよォ!」
そのまま顔面に向かって右脚を突き出すが、
「知ってるぜ」
ヨルは首を傾けてそれを避け、飛段の右足首をつかんだ。
「もらった!」
飛段が地面に倒れこんだらその時点で組み手は終わりだ。
ヨルは足首を離さない。
「あげねえよ!」
地面に手をついた飛段は左脚を後ろに向けて思いっきり突き出した。
「!! う!?」
腹の真ん中に直撃し、ヨルは後ろに吹っ飛んで転がった。
「よっしゃー!」
飛段は小さくガッツポーズをする。
ヨルは右腕で腹を押さえながら上半身を起こし、こちらを睨みつけた。
「―――っ、内臓潰す気かテメーは! けほっ」
「頑丈だから平気だろが! テメーだって昨日はオレの首折る気で殴ったクセによォ!」
武器持って飛段とヨルがやりあったら間違いなく殺し合いになってしまう。
だから武器なしでやりあったが、あまり意味はないかもしれない。
「15勝、17敗」
見物していた角都がそう言いながら近づいてきた。
「お、角都ゥ! 見てたのかよ。つーか、勝敗数えてたのか」
見物してるのは知ってたが、勝敗まで数えられていたとは知らなかった。
飛段はヨルに振り返って自慢げに言う。
「聞いたかヨル! オレはテメーに17回も…」
「17回も負けている」
遮られた角都の言葉に飛段は表情を強張らせ、「え?」と肩越しの角都を見る。
「明日は負けるかもしれん。いい気になるな」
角都はそう言って飛段の横を通過し、ヨルに近づいた。
「貴様もだ、ヨル」
「はいはい」
ヨルは立ち上がり、ズボンについた土を払いながら答えた。
そのあと、角都は袖から小さな紙を取り出してヨルに渡す。
「体術もいいが、忍術も鍛えろ。チャクラをコントロールできるようになれば、性質変化の術も使えるようになれ」
「角都が使う土遁とか風遁とかっていうアレか? …オレにもできるのか?」
「まずは先天的なチャクラの性質から調べる必要がある。その紙を使ってな」
ヨルは視線を下ろし、角都からもらった紙を見つめる。
「この紙?」
「チャクラ感応紙といって、チャクラで育つ木でできた紙だ。それで己のチャクラの性質がわかる。火遁は燃え、水遁は濡れ、土遁は崩れ、風遁は切れ、雷遁は皺ができる」
飛段も一度やったことがある。
しかし、まったく反応がなかったのだ。
「チャクラを流せばわかる」
「……………」
黙って頷いたヨルはその紙にチャクラを流し込んだ。
この時飛段は、自分と同じようになにも反応しなければいいと思った。
「あつっ!!」
紙はあっという間に燃えてしまい、火の中でその形を崩した。
ヨルは火に触れてしまった指先を自分の耳たぶで冷ました。
「……“火”の性質だな」
静かに言ってヨルを見下ろす角都の目を、飛段は見たくなかった。
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