09:不器用な不死
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その日は、新月の夜だった。
ヨル達は、一日の歩き疲れでようやく眠れると森のド真ん中で横になったとき、突然焚き火が消えて茂みから無数のクナイが飛んできた。
ヨルと角都は反射的に自分がいた位置から大きく上に飛ぶ。
飛段を残して。
「痛てててて!!」
気持ち良さそうに眠っていた飛段は、無数のクナイに起こされて声を上げた。
背中に受けたのだろうが、不死身ゆえに痛みだけで済むのは毎度のことだ。
「なんだァ!!?」
敵襲の攻撃に叩き起こされた飛段は、傍の木に立てかけておいた三連鎌を手にとり、辺りを見回した。
しかし、今回は月明かりがないため、敵の位置がわからない様子だ。
「どこだー!?」と叫ぶ飛段に角都は呆れてため息をつく。
「あれではいい的だ」
「敵は、暗闇に慣れてるな」
ヨルと角都は背中合わせになり、辺りを見回した。
「ヨル…」
角都に声をかけられ、ヨルは目を瞑る。
「7人いる」
敵はしてやったりと言った気持ちなのだろうが、この状況ではヨルの方が有利だ。
「飛段! こっち向け!」
「あァ!?」
不機嫌な飛段はこちらに振り返った。
同時に、飛段の顔の横をクナイが通過する。
それに気付いたのか、飛段はクナイが飛んできた方向に振り向いた。
「飛段! そのまま真っ直ぐに2人! 角都! 真上から3人!」
飛段はワイヤーを伸ばし、ヨルが指示した方向に鎌を飛ばした。
茂みを超え、1人に突き刺さった音が聞こえる。
角都は真上に両手を伸ばし、上から襲いかかろうとした敵の首をつかんだ。
ヨルは夢魔を背中から引き抜いて上に飛び、真上から襲いかかってきたもう一人の胸を貫く。
その隣から骨の折れる音が聞こえた。
角都が敵2人の首の骨を潰した様子だ。
地面に着地する前にヨルは飛段に声をかける。
「飛段! 右横から敵1人!」
先程仕留め損ねた敵だ。
「み…、右ってどっちだァ!?」
(ええええええええ!!?)
仰天するヨルだったが、すぐに「か、鎌持ってる方!」と声を上げる。
そう言ってはっとした。
飛段の、鎌を持つ手は左手だったことに。
グサッ!
左を向いてしまった飛段は、右脇腹から刀で貫かれてしまう。
ヨルはその隙に右手の夢魔を投げ、飛段を貫いた敵の首に命中させた。
残りは2人だ。
「ヨル! テメーわざとだろ!!」
「テメーが右手に持ってないのが悪いんだろ!!」
敵が残ってるというのに喧嘩を始めるヨルと飛段。
「!」
角都の背中から仮面が1体這い出る。頭刻苦だ。
「ヨル、敵はどこだ?」
「左斜め直線茂みの中!」
仲間たちが次々とやられ、撤退するか攻撃するか戸惑っている敵は、一緒に固まっている。
敵のいる方向には飛段もいた。
「待て! 飛段もいる!」
角都は火遁の印を結びながら声をかけた。
「飛段どけ! 邪魔だ!」
「!!」
敵に捕縛されているわけでもないのに、飛段は動かない。
「火遁・頭刻苦!」
そうとは知らない角都は頭刻苦を発動させた。
「く!」
ヨルは、頭刻苦の口から火の弾が発射されたと同時に走りだし、突っ立っている飛段の背部の服をつかんで引っ張り、右へ飛ぶ。
ドオン!!
頭刻苦の火の弾が敵に直撃し、凄まじい爆発音とともに戦いは終わった。
頭刻苦の攻撃の巻き添えになった木々には火の手が上がっている。
敵と角都と飛段の姿が赤く照らされた。
敵は忍服から見て忍であることは明白だ。
確認したあと、ヨルは一緒に地面に転がった飛段に顔を向ける。
「角都が「どけ」っつったのに、なんで避けなかった!? 灰になりたいのか!?」
責めるように言うと、飛段はキッとこちらを睨みつけて起き上がった。
「悪かったな! ボーッとしてたんだよ! 寝起き最悪だったしなァ!」
その言い方が気に食わず、ヨルが何か言い返してやろうと口を開いたとき、
「ヨル、他に敵は?」
角都に声をかけられ、目を閉じて耳を澄ませた。
「……大丈夫、今はいない」
少なくとも、半径100m以内には動物以外の気配はない。
「場所を変えるぞ。追手が来るかもしれん。ヨル、敵らしい気配があればすぐに言え」
「言われなくても」
ヨルだって安心して眠りたいのだ。
「……ケッ。儀式もできなかったぜ…」
先に歩きだした角都を追おうと歩きだしたとき、背後にいた飛段がボソリと呟いた。
拗ねた子供のような言い方だったのが、ヨルには少し気になった。
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